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紫苑交響楽団 第11回定期演奏会

しっかりとした構成感と躍動感戻る


紫苑交響楽団 第11回定期演奏会
2008年3月2日(日) 14:00 長岡京記念文化会館

ブラームス: 悲劇的序曲ニ短調op.81
モーツァルト: 交響曲第31番ニ長調K.297「パリ」
ブラームス: 交響曲第1番ハ短調op.68
(アンコール)モーツァルト: 交響曲第31番第2楽章パリ初稿(異稿)

指揮: 平田昭浩

しっかりとした構成感と躍動感、これらをともに持った熱いブラームスの交響曲第1番に感動しました。

指揮者の平田昭浩さん、相当に研究されたのだと思います。 またパンフレットに書かれていたようにオーケストラとも緻密な練習を重ねられたようです。 とても熱いブラームスの演奏に、目の前のうろこがポロポロと落ちるようでした。

そしてこれまでも真摯で熱い演奏を提供してくれた紫苑交響楽団。 今回もやってくれるとは思っていましたが、ここまでとはちょっと想定外。 平田さんの解釈によるところも大きいと思いますが、オーケストラもまた素晴らしい演奏で応えて見事でした。 なかでも第2楽章、コンマスのソロは、この交響曲の白眉。 ホルンのソロとも柔らかく絡んで時の経つのを忘れて聴き入りました。

またこれに先立って演奏されたブラームスの悲劇的序曲、ハガネのような響きでタイトな音楽でした。 アタックの強い演奏で、音量もかなり大き目でしょう。 少々驚きました。 前半、前のめりな感じもしていましたが、後半は改善され、堂々とした感じも出て、きちっと纏めたと思います。 熱い息吹を感じた演奏でしたが、正直ちょっとヤリ過ぎやな、なんて思ってしまいました。 交響曲のときように熟成された響きになる手前のような感じだったかな。

あとパリ交響曲も明快なモーツァルト。 大オーケストラなのにスッキリとした響きが特徴的でした。 モーツァルトはこのように即物的に演奏しても面白いのですね。 客席では、えっ(これがモーツァルト)と思われた方も多いのではないでしょうか。 個人的にはとても面白く聴かせてもらいました。

とにかくこの日の演奏は、考え抜かれた熱いブラームスの交響曲第1番。 これにすべてもっていかれたように思います。 とても熱い演奏会でした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

春を感じさせる陽気の1日。 3年間に渡った仕事の集大成も始まってしまい、これまで重ねた休日出勤はなくなりました。 この土日は久しぶりのフリーです。 ポカポカな阪急電車に乗り、長岡天神へと向かいました。

開演25分前、ホールに到着して中に入ると、半分近くの席が埋まっています。 ざっと見渡して、いつもの26列-24に落ち着くことにしましたが、大盛況ですね。 一時は団員減による解散の危機に瀕していたのがウソのよう。 他人事ながら嬉しくなってきました。

パンフレットを読み、開演を待ちます。 指揮者の平田昭浩さん、始めての方ですが、同志社大学文学部から京都市立芸術大学音楽学部に進まれたそうです。 芸大在学中に指揮者として正式にデビューされたとのこと。 またコントラバス奏者としても活動されていて、関西フィルやスロヴァキアのドヴォルザーク室内管弦楽団ともコンチェルトのソリストとして共演されたこともあるとか。
また今回の演奏会では、練習に何度も足を運び、緻密な練習を重ねたのだと団長さんの記載もありました。 期待が膨らみます。

開演5分前くらいから、自由入場にて、団員の方が徐々にステージに集まってきました。 オケの配置は対抗配置。 12-12-9-9-7 の編成でしょうか。 客席はほぼ9割の入りで、満員に近いですね。 ステージが照明で明るくなってコンマスが登場。 チューニングを始めると客席の照明が落ちました。 準備が完了すると、指揮者の平田さんがトコトコと歩く感じで登場。 一礼をし、オーケストラに向かってからも俯いて集中を高めてから始めます。

ブラームスの悲劇的序曲、ハガネのような響きでタイトな音楽でした。 アタックの強い演奏で、音量もかなり大き目でしょう。 少々驚きました。 前半、前のめりな感じもしていましたが、後半は改善され、堂々とした感じも出て、きちっと纏めたと思います。 熱い息吹を感じた演奏でしたが、正直ちょっとヤリ過ぎやな、なんて思ってしまいました。 交響曲のときように熟成された響きになる手前のような感じだったかな。

平田さんのハナ息とともにアタックの強い響きが出、やや前のめりになりながら、ぐいぐいと進んでゆきます。 音量もかなり大き目で、よく整って気合の入った音楽なのですが、正直、少々ヤリ過ぎじゃないか、とも感じてしまいました。 オーボエの響きには落ち着きがありましたが、これも音量が少々大き目。 全体としてはよく整っているんだけれども、深み、というものが感じれらないような感じでした。
ホルンの斉奏から弦に引き継がれるあたりは良かったですね。 次第に力を増し、ホルンの強奏もタイトな響き。 平田さんの動きはまるで機械人形のようです。 カチカチと音を立てて動いているみたい。 そんな動きを目で追っているからでしょうか、熱い息吹は感じるものの、どうも内面的な深さには思いが至りません(すみません)。 目も慣れてきたのかなぁ、曲の後半は引き締まった響きはそのままですが、前のめりな感じは無くなったようで、堂々とした音楽を形成していました。 きちっと纏っています。 でも、決めの部分でのアタックの強い響きは健在。 金管ファンファーレがブルックナーのように浮き上がって聞こえてきましたね。 そしてしっかりとしたエンディングを形成し、曲を締めました。
少々呆気にとられた面もありましたが、だいたいこんな印象だったでしょうか。 スコアが読めないもので、いつも印象なのですけれど・・・

全員がいったん退場。 管楽器奏者の方より再度入場します。 弦楽器の編成は先ほどと同じみたいです。 客席では空いている席を探す人がウロウロとしていて、ほぼ満員みたい。 よく入りましたねぇ。 コンマスの合図でチューニングを終えると、平田さんがまたもやトコトコと歩いて登場。 靴のカカトから着地して踏み込む競歩の歩き方に似ているんですね。 そんなことはともかく、始まります。

モーツァルトのパリ交響曲、こちらも明快なモーツァルト。 大オーケストラなのにスッキリとした響きが特徴的でした。 モーツァルトはこのように即物的に演奏しても面白いのですね。 客席では、えっ(これがモーツァルト)と思われた方も多いのではないでしょうか。 個人的にはとても面白く聴かせてもらいました。

第1楽章、やはり平田さんのハナ息からハリのある演奏で始まりました。 大編成なのにスッキリとした響き、紫苑交響楽団の巧さがよく出ています。 軽やかなトランペット、音楽がリズム感良く走り始めます。 リンとした木管の響きも好調、透明感のある高音弦がいい感じ。 平田さんの動きは前曲と同じで機械人形のようです。 サクサクと進めて、オケもこれによく付いて、曖昧さの無いモーツァルト。 いやぁこれが面白いですね。 下手なオケでは出来ません。 金管が入ってきてオケ全体に力が漲ります。 ティムパニの弾力ある響き、ピチカートもお腹に響くようです。 明朗で雄大なフィナーレを切って落とすと、残響がホールに響いていました。

第2楽章、大編成らしいたっぷりとした開始。 でも高音弦は透明感が高いですよ。 ゆったりと撫でるように進めてゆきます。 時にぐいっと力を入れたりもしますが、これもきちんと制御されていて、オケの機動力の高さが感じられます。 平田さん、曖昧さがなく、計算された構成での音楽をきちんと進めますが、オケもまた暖かな響きを熱くしての演奏、音楽に生命を吹き込んでいるみたいですね。 面白いなぁ。 惜しむらくは、弱音が少ないところでしょうか。 力で押す場面が目立ってくると少々アキもくるんですが、そこは Warm & Hot に響くオケの響きで聴けているような感じがしました。

第3楽章、第2ヴァイオリンを向いて指示した平田さん、すぐ第1ヴァイオリンに向き直して滑るようなヴァイオリンの響きで序奏を開始。 金管が加わって盛り上がり、ぐいぐいと進んでゆきます。 これをぐいっと止め、すっと元に戻し、また走る。 ここもまたしっかりと統制された演奏ですね。 弦の分奏、管とのつながりも見事で、巧い。 しかもフーガですね、覇気のある響きがきちんとコントロールされていて、気持ちいいなぁ。 平田さんの動きにオケも見事に合って、走って、止まって、歌って、熱く即物的なモーツァルト、最後はハリのある響きで力強く止めて全曲を終了。
個人的には、非常に面白く聴かせてもらったので、大きな拍手を贈りました。 往年のモーツァルティアンには受け入れ難いかもしれませんけれどね。

20分間の休憩。 アンケートなど書いて時間を過ごします。 予鈴を告げるブザーとアナウンスがありお、休憩後もまた自由入場でオケのメンバーがステージに集まってきました。 ホルンやトロンボーンが練習音をブリブリッと吹くので、聞き手としての気分も高まりますね。 弦楽器の編成は 12-12-9-9-7 で、前プロと同じみたいです。 全員が揃うとコンマスが立ちあがってチューニングを実施。 ステージが照らされ、暫くすると客席の照明も落ち、準備が整います。 平田さんが競歩の歩きで登場、一礼のあと、やはり俯いて集中力を高めてから始まります。

ブラームスの交響曲第1番、しっかりとした構成感と躍動感、これらをともに持った熱い演奏に感動しました。 指揮者の平田さん、相当に研究されたのだと思います。 とても熱いブラームスの演奏に、目の前のうろこがポロポロと落ちるようでした。 そしてこれまでも真摯で熱い演奏を提供してくれた紫苑交響楽団。 今回もやってくれるとは思っていましたが、ここまでとはちょっと想定外。 平田さんの解釈によるところも大きいと思いますが、オーケストラもまた素晴らしい演奏で応えて見事でした。 なかでも第2楽章、コンマスのソロは、この交響曲の白眉。 ホルンのソロとも柔らかく絡んで時の経つのを忘れて聴き入りました。

第1楽章、深くてハリのあるティムパニの打音、弦のアンサンブルにも艶が感じられて、素晴らしい開始でした。 それをぐいっと止め、管楽器そして弦のピチカート、いずれも奥行きを感じます。 オーボエ音色もまた素敵でした。 躍動感と重量感を兼ね備えた演奏で、ホルンがこれまたタイトに吹いて、熱気も充分に孕んでいます。 整った演奏ながらも熱い熱いブラームス。 ぐいぐいと惹き込まれてゆきました。 平田さん、要所を締めているのはこれまでと同じですが、細かな指示も繰り出しているようです。 そしてオケの響きもまた、前プロではあまり感じられなかった「粘り」も感じられて最高。 コントラファゴットもそんな粘りを感じました。 落ち着きながらもぐいぐいと力を入れた終結部。 熱っぽく畳みかけていますが、これらをきちんと纏めています。 ハリのあるティムパニの打音、柔らかな盛り上がりを経て最後はじっくりと溜め、そしてふわっとしたピチカートで締めました。

第2楽章、深みのある弦のアンサンブル、爽やかさもあります。 低弦がしっかりと絡んでいて、いい感じ。 オーボエの柔らかな音色、しっとりとして素晴らしいですね。 平田さん、変わらず機械仕掛けのような動きです。 要所ではハナ息を出して纏めているのですが、オケからも柔らかな響きが出て来て熟成された響き。 弦のアンサンブルで織り成された響きにはコクもタメもあります。 クラリネットが暖かな響きも素敵。 若いオケらしく曖昧さが無く、しっかりと構成された音楽なのですが、生気に満ちたオケの響きで暖かさを感じるのでしょうか。 そしてコンマスのソロ、艶やかな響きで魅了されました。 ホルンもまた実に柔らかな響きで絡んできて、これはもう絶品。 言葉などありません。 感動しました。 ここからこの楽章の最後まで、息をするのを忘れそうになるほど聴き入ってしまいました。 だから詳細は書けません。

第3楽章、明るい音色のクラリネットの響き、平田さんここでは上下動でリズミカルに開始をしました。 この明るく柔らかな響きにより、目の前がぱぁ〜と晴れてゆくような感じもしましたね。 そして次第に力を増し、パワフルになり、ノッてもきますが、音楽の構成はしっかりとしたままです。 平田さん、オケはその動きにきちっと合せていて、ここでも曖昧さを感じません。 明るい音色のクラリネットが戻ってきて、平田さん、ゆっくりと左手を廻して音楽を止めました。 そしてその腕は下ろさず、そのままアタッカとして終楽章に向かいます。

第4楽章、ティムパニのトレモロ、弦のピチカートも厳かに始まります。 平田さん、しだいに上下動をはじめ、ぐっと溜めてティムパニに指示。 とてもよく考えられた感じのする開始でした。 そして次第に力を溜め、ホルンの斉奏の素晴らしい音色、フレーズの最後にパワーも込めて惹きつけられらますと、フルートもまた美しい響きで応えます。 じっくりと熟成された響きでの盛り上がりです。 トロンボーンの色合いがまた良かったですし、弦楽器のアンサンブルもまた素晴らしくて、心を打ちました。 生命の息吹がこんこんと湧き上がってくるような感じもして、感動。 涙が出そうになりました。 ホントとてもよく考えられていると思います。 しっかりとした音楽の構成の上でオケの演奏が繰り広げられている感じがします。 フィナーレ、ここは底鳴りのする低弦と金管コラール、ティムパニの力強さもまた素晴らしく、そして更に力が加わって一体となったオケの響き、それがクレッシェンドして開放された終結がまたもたた感動的でした。

熱い演奏にブラボーも出、掛け値なし。 時に目の前のうろこがポロポロと落ちるような演奏で、よく考えられた素晴らしい音楽に熱く大きな拍手を贈りました。

そしてアンコールはパリ交響曲の異稿とのこと。 初版のことでしょうか。 先の演奏よりも自由度の高さを感じたのはスコアによるものか、アンコールという気安さによるものか分かりません。 しかし、ニコラス・アーノンクールが大編成で演奏したらこんな感じかな〜 などと思って聴いていました。 とにかくこちらもまた面白く聴けましたが、考え抜かれた熱いブラームスの交響曲第1番のあとでは少々印象に薄くなりますね。 今回の演奏会、この曲に持ってっていかれたように感じました。 とても熱い演奏会を楽しませていただきました。 ありがとうございました。