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オーケストラ千里山 結成10周年記念第13回定期演奏会

リズム感よく、流れの良い熱い第九戻る


オーケストラ千里山 結成10周年記念第13回定期演奏会
2008年2月24日(日) 16:00 兵庫県立芸術文化センター・大ホール

ワーグナー: 歌劇「リエンツィ」序曲(*)
ベートーヴェン: 交響曲第9番ニ短調op.125「合唱付き」
(アンコール)エルガー: 「威風堂々」第1番(*)

独唱: 牧野宏子(S)、西村規子(MS)、小餅谷哲男(T)、松岡剛宏(Br)

合唱: オーケストラ千里山特別合唱団

指揮: 河崎 聡、北野洋平(*)

地響きにも似た熱い響きにアッチェランドがかけられ、一心不乱に駆け込んだあとの弾力ある終結、素晴らしい演奏に感動しました。

指揮は河崎聡さん。 河崎さんらしく、オケの自主性を引き出しつつ、リズム感よく、実に流れの良い第九。 各パートがきりっと引き締まり、渾然一体となった響きで進んでいった第1楽章から「今日は素晴らしい演奏会になる」と直感しました。 そして第2楽章、やや早めのテンポだったかしら、要所でのインパクトも充分。 第3楽章は爽やかに流れる優しい音楽として、タイトな響きで終楽章に突入。 引き締まった響きに磨きがかかり、また合唱の迫力もあいまった熱い演奏に心奪われっぱなしとなりました。

これに先立ち、団内指揮者である北野さんの指揮による「リエンツィ」序曲もまた堂々として立派な演奏。 冒頭のトランペット、厳かな響きもして素晴らしい演奏でしたね。 そしてこれが全体にも行き渡り、しっとりとして落ち着いた音色で纏められていました。 落ち着きながらも覇気を持った演奏で、熱くフィナーレを締めくくりました。

パンフレットに書かれた「誕生の軌跡」。 なんと3年越しの準備のすえ、何のツテもないアマオケが、手探りのスタートからようやくたどり着いた第九演奏会であったとのこと。 不覚にも、当日までそのことに全く気付いていませんでした。 単に10周年を兵庫県立芸術文化センターという立派なホールで演奏するのか、程度の貧困な発想。 これを反省し、聴き手としてもより気を引き締めて演奏会を楽しませていただきましたけれど、そんなバイアスを取り除いても素晴らしい演奏会でした。 これからの活動もまた期待しています。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

このオケを始めて聴かせてもらったのが 2003年10月の第7回定期演奏会。 失礼ながら技量よりも演奏会前後、奏者方々の笑顔が素敵なオケとの印象が強かったのですが、色々と議論を重ねられた末に客演指揮者を呼んで技量向上にも努められています。 そして結成10周年。 故あってご招待いただきました。

とはいえ朝一番、いつもどおりの時間に会社に出勤です。 休日出勤、普段なら誰も居ないオフィスで気楽に作業を進めるのですが、ちょっとお尻に火がついているので、昼休みも適当にメシを食ってみっちりと2時半まで仕事。 慌ててオフィスを飛び出しました。 開場時間が30分早まって3時とのこと、乗り継ぎよく5分前にホールに到着しました。 長蛇の列の後ろに並ぶとしばらくして動き始めました。

ホールに入場すると、なんと2階席は締め切り・・・仕方なく1階席に座りかけましたけど、埋まり具合を係員が確認している様子。 いったんロビーに出て、2階席の階段の前に立ち、2階席が開放されるのを待つことしました。 案の定、同じ考えを持っている方もいらして、その後ろについて、再度待ち行列の一員です。 ようやく2階席も開放され、脱兎のごとく2階席最前列 2A-34 を確保。 足元が広くて楽チンです。 10分ほど待った甲斐がありました。

ステージを見ると対抗配置。 コントラバスの方がチューニングなどされていましたが、開演10分前くらいより徐々に団員の方が集まってきました。 自由入場スタイル。 ホールは4階席まで満員のようです。 ステージの練習音に加え、満員のお客さんから出る音も大きくて活気があります。
オケの編成は 14-13-12-11-9 かしら、数え間違いがあるかもしれませんが、メンバーが揃いました。 定刻の鐘が鳴り、ステージが照明で照らされてコンミスの登場。 チューニングを開始すると、客席の照明も落ちます。 準備完了。 オケの中を縫うようにして指揮者の北野さんが登場し、さあ始まります。

ワーグナーの「リエンツィ」序曲、堂々として立派な演奏。 冒頭のトランペット、厳かな響きもして素晴らしい演奏でしたね。 そしてこれが全体にも行き渡り、しっとりとして落ち着いた音色で纏められていました。 落ち着きながらも覇気を持った演奏で、熱くフィナーレを締めくくりました。

冒頭のトランペット、緊張すると思いますが厳かな響きがまっすぐに届いてきました。 低弦の響きから大きくうねるように曲が進んでゆきます。 ゆったりとして奥行きの感じられる演奏がいいですね。 そのままたっぷりとしたクライマックスを形成、見事です。 スネアのロールも落ち着きが感じられます。 今度は引き締まった響きでの盛り上がりとなりましたが、ここもまた内包した響きによる充実感があります。 丁寧でかつ明るい響きの金管ファンファーレ、結成10周年の祝典の雰囲気が感じられます。 そして何より全体がしっかりと纏められた演奏は立派です。 シンバルが入っても落ち着いた表情は崩れませんし、覇気をぐっと溜め込み、堂々としたフィナーレ。 巧いオケになったなぁ、との印象を持ってこの曲を閉じました。

10分間の休憩。 このところの疲れが出てきたのでしょうね、演奏中は何ともありませんでしたが睡魔が襲ってきましたので、キシリトールのガムを噛んで覚醒させます。 暫くすると合唱団の方が入場。 左右から入場してきた人が上段より詰めて並びます。 中央に男声、それを挟むように女声。 そして下2段はすべて女声で埋め尽くされました。 この間にオケの方も入場し、15-16-11-12-9 の編成でしょうか、うまく数えられませんが、この位のはずです。 ステージが照明で明るくなるとコンマスが立ちあがってチューニングを開始。 準備が完了すると、右腕を上げ、オケに立つようにと指示しながら指揮者の河崎さんが登場します。 にこやかな笑顔。 一礼をし、いよいよ始まります。

地響きにも似た熱い響きにアッチェランドがかけられ、一心不乱に駆け込んだあとの弾力ある終結、素晴らしい演奏に感動しました。
河崎さんの指揮らしく、オケの自主性を引き出しつつ、リズム感よく、実に流れの良い第九。 各パートがきりっと引き締まり、渾然一体となった響きで進んでいった第1楽章から「今日は素晴らしい演奏会になる」と直感しました。 そして第2楽章、やや早めのテンポだったかしら、要所でのインパクトも充分。 第3楽章は爽やかに流れる優しい音楽として、タイトな響きで終楽章に突入。 引き締まった響きに磨きがかかり、また合唱の迫力もあいまった熱い演奏に心奪われっぱなしとなりました。

第1楽章、ふわりとした開始、流れるように進め、河崎さんが下から上に振って勢いを付けて、またパワーも漲らせてゆきます。 オケの響きには深さがあり、かつ芯も感じられます。 素晴らしい響きですね。 「今日は素晴らしい演奏会になる」と直感しました。 河崎さんのテンポはちょっと早めでしょうか、フレーズをちょっと短めに切り上げ、タイトな響きで進めているのですが、河崎さんらしく流れるような演奏で進みます。 ティムパニも余韻を少なめにとった落ち着いたコンパクトな打音。 河崎さん、弦楽の各パートに気を配りつつ引き締めた音楽でピークを形成します。 ここもタイトな響きで引き締め、そして左拳を叩き付けるようにすると、オケもこれに応えて各楽器が渾然一体となった熱い響きで応えます。 キレのよさ、しかも熱い演奏が何度も書きますが流れるように進んでゆきます。 いったん落ち着かせた響きをまたストレートに熱くさせ、弾力をもった堂々とした終結でこの楽章を閉じると、残響がホールに響いていました。

第2楽章、さっと振り、引き締まった筋肉質の響きによる開始。 ティムパニの一撃もインパクトありました。 ここもやや早めのテンポでしょうか。 第2ヴァイオリンより半時計周りで旋律が回ります。 河崎さん、肘も使ってタイトに進めます。 オケの分奏が素晴らしいですね。 タイトなホルン、木管もまた素晴らしくシャープな響き、そしてやはりティムパニが要所を締め上げ、ぐいぐいと力が漲ってゆきます。 リズム感があっていいですね。 タイトな響きがサクサクっとして前に前にと進む感じ。 オーボエもファゴットも響きがいいなぁ。 中音弦も暖かな響きが素敵。 河崎さんの指揮は分かりやすくて、オケのノリの良さに結びついてます。 そんな河崎さん、軽くジャンプして力をこめたあと、さっと駆けてからここも下から上にぐいっと振り上げて弾力を持った終結としました。

ソリストが入場。 この間に打楽器軍団も配置につき、コンマスが立ちあがってチューニングを実施して準備完了です。

第3楽章、河崎さん、今度はたっぷりとした振りでオケから柔らかで暖かな響きを醸し出します。 ここのテンポはちょっと遅めだったかしら。 第2ヴァイオリンやヴィオラの響きが柔らかくて素敵、もちろん透明感もあります。 これにそっと木管が寄り添い、第1ヴァイオリンが爽やかな響きで歌って進みます。 ホルンのソロ、ちょっと躓いたのかもしれませんが、気のせいかもしれません。 クラリネットの暖かな響きが素敵でした。 たっぷりとゆったりとそして丁寧に進んでゆきます。 トランペットが入って盛り上がってもじっくりと進める河崎さん。 第1ヴァイオリンを向き、表情をつけ、ゆったりと柔らかな響きで丁寧にこの楽章を纏めました。

第4楽章、肩口からさっと振り下ろし、タイトなティムパニの打音、底力ある低弦の響きで始まりました。 引き締まったオケの響きを、さらにぐいっと力を込める河崎さん。 オケもそれによく反応しています。 引き込まれるように聴き進みます。 コントラバスによる歓喜のテーマ、コントラバスの方を向いて小さく振り、集中力の高い響きがゆっくりとオケの中で歌い綴られてゆきます。 素晴らしい。 そして音量を上げ、ストイックな金管、徐々にスピードも上がって頂点へ。 バリトンのよく透る声がホールに響きます。 覇気を持ったオケの響きも切り込むよう。 合唱は整った声の響きが暖かです。 ピチカートに抑揚がついているのが素敵ですね。 そして力を込めた河崎さん、崇高な響きで盛り上げたのをスパッと止めます。
コントラファゴットのずしりとくる響きが良かったなぁ。 チャーミングに響かせる打楽器、軽やかな行進曲です。 テノールはちょっと声の透りはよくなかったでしょうか、でも味わいのある歌い口でした。 合唱が入って俄然活気つきます。 ホルンの斉奏がカッコよく響き、弦楽器にもパワーがあってワクワクしますね。 コントラバス奏者の方、素早く譜面を返し、ぐいぐいと弾いておられたのも印象的。 河崎さん、すっと止め、ゆっくりと左腕を廻して合唱を力強く入れて迫力満点。 トランペットがやや前のめりな感じで入ってきてスピードアップ。 速い。 トロンボーンがいい音色でした。 少々合唱がズレてきたかな。 左手をグーにして力を込める河崎さん、たっぷりとさせてきちんと修正。 パワフルな合唱、ここでのソリスト4人もバランス良くていい感じ、オケも熱い響きで渾然一体となってフィナーレに向かいます。 しだいにスピードを上げたフィナーレ、タイトに引き締まった響きが雄大。 これに熱気が孕んで地響きがするようです。 アッチェランドがかけられて物凄いスピード。 縦ノリのリズムで一気呵成に進めた最後は大きくバウンドさせるようにして終結。 全曲を閉じました。 圧倒的な幕切れに会場から熱い拍手が沸き起こりました。

熱気が充満したホールでのアンコールは、北野さんが出てこられて、これまた重厚で熱い「威風堂々」。 中間部から合唱も加わっての演奏となり、10周年記念演奏会の幕を閉じました。 

パンフレットに書かれた「誕生の軌跡」。 なんと3年越しの準備のすえ、何のツテもないアマオケが、手探りのスタートからようやくたどり着いた第九演奏会であったとのこと。 不覚にも、当日までそのことに全く気付いていませんでした。 単に10周年を兵庫県立芸術文化センターという立派なホールで演奏するのか、程度の貧困な発想。 これを反省し、聴き手としてもより気を引き締めて演奏会を楽しませていただきましたけれど、そんなバイアスを取り除いても素晴らしい演奏会でした。 これからの活動もまた期待しています。 ありがとうございました。