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かぶとやま交響楽団 第38回定期演奏会

期待を裏切らない気持ちの引き締まった演奏戻る


かぶとやま交響楽団 第38回定期演奏会
2008年11月22日(土) 14:00 伊丹アイフォニックホール

ドヴォルザーク: 交響曲第9番ホ短調「新世界より」 op.95
メンデルスゾーン: 劇付随音楽「真夏の夜の夢」より
  「序曲」「スケルツォ」「間奏曲」「道化師の踊り」「夜想曲」「結婚行進曲」
アイヴズ: 交響曲第1番ニ短調

指揮: 中村晃之

創立20周年のかぶとやま交響楽団の定期演奏会、今回もまたサウスポー中村晃之さんの指揮による先鋭的な演奏を堪能。 期待を裏切らない気持ちの引き締まった演奏会でした。

まずプログラムの筆頭に据えられたドヴォルザークの新世界交響曲、集中力の高さを持続させた引き締まった演奏。 特に第2楽章では遅めのテンポ設定で整然と進めてゆき、じっくりと聴かせたエンディングには拍手が湧き起こりました。 どの楽章も軽く音楽を流すことなど皆無、耳慣れた曲ながら斬新さをも感じさせて、新しいドヴォルザーク像を見たようでした。

続くメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」より抜粋された6曲、これらの曲もまた高い集中力で丁寧かつ強靭に演奏されていました。 恰幅が良く、鳴り響いた「結婚行進曲」もまた切れ味鋭く艶やかな響き。 いずれも尖った演奏を楽しみました。

そしてメインのアイヴズの交響曲第1番、実演は初めてで、録音で聴いたかどうかも思い出せません。 でも中村さんの指揮は見ていて判りやすくて、また先ほど聴いたドヴォルザークの新世界交響曲が用いられていることもあり、楽しませてもらいました。ただまだ個人的にはアイヴズはやはりゴチャゴチャとしているなぁ、なんていう印象には変わりはないですが、音楽のパッチワークとしてすっきりと纏められたこの演奏に接し、また聴いてみたいと感じたしだいです。

アンコールはなし。 いつもながらの意味を持たせたちょっと変わった選曲、耳新しい響きで日頃使わない脳ミソに刺激を受け、こちらもちょっと気持ちが引き締まった感じもして会場を後にしました。 素晴らしい演奏会でした。 創立30周年、40周年と、執念を重ねていって欲しいと思います。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

子供を家において奥さんと演奏会に参戦。 いろいろとあって家を出るのがちょっと遅くなりました。 最寄り駅で急行に乗り遅れたこともあり、遅刻を覚悟しながらも、乗換え駅をダッシュで繋いで、なんとか間に合いました。

1階席はほぼ満席なのは分かっているので、左サイドの最上段を目指しましたが、生憎埋まってしまっていたので、後ろより3列目、LG-11に落ち着きます。 落ちそうで怖い、と奥さんは言ってましたが、ここが楽ちんでいいのだと説明するうちに照明が徐々に落ちて整列入場が始まります。 6-6-5-5-4 の通常配置。 コンマスによる入念なチューニングを終えると、指揮者の中村さんが登場します。 軽い会釈をしてからオケの方を向きました。 始まります。

ドヴォルザークの新世界交響曲、集中力の高さを持続させた引き締まった演奏。 特に第2楽章では遅めのテンポ設定で整然と進めてゆき、じっくりと聴かせたエンディングには拍手が湧き起こりました。 どの楽章も軽く音楽を流すことなど皆無、耳慣れた曲ながら斬新さをも感じさせて、新しいドヴォルザーク像を見たようでした。

第1楽章、中村さんが低弦の方を向き、ふわっと振って始まります。 そしてウィンナホルンの独特な響きがホールに流れ、ゆっくりと間合いを取り、慎重に木管に繋いでゆきます。 中村さんが鋭く振り、キリッとした空気を感じた瞬間、底力のある弦の響きが流れ出しました。 お得意の強靭な演奏、ティムパニがまた強烈な打音でビシビシと要所を決めて進めます。 途中、艶のあるオーボエなどの木管を挟み込みますが、低弦がこれまた躍動的に弾いてまた力を盛り返す。 厚みのある弦の響きがとてもいいですね。 金管はちょっと不調だったかもしれませんが、全奏ではパワフル。 鋭角的な響きでもってこの楽章を終了。

第2楽章、ぐいっと芯のある響き導き出してゆっくりと進めますが、音楽はぎゅっと引き締まっています。 コールアングレのお馴染みのメロディ、これもゆっくりと、慈しむように吹くと、暖かな響きのクラリネット、フルートそしてファゴットが絡みます。 徐々に弦楽器の響きが増し、ここも遅めのテンポで味わいを感じさせつつ進んでゆくのですが、常に集中力が高く維持されていて、きちっと計算され尽くしたような感じですね。 中村さんの意図に従い、きちんと再現しているオケの巧さを感じました。 コールアングレが戻ってきて、同様に繰り返してゆきますが、このとき、中村さんの譜面台にスコアが置いてないことに気付きました。 暗譜だったのですね。 終結部、休符をしっかりと止め、味わい深いソロも絶品で、遅いテンポでじっくりと聞かせる高い集中力を保ったまま消え入るように終わりますと・・・ 拍手が湧き起こりました。

第3楽章、中村さんのハナ息、そして畳み掛けるような躍動的な音楽。 しかもこれが整然と進んでゆきます。 木管が歌います。 裏で吹くファゴットの音色が素敵でしたね。 また力を増してゆき、ティムパニは先の細いマレットでリズミカル。 中村さんも軽やかに横に揺れていました。 各パートが浮き上がるように聴こえてきます。 そして縦ノリのリズムでの盛り上がり。 主題を戻し、またもや味わいまでも計算された手法での引き締まった響き。 これを更にタイトに引き絞っての全奏。 トランペットがやや甘い響きで彩りを添えていました。 そして中村さんのハナ息、一撃を放って終了。

第4楽章、絞っては振り解くようにし、徐々に力と鋭さを増して進めます。 タイトなホルンの響き、トランペットも同様。 そして切るような弦の響き、鋭い音楽です。 縦ノリのリズムになっても引き締まったまま。 シンバルが入り、クラリネットが抑揚をつけた歌が清涼剤でしょうが、また徐々に弦が力を込め、切り込んできます。 常に引き締まった強靭な響き、インターナショナルな響きとも違い、もちろん土俗的な感じはなく、近未来的なのでしょうか。 独自の世界があるようです。 トロンボーンもタイトに力強く割り込んできました。 畳み掛ける力強さ、しかし時折聴かれる木管の艶のある響きなど、各パートが浮き上がって聴こえてきます。 決してどのパートも音楽を流すだけのようなことがありませんね。 そしてフィナーレ、中村さんが機械人形ような動きになって、鋭い盛り上がり。 そしてじっくりと響かせたエンディング、トランペットはやや短めのフェルマータで全曲を閉じました。

が、すぐに客席より拍手があったのは・・・もうちょっと間合いが欲しかったところでした。 知らない曲だと拍手するのが遅いのにな。

15分間の休憩。 奥さんがトイレ休憩に出たのに付き合ってロビーに出て気分転換をして自席に戻ります。 パンフレット、いろいろと興味深いことが書いてあるようですが、老眼の進んだ目にはちょっとしんどい文字の大きさですね。 いやはや・・・

定刻、オケのメンバーが揃います。 前回と同じ編成。 コンマスによるチューニングを行って準備が完了すると、指揮者の中村さんが登場します。 今度は譜面台にスコアがありますね。 さあ始まります。

メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」より抜粋された6曲、これらの曲もまた高い集中力で丁寧かつ強靭に演奏されていました。 恰幅が良く、鳴り響いた「結婚行進曲」もまた切れ味鋭く艶やかな響き。 いずれも尖った演奏を楽しみました。

「序曲」、フルートとクラリネットの澄んだ響きで開始、透明感の高い弦に引き継がれ、これもまた集中力の高さを感じます。 そして弾力ある響きの全奏、チューバの響きが心地良く、全体的に落ち着きと躍動感が同居しています。 そしてまた瑞々しい高音弦が戻ってきます。 中村さん、あまり指揮棒を動かすことなく、スコアを見ながら丁寧に進めているといった感じでしょうか。 緻密に響きを重ねながら曲が進みます。 終結部も爽やかな高音弦、木管がしっとりと吹き、そしてティムパニの静かな打音を持って集中力を保ったまま締めくくります。 拍手が出ました。

「スケルツォ」、豊かな木管によるアンサンブル、弦楽器も息づいて登場。 ここでも中村さんが、緻密に曲を進めています。 低弦が徐々に力を増してティムパニの登場。 引き締まったスケルツォですね。 各パートの分離が良く、集中力を保ったまま躍動させる。 どこかシュールで、現代音楽っぽさも感じました。

「間奏曲」、湧き上がるようにオケの旋律が流れ出てきました。 弦楽器と管楽器のつながりも良く、哀愁を含んだ旋律ですね。 でもここでも鋭さを秘めているような感じ。 しっかりとした休符、チェロの旋律に続いてファゴットが暖かな音色が素敵。 躍動する音楽を鋭く切って終了。

「道化師の踊り(ベルガマスク舞曲)」、艶やかなオケの響きによる開始、序曲にも出た旋律ですね。 チューバが絡んで楽しさ倍増ですが底力があり、やはり集中力の高さも感じさせます。 力こめて躍動的にしたあと、切るように終了。

「夜想曲」、ホルンのまろやかな響きによる開始、ファゴットが絡み、コントラバスの響きがまた落ち着きを感じさせます。 このオケの特徴であるウィンナホルンの響き、とても素敵でした。 たっぷりと味わさせてもらいました。 中村さん、ここでも常に気を配って丁寧に曲を進めてゆき、最後も丁寧に纏めて曲を終えます。

「結婚行進曲」、トランペットによるお馴染みのファンファーレが豊かに響きます。 いい音色です。 全奏になっても落ち着いていて、雄大さも感じさせる恰幅のよい演奏。 これまでは淡々と振っていた感のあった中村さん、指揮棒を持つ左手の動きが大きくなりました(ご存知のとおりサウスポーです)。 オケの響きが伸びやかになって進みます。 トランペットが戻ってきて、また恰幅の良い響き。 中村さんのキレの良い動きで響きを集中させて、最後はいつもどおりぐっと伸び上がってから、大きく溜めを作り、全曲を閉じました。

いったん全員が退場してから、仕切り直しで再入場します。 弦の編成はこれまでと同じ。 コンマスによるチューニングを行ったあと、中村さんがちょっと足早に登場。 いつもどおりの軽い会釈でオケの方を向きます。 始まります。

アイヴズの交響曲第1番、実演は初めてで、録音で聴いたかどうかも思い出せません。 でも中村さんの指揮は見ていて判りやすくて、また先ほど聴いたドヴォルザークの新世界交響曲が用いられていることもあり、楽しませてもらいました。ただまだ個人的にはアイヴズはやはりゴチャゴチャとしているなぁ、なんていう印象には変わりはないですが、音楽のパッチワークとしてすっきりと纏められたこの演奏に接し、また聴いてみたいと感じたしだいです。

第1楽章、ヴィオラの方を向いた中村さん、そっと振って始めます。 クラリネットのやわらかな旋律が流れ、その旋律を第2ヴァイオリンが引き継ぎ、心地よい音楽です。 この旋律がどんどんと大きくなり、中村さん、時に大きくすくいあげるようにして進めてゆきます。 トランペットの響きがいい音色で、躍動的なオケになったかと思うと・・フルートの端正な響き。 メリハリをきちんとついていて聞きやすく処理されているようですね。 上から見ているので、オケの各パートがよく揃っていて、音楽のパッチワークのようでもあり、見ていても面白い。 ティムパニ、トロンボーンが入っての盛り上がり、右から聴こえるコントラバスのピチカート、高音弦の旋律が左から聞こえてくるステレオ効果もありました。 中村さんの動きは大きく、最後は抑揚をつけながらスピードアップ、ぐいっと押し込むようにして終了。

第2楽章、コールアングレによる旋律、チェロとヴィオラの響きもあいまってしみじみとさせて進むのは・・・やはり新世界っぽいですね。 そして、大きくたっぷりとさせてから、またコールアングレ。 これもまた新世界でしょう。 ヴァイオリンに表情をつける中村さん、想いをこめて進めてゆきます。 中間部でしょうか、大きく上下に振って情熱的な響きも感じます。 そして金管も入って熱くなって歌いあげていったのを・・すっと退き、コールアングレとヴァイオリンの1プルトでの演奏。 そして、ヴィオラとチェロの演奏に休符が入って止まったりと、これもまた新世界に似てますね。 そしてそっとこの楽章を閉じました。

第3楽章、軽く振って入ります。 フルートの厚みのある響き、艶ものっていました。 そして弦楽器の小刻みな動き、低弦に熱気が孕んで進んでゆきます。 弦楽アンサンブルがしっとりと揺れるようで、木管も絡んでまた優雅に歌い次ぎます。 中村さんが軽いステップを踏みながら進めて、まさにスケルツォ楽章ですね。 でも、音楽はしっかりと、丁寧に纏めています。 またフルートを始めとする木管の深い響きが流れ出てきますが、これがとても素敵な音色。 いいですね。 小刻みな旋律を纏めるように、中村さんは背を屈めて振り、そして音楽を止めました。

第4楽章、ハナ息とともにティムパニの一撃。 オケが走り始めますが、余裕を持った響き。 旋律を流れるように進めていたかと思うと、縦ノリな感じの旋律になったりもします。 トロンボーンとチューバの響き、木管のさえずり、弦楽器がそれぞれに呼応したり、対抗したり。 ここも音楽のパッチワークのような感じかしら。 各パートに引き継がれる旋律が少しづつ変化しながらスピードアップ。 中村さんの動きは機械仕掛けの人形のようなカクカクした動きと化しました。 中村さんを見ながら聴いていると、これまで(多分)聴いたことのない曲ながらも、なんとなく判ってしまうような感じがします。 面白いですね。 そして、トロンボーンのファンファーレ、ホルンも勇壮に吹き、ティムパニが入って行進曲でしょうか。 ヴァイオリンが更にスピードを上げ、金管も高らかに歌い上げます。 そこに弦が更に力入れての大団円、全曲を閉じました。

アイヴズはやはりなんだかゴチャゴチャとしているなぁ・・・なんて思ったりもしながら聴いていましたが、中村さんの指揮を見ていると、けっこう楽しく曲を追いかけて聴くことが出来ました。 それに感謝、大きな拍手を贈りました。

そして数度続いたカーテンコールにもアンコールはなし。 これでいいと思います。
とにかく、いつもながらの意味を持たせたちょっと変わった選曲、耳新しい響きで日頃使わない脳ミソに刺激を受け、こちらもちょっと気持ちが引き締まった感じもして会場を後にしました。 素晴らしい演奏会でした。 これから創立30周年、40周年と、執念を重ねていって欲しいと思います。 皆さんお疲れさまでした。