BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
橿原交響楽団 ファミリーコンサート2008

大盤振る舞いの音楽をたっぷりと戻る


橿原交響楽団 ファミリーコンサート2008
2008年6月15日(日) 13:30 かしはら万葉ホール・ロマントピアホール

−夏−
 ヘンデル: 「水上の音楽」組曲第2番ニ長調より アラ・ホーンパイプ
 メンデルスゾーン: 劇付随音楽「真夏の夜の夢」より 序曲
 ヨハン・シュトラウス2世: ポルカ「雷鳴と電光」
−春−
 ヨハン・シュトラウス2世: ワルツ「春の声」
 ベートーヴェン: 交響曲第6番「田園」より 第1楽章
−冬−
 ルロイ・アンダーソン: そりすべり
 チャイコフスキー: バレエ組曲「くるみ割り人形」より 小序曲、行進曲、葦笛の踊り、ロシアの踊り(トレパーク)
−秋−
 オッフェンバック: 喜歌劇「天国と地獄」より 序曲
 グラズノフ: バレエ組曲「四季」より 秋
(アンコール)童謡メドレー(もみじ〜故郷〜赤とんぼ)

指揮: 吉崎直之

橿原交響楽団らしい明るくてアットホームな響きの演奏会を楽しみました。

橿原交響楽団の定期演奏会には何度かお邪魔していますが、橿原交響楽団のファミリーコンサートは初見参となります。 無料の演奏会なのに、プロ司会者付きのコンサートなんですね。 

今回のテーマは「四季を感じるコンサート〜季節の音楽、集めました」。 文字通り四季にちなんだ構成、しかもオーケストラからのお便り、演奏前に子供やお爺さんなどに扮装をした団員の方がお手紙を司会者に届けるといった演出も面白く、そして何より夏・春・冬・秋と並べられたてんこ盛りの音楽。 そして演奏は、橿響らしい明るく暖かなアンサンブルですね。

指揮者は、初めての客演となる吉崎直之さん。 プロのトランペット奏者でありブラスバンドの指揮・指導を主にされているからでしょうか、金管がのびのびと演奏されていたんじゃないでしょうか。 弦楽器ももちろん頑張っていて、田園交響曲などでは低弦もぴったりと絡み、ゆったりと優雅に進みます。 古典の名曲、難しいと思うのですが、古楽器奏法ではないけれど、ヴァイオリンの数が少ないがかえって爽やかで原典版っぽい雰囲気も醸し出してましたね。 そしてラスト、グラズノフのバレエ組曲「四季」の「秋」は伸びやかな木管楽器、橿響らしい明るいアンサンブルに色彩感もよく良く出ていて、耳馴染みのない曲だけど、あぁいい曲だなぁ、って思わせるのに充分。 そしてアンコールに童謡メドレーをもってきて、親しみのあるメロディを口ずさみながら帰ることのできる構成もなかなかです。

全9曲にアンコール曲。 希望者が指揮をする指揮者コーナーもあって、定期演奏会よりも多いお客さんとともに大盤振る舞いの音楽をたっぷりと楽しませていただきました。 これまで伺ってこなかったこと残念でした。 来年もまた来たいですね。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

始めてのホール、事前に調査したものの少々不安な気持ちを抱いて畝傍御陵駅に到着しました。 奈良県橿原市、奈良市に次ぐ奈良県第2の都市。 その畝傍御陵の駅前、「歴史と出逢う都市「かしはら」」という看板が目に入ってきました。 平城京の前、藤原京が造営された所なのですね。 駅から国道に出てホールまで約15分、演奏会のチラシの地図を見ながら歩いている人達もいて、何故か嬉しくなりました。

開演20分前、ホールに入って に-10 を確保しました。 後ろから4列目です。 席につくやいなや、スーツを脱いで腕まくり。 単身赴任、先の木曜日の名古屋出張、これにかこつけて帰省した帰りなのでスーツ姿なのです。 これで一息つきました。

定刻を告げるブザー、オケの方が左右の楽屋より整列入場します。 客席は約8割の入りでしょうか。 結構入っていますよ。 コンミスが登場、いったん座ってから、立ち上がってチューニングを開始します。 オケは通常配置で 7-5-5-6-4 の編成みたい。 客席の照明が落ちると女性司会者が登場しました。 無料のコンサートなのに、プロ司会者が付くとは素晴らしいですね。

今回のテーマは「四季」。 「四季を感じるコンサート〜季節の音楽、集めました」のタイトルどおり、オーケストラからの四季折々のお便りとともに演奏が繰り広げられるようです。 まずは麦藁帽子に虫取り網を持った団長さんが出てきて、お便りを司会者の方に手渡してひっこみます。 なんともユーモラスな演出が楽しく、クスクス笑いのリラックスムード。 白ジャケットの指揮者・吉崎さんが登場してヘンデルの「水上の音楽」組曲第2番ニ長調より「アラ・ホーンパイプ」。 のびのびとした金管に爽やかな弦楽器、明るい音色で曲が進みました。 吉崎さん、本業はトランペット奏者だからでしょうね、金管が本当に伸びやかに演奏していました。

司会者が登場、真夏の夜、すなわち夏至の夜には妖精たちが現れる話をしてからメンデルスゾーンの劇付随音楽「真夏の夜の夢」より「序曲」が演奏されます。 神秘さと華やかさを併せ持ったバランス感覚の良い演奏でした。 緻密に響く弦楽器による序奏、ちょっとストレートながらも華やかに盛り上がる金管、常に落ち着いた木管アンサンブル。 丁寧ながらもリズミカルな面をしっかりと持って演奏されて、なかなか良かったですよ。

傘を差し、雨合羽を着た女性が手紙を持って司会者に手渡します。 そしてヨハン・シュトラウス2世のポルカ「雷鳴と電光」、高揚感があって明るく楽しさを感じさせる演奏が良かったですね。 勢い良くスタート、大太鼓がドロドロッと打ち、トロンボーンが元気です。 弦のすべるような響きも素敵。 でも管打楽器が元気良いなぁ〜 しっかりと抑制も効かせてますしね。 吉崎さんも軽くジャンプするなどノッている感じかな。 最後は、ぐっと溜め込んで解放。 うん、これには会場内の反応もすごく良かったですね。

オケ・メンバーの入れ替えがあり、ランドセルに黄色い帽子の小学生スタイルの方が春のお手紙を持ってきました。 ヨハン・シュトラウス2世のワルツ「春の声」、大きく弾みをつけるように振って抑揚のついた開始からたっぷりと進めます。 金管が抜けるように聞こえてくる華やかさと優雅さ。 吉崎さんも踊るようにして盛り上げて主題を戻し、やわらかな暖かな響きとします。 フルートが綺麗でしたねぇ。 活気を持たせたティムパニのロールをともなって終了。 会場はもうリラックスムードですね。

今度は指揮者の吉崎さんからのお手紙。 司会者から吉崎さんへのインタビューもあり、ベートーヴェンの田園交響曲。 低弦もぴったりと絡み、ゆったりと優雅に進みます。 クラリネットの暖かで明るい響き、オケが集中力を保って進めてゆきますが、後半は丁寧さがかえって淡々とした感じになったのでしょうか。 オーソドックスに丁寧にまとめていました。 古典の名曲、難しいと思うのですが、古楽器奏法ではないけれど、ヴァイオリンの数が少ないがかえって爽やかで原典版っぽい雰囲気も醸し出してましたね。 いい演奏だったと思います。

15分間の休憩。 「迎春」と書かれた大きなカードが付けられたクリスマスツリーが出てきました。 お正月の凧も付いてますね。 そしてオケの方が登場すると、黒の冬の衣装に着替えられてます。 凝ってますねぇ。 そしてコンミスも黒の衣装で最後に登場、チューニングを行って準備完了です。

司会者の方もまた黒のスーツに着替えられていて、風邪をひいてマスクをして咳き込みながら登場したおじさんよりお手紙を受け取ります。 冬真っ盛り、アンダーソンの「そりすべり」となります。 燕尾服を纏った指揮者の吉崎さんが登場して始まります。 明るい響きのトランペットによる滑り出しも上々、脇でリズムをとって進める吉崎さん、弦楽器もまた明るい響き、軽快ながらも上質な音楽。 金管楽器がジャズっぽくも感じられ、ゴキゲンです。 最後の馬のいななきも見事に決めて終了。 吉崎さんも楽しそうでした。

指揮者体験コーナー。 客席より指揮者2名と鈴の奏者1名を募って「そりすべり」の再演です。 最初の女子中学生の指揮者さんは今にも止まりそうな感じ、オケの方は相当しんどかったと思います。 2人目の女子高校生の指揮者さんは軽快に進めてゴキゲン。 でも鈴を担当された初老のおじさまはさすがに2曲連続では疲れ気味で、それぞれに楽しく聴かせていただきました。

さて、迎春のカード、凧がはずされたクリスマスツリー。 管楽器奏者の列にはモールも張られ、サンタクロースまで登場してクリスマス一色となりました。 チャイコフスキーの「くるみ割り人形」ですが、なんと4曲も。 小序曲、暖かな響きで丁寧に進めてましたが、少々緩みそうになったのを吉崎さんがうまく纏めてました。 行進曲、ファンファーレが少々乱れましたが2回目はバッチリ、低弦ピチカートの響きもまた心地よかったですよ。 そして徐々にチカラを込めていったのをスパっと止めました。 葦笛の踊り、フルート3本が暖かく絡んで心地よくて、素敵に進みます。 抑制かけた金管、低弦も落ち着いてました。 そして最後はトレパーク、勢いよくスタートしましたが丁寧な響きで進めます。 まろやかなホルン、トロンボーンとチューバが入ってゴージャスな響きになりました。 そこにタンバリンも加わってチャイコフスキーらしい華麗な響き。 スピードアップさせて駆け抜けるように終わりました。

ステージは暗転、オケの方がシフトする間にクリスマスツリーが運び出されました。 そして今度は七輪でサンマを焼く人が現れて秋を演出。 司会者もまた赤白帽をかぶって運動会風です。 曲も運動会の定番、オッフェンバックの「天国と地獄」序曲です。 勢いよく力強い響きが飛び出しました。 パワフルな金管楽器、クラリネットのソロも力が入っていたかな。 でもオーボエ、チェロなどのソロなども含め、暖かさが感じられます。 吉崎さん、左腕を廻して止め、勢いのついた音楽をぐっと溜め込み、そしてヴァイオリンのソロとなります。 これまた暖かな音色、じっくりと進めてゆきました。 そしてしだいにノッてきたのでしょう、吉崎さんも軽くステップを踏み、力を増し、大きく振ってお馴染みの運動会の定番メロディに突入。 軽快に駆け、パワフルに吹いてゴキゲン。 弦の力も加わって豪快に曲を閉じました。 盛り上がりますね。

秋祭りのハッピ(法被)姿の方が出てらっしゃいました。 秋もたけなわといった感じ。 グラズノフの「四季」より「秋」が演奏されます。 伸びやかな木管楽器、橿響らしい明るいアンサンブルに色彩感もよく良く出ていて、耳馴染みのない曲だけど、あぁいい曲だなぁ、って思いました。 まずは「バッカナール」、明るい響きをたっぷりと。 きらびやかな感じもよく出ていましたが、何よりも落ち着きが感じられたのが聴き応えに繋がっていましたね。 「小さなアダージョ」は伸びやさもあってしっとりとさせられましたし、「バッカスの礼賛」でバッカナールの再現をまた色彩感たっぷりにやったあと、「アポテオーズ」で冬を予感させる落ち着いた響きから吉崎さんが∞字に振っていたのを次第に力を込め、大きくパワフルにしたのをぐいっと引き止めて終了。 聴き応え充分なフィナーレ、大きな拍手を贈りました。

夏・春・冬・秋と並べられたてんこ盛りの演奏会、アンコールもまた童謡メドレーとなって、もみじ〜故郷〜赤とんぼ、とお馴染みのメロディをたっぷりと楽しませていただきました。

演奏会の途中では携帯電話が鳴ったり、子供がステージにいる「とうちゃん見えへんよ〜」なんていう声も後ろから聞こえてきましたれどね、アットホームで橿響らしい明るく暖かなアンサンブルが勝っていました。 何より演出が凝っていましたし、最後に童謡メドレーをもってきて、親しみのあるメロディを口ずさみながら帰ることのできる構成もなかなかのものです。 それに無料の演奏会でしょ。 橿原の方はいいですね。 このような大盤振る舞いの演奏会、来年もまた機会があえば伺いたいと思います。 とにかく皆さん、おつかれさまでした。