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オーケストラ・アンサンブル金沢 NEW YEAR CONCERT 2009

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オーケストラ・アンサンブル金沢 NEW YEAR CONCERT 2009
2009年1月13日(火) 19:00 横浜みなとみらいホール・大ホール

ベートーヴェン: 「エグモント」序曲 op.84
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第5番変ホ長調「皇帝」 op.73

(アンコール)リスト: ラ・カンパネッラ

ベートーヴェン: 交響曲第7番イ長調 op.92

(アンコール)吉俣 良: NHK大河ドラマ「篤姫」よりメインテーマ

独奏: アリス=紗良・オット(p)

指揮: 井上道義

OEKのニューイヤー・コンサート、井上道義さんの指揮は、以前見たときよりもアグレッシブな動き、パフォーマンスも含めて見応えありました。 また、OEKの演奏も響きの隙間を作らないし、個人がソリストになるようなことのない全体が一つのオケというような上質なものでした。

でも、このニューイヤー・コンサートは全国11箇所のツアー、その第5回目の横浜公演だったこともあるでしょうか、巧い、確かに巧いし、面白いんだけども、それが感動に繋がらない・・・そんな感じかな。 良い意味でも○○な意味でもプロの演奏だったと思います。

なお曲目は、オール・ベートーヴェン・プログラム。 エグモント序曲、ピアノ協奏曲「皇帝」、交響曲第7番・・・ニューイヤーコンサートのプログラムらしくないのは何か意味があったのでしょうか。

皇帝の独奏は、20歳のアリス=沙良・オットという美人ピアニストさん。 技巧が勝っている感じかな。 テクニックはあるのでしょうが、あまり想いが伝わってこない・・・皇帝の第3楽章ではパワー不足なのでしょうか、井上さんの指揮も抑え気味で付けていたようで、個人的にイマイチ乗り切れませんでした。
またアンコールのラ・カンパネッラ、こちらも湧き上がってくる情熱が感じられなくて・・・会場がなんでこんなに沸くのか不思議でした。

一番自分の想いとマッチしたのは、交響曲第7番の第2楽章。 この葬送行進曲は、井上さんの繊細な感覚による指揮とOEKの妙技が加わって、惹きこまれました。 最後の一音まで集中した演奏が素晴らしかったですね。

いずれの演奏も響きを丁寧に繋ぎ、隙間を作らない演奏をしていたようです。 なお座席が3階席で、ホール最高峰。 しかも後ろから2列目だったのですが、この場所では響きの抜けがよくないなぁ〜などと思ったりもしたのですけれど、アンコール曲のNHK-TV大河ドラマ「篤姫」メインテーマではよく分離して聴こえてきましたしね。 

色々な意味でプロらしい演奏を聴かせてもらいました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

OEKのニューイヤー・コンサート、全国11箇所を巡回するツアーの横浜公演のチケットを頂きました。 川崎のオフィスを定時で退けて、みなとみらいホールへ。 年末にパシフィコ横浜へ行っているので、迷わずに行けます。

ホールに入って最上階へ移動。 3階席C5列24番、中央奥ながらほぼ最高峰(後ろから2列目)ですね。 綺麗なホール全体を見渡せます。 ウィンナワルツなど、ニューイヤーコンサートらしいロビーコンサートの音が客席にも流れてきていますが、席について、入り口でいただいたパンフレットを見て時間を潰します。 二つ折りのパンフ、写真入りのメンバー表はあるものの曲目説明など一切なし。 本当のパンフレットは別売ですか、さすがにプロオケの演奏会ですね。

予鈴、このホールでは横浜らしく銅鑼の音が流れるのですね。 そして定刻、左右より整列入場が始まりました。 編成は、8-6-6-4-2 とOEKらしい少数精鋭。 あとで気付いたのですが、配置がちょっと変わっていて、ヴァイオリンは対抗配置ながら、その他は通常配置です。 つまり第2ヴァイオリンとヴィオラが入替った感じですね。 第7番を演奏するのこうしたのでしょうか・・

オケのメンバーが全員揃うまで楽器を持ったまま皆さん立っています。 そして、全員が揃うと、客席に向って綺麗に揃った一礼をして、拍手が一段と大きくなって席につきます。 気持ちいいですね、コレ。 コンミスによるチューニングを終えて、準備完了。 井上ミッチーが大またで颯爽と登場します。 指揮台はなく、オケと同じステージの上なのはいつもどおり。 キレの良い一礼をし、くるりとオケの方を向き、始まります。

「エグモント」序曲、弾力のある柔らかな響きが湧き上がってくるようで、いきなり魅了されます。 オーボエの静謐な響きも素敵。 井上さん、鋭く振ってオケを挑発するような感じですが、オケは余韻のある響きで丁寧に応えて進めてゆきます。 ホルンの斉奏も軽くバリバリッと吹く感じ、トランペットがやや突き抜けて響いてきて、突出した感じはなく上質なアンサンブル。 でも井上さんのアクションは大きくて、またパフォーマンスの要素も含まれているように思えます。 インパクトは充分。  さっと止め、徐々に音量を上げてクライマックスでもオケは確実に持ち場を守って上手くて綺麗な演奏。 でもね、馴れたお仕事という臭いもどこか感じちゃいました。

弦のメンバーがいったん退席、ピアノを中央に運び出してから、また再登場。 弦楽器の編成は同じ。 ホルンは4人から2人になってましたね。 準備が整うと、アリス=紗良・オットさんが井上さんを従えて登場。 淡いシルバーか、パール色のようなドレスに身を包んでスリムで長身、ロングヘアの美人さんです。 さて、始まります。

ピアノ協奏曲「皇帝」、技巧が勝っていた感じでしょうか。 テクニックはあるのでしょうが、あまり想いが伝わってこない演奏に思えました。 とくに第3楽章ではパワー不足なのでしょうか、それまでアグレッシブに振っていた井上さんでしたが、ここでの指揮は抑え気味な感じで、個人的にイマイチ乗り切れませんでした。

第1楽章、井上ミッチーが上から振り下ろし、ピアノが流れ出てきますが、ホールの場所のせいかしら残響が多いのかちょっとパンチに欠けるような・・・でも華麗なピアノの響きですね。 オケは重心を低くして伴けていて、たっぷりとしつつも、ミッチーらしくテンポを揺らして想いを伝えようといった感じがありますね。 そして木管がまったりとした良い響きで好サポート。 しかし、ピアノはどこかチェレスタにも似た響きがして、テクニックは充分で煌びやかで華麗なんだけれども、タッチが強くないのかな、芯の強さといったものが感じられない感じ。 でもオケは上手くて、刺激的な響きは皆無だし、井上さんのカッコ良い動きで盛り上がってゆきます。 そして丁寧に纏めてこの楽章を終了。

第2楽章、中低弦のピチカート、ゆったりとした開始。 落ち着いた音色のヴァイオリン、弦楽アンサンブルがうねるようでもあり、巧いオケですよ。 ピアノも丁寧にゆったりとした響きでオケと併せて進みます。 響きが明るいのが特徴でしょうね。 思索的な感じはありません。 ここでもオケの木管が巧いなぁ。 きちんとオケの響きに溶けた柔らかな響きながら存在を主張しています。 ピアノの瑞々しい響きのあと、オケがぐっとテンポを落としてゆきます。 集中力高く、オケが止まりそうになるほどぐっとをスピードを落としてタメをつくってこの楽章を抜け、アタッカで。。。

第3楽章、性急な感じ駆け足で過ぎてしまって、あれれ、といった感じ。 オケの伴奏も何だか型どおりですしね。 さっき何のためにタメを作ったのかが分からないなぁ。 ピアノが煌びやかだけれども、重厚感が感じられず、よく言うと思索的な感じなので面白い演出なのかもしれませんが、個人的には少々受け入れられませんね。 オケのみになると、ミッチー節も出て盛り上がりますが、ピアノが加わると柔らかな伴奏ですね。 パワー不足なんでしょうか。 それらをカバーしながらもそれなりに聴かせているのは巧さなんでしょう。 でも感動とはほど遠いですね。 決して下手な演奏ではありませんけれど。

ということで適当に拍手したのですけど、会場はお正月のご祝儀でしょうかね、ミッチーのスピーチまであって(OEKが出来て20年、彼女もまた20歳、若々しい演奏をとアンコールは)ラ・カンパネッラとなりました。

こちらの演奏も煌びやかな響きでしたね。 若々しい、確かにそんな感じのテクニック主導の演奏でしょう。 スピードを落としてもタメになっていなくて、サラサラと流れていく感じ。 タッチは鋭くてテクニックは感じられても、バリバリッとピアノを鳴らして湧き上がってくるような情熱が感じられなくて・・・若々しい、確かにそんな演奏だったと思います。 演奏後、会場がなんでこんなに沸くのか不思議でしたね。 おじさんには乗り切れない演奏でした。

20分間の休憩、席でおとなしく時間を過ごします。 3階の客席も7割以上入っていたでしょうか。 1階席はよく見えませんが、けっこうお客さんが入っているのではないかな。
定刻となりオケのメンバーが整列入場します。 今度の編成は 8-6-4-4-3 でしょうか、低弦が1本増強されたようで、変わらずヴァイオリンのみ左右振り分けとなっています。 井上さんが、大股で精力的な雰囲気満載で登場し、始まります。

交響曲第7番、第2楽章が素晴らしかった。 この葬送行進曲は、井上さんの繊細な感覚による指揮とOEKの妙技が加わって、惹きこまれました。 最後の一音まで集中した演奏がとても素晴らしかったですね。

第1楽章、一礼のあと間髪を置かずに開始。 柔らかな響きだけれども鋭さを秘めた響きがOEKらしさでしょうか。 ゆったりと、でも跳ね上げるよう振って、キレの鋭さとまろやかさが同居。 小編成らしく、よく整った演奏ですね。 相変わらず木管の響きの美しさが弦楽アンサンブルと呼応、全奏となっても響きの柔らかさが損なわれることは皆無。 この曲に迫力や熱気を求める方には物足りないかもしれませんが、巧さが光っています。 ただ第2ヴァイオリンを右側に配しているものの、3階のこの席からでは、その効果はイマイチといった感じ。 パワー不足? 井上さん、アクションも多彩で見ていると面白いですね。 でもその面白さが曲にのっているかというと、そうでもなく見た目ほどのワクワク感はありません。 フィナーレのホルンの強奏もそれなりといった感じで綺麗に纏めて終了です。

第2楽章、木管のアンサンブルを弦楽が繋いで、特に中低弦がいい響きで惹き込まれました。 この楽章、井上さん、強弱をうまくつけ、全体として遅いテンポで丁寧に進てゆきました。 管楽器、金管・木管ともに響き合っていますし、弦楽の各パートもまた響きあってすべての楽器が一つになり、言葉は悪いのですが、まとわりつくような響き。 それ奏でられる葬送行進曲に耳が離れなくなりました。 これは掛け値なしに素晴らしい。 時間を忘れて聴いていました。 この楽章のエンディング、緻密に響きを纏めて、木管とピチカート・・・素晴らしい集中力、最後はふわっとした着地を決めて終了。 客席も緊張していたのでしょうか、咳払いが一段と大きく響いていました。

第3楽章、軽やかに盛り上げて、明るく爽やか、それに端正さを織り交ぜ、緻密な感じで進めます。 トランペットの響きはまろやかで、少々キラメク感じもありますが上品ですね。 全体として、息を長くとっているような感じ。 テンポをやや落としたあと、主題を戻して駆け出します。 緻密な響きながらも、井上さんが軽やかにステップを踏む場面もあったりして、性能の良いオケを駆使しながら、色々と考えて演っておられるようですね。 とにかく刺激的な響きは皆無です。 そして最後は流すような感じですっ〜と響かせて、アタッカとなります。

第4楽章、うねるような感じ。 それでいてホルンなどもっと前に出てもよいのでは・・と思うほど。 刺激的ではありませんが、歯切れの良さはちゃんとあります。 テンポを上げて走っていますが、息せき切らないのは、オケの各パートがしっかりとしているからでしょう。 しっかし、井上さんのアクションは派手で、オケを挑発するようなパフォーマンも見られて面白いのですが、やはり音楽は想定の範囲のずっと内側にいるのでワクワク感は見た目ほどありません。 金管の活躍する場面、ここは良く音が出ていましたが、余裕を持った感じ。 全国11箇所も同じ曲をするのですから、アマオケでの一発勝負みたいな緊張感を求めてはダメですね。 それと関係なく(というと語弊があるかな)井上さんの動きはアグレッシブ、最後は左上に切り上げるようにして、止めて全曲を終了しました。

何度かカーテンコールが繰り返され、アンコールをせずに終わろうと・・・オケの皆さんが各席に向って一礼。 その拍手が高まったのを捕らえて、井上さんが楽屋から姿を覗かせるとまた拍手で、結局そのまま出てきて、本当は(アンコールを)演りたいんだと言って、「篤姫」のメインテーマを演奏してお開きになりました。

ドラマを見ていないので、曲そのものはよく分かりませんが、これまでのベートーヴェンと違って、オケの各パートの見晴らしの良さに驚きました。 こんなにサウンドが変わるのかと・・。 ベートーヴェンでは、響きの隙間を作らないようにと、細心の努力を図っていたのではないでしょうか。 色々な意味でプロらしい演奏を聴かせてもらいました。