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大阪市民管弦楽団 第74回定期演奏会

重なり合って届けられる響きに感動戻る


大阪市民管弦楽団 第74回定期演奏会
2011年9月11日(日) 14:00 ザ・シンフォニーホール

ラヴェル: 古風なメヌエット
マーラー: 交響曲第9番ニ長調

指揮:井村誠貴


響きの調和を大切にし、大きなうねりの中でオーケストラを集中させてゆくのが井村さんの真骨頂。 それが大阪市民管弦楽団とともに素晴らしい演奏として結実した今回のマーラーの第9番でした。 しばし放心状態となったあと、大きな拍手を贈りました。

特筆したいのは第4楽章。 重層的な弦アンサブルがとても素晴らしく、これにオーケストラの各楽器群が加わり、層を成して届けられてくる音楽に深く感動しました。 そして、いずれの響きにも思いがこもっているのが判りました。 何故か、長い道のりを歩いてきた、そしてこれからも歩いてゆく、そのようなことがふっと頭に浮かびました。 井村さん、大きく身体をうねらせながら、この曲の中に演奏している方々の思いを込めさせているのでしょうね。 それによって演奏をより大きなもの、真正なものにしているように感じました。 重なり合って届けられる響きに涙が出そうにもなりましたし、弦楽器のソロがまた可憐で美しくありながらも落ち着いた響きに惹かれました。 音楽の中に静寂さをも感じられた素晴らしい演奏。 そっと、そっと・・・そして祈るような終結となって、本物の静寂がホールに広がっていった感動的な幕切れでした。

演奏に参加された皆さん、お疲れさまでした。 そして素晴らしい演奏を有難うございました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

2002年8月31日(日) 同じくシンフォニーホールで聴いた井村さんの指揮によるマーラーの交響曲第9番。 井村さんとマーラーの第9を演奏するために集まったアマチュア、音大生、プロも加わったオーケストラMFIによる演奏は、ロマン的でありどこかオペラ的な要素も感じたことを思い出します。 その後、2008年2月24日(日)いずみホールでの待兼交響楽団とのこの曲の演奏会は、既に単身赴任となっていたことより聴けず、残念な思いをしましたけれど、今回は帰省が叶い、家族とともにホールへと向かいました。

思えば2002年、まだ小学生だった長男はすでに高校3年生。 長女は地方の大学に進学したので今回は連れて行けませんが、当時入院していた祖父の看病で演奏会に行けなかった家内を連れ(看病で忙しかったので、休みの日には子供を連れて家を出すのが倣いでしたけれど)、前回と同じく一家3人での観戦となりました。 そのような時の流れも感じつつホールに到着。 座席を引換えたあとは腹ごしらえです。 2002年の時は「なか卯」、ここで巨漢ゆらむぼさんをお見かけしたことが懐かしい思い出ですが、あいにくの満席。 ちょっと道路を戻って「眠眠」に落ち着きました。 ここはホールのチケットを見せると杏仁豆腐がサービスされるのですね。 昭和の雰囲気を残す店内になんとなく落ち着きます。 杏仁豆腐も頂いてお腹も満足しましたので、いざ出陣。

ホールの座席はCC-44。 2階席中央前列、やや右側ですが見晴らしが良くて好きな席です。 見渡すと2階後方はもとより、2階両サイドもいっぱい。 クワイア席にも7割近くのお客さんが入っているようでした。 CC列が確保できてラッキーでした。 定刻までパンフレットなどを眺めつつ、知っている顔がないかと時おり見回しましたが、さすがにこの大勢の人では無理でした。 ステージは自由入場。 開演5分前より三々五々と集まってきました。 オーケストラは通常配置、14-12-12-11-9 の編成だったと思います(数え間違いがあるかもしれません)。 とにかく中低弦を厚くしているようです。

定刻、コンマスが出てきて客席に一礼。 客席からの暖かな拍手のあと入念なチューニングを行って席に着きますと、井村さんが登場。 コンマスと握手をし、客席に深々と頭を垂れ、さっとひるがえって、いよいよ始まります。

ラベルの古風なメヌエット。 整理された慎重な響きで曲が進んでいった、そのような印象を持ちました。 元より管弦楽の魔術師ラヴェルの作品ってあまり聴いていないので、大それたことは言えません・・・ ミスが耳つくことなどありませんでしたが、どことは言えず何となく練れていないように感じたのですけれど・・・、でも長男は演奏後、面白い、この曲は面白いなぁと盛んに言っていました。 受験生ながら今でもバンド活動をやっていて、ベース・ギターを弾いているのですから、彼の言うのが正しいのかもしれません。 ただちょいと自分とは合わなかったということで御容赦願います。

さっそくまた20分の休憩。

こちらもステージは自由入場で、休憩時間半ばの10分前にはコントラバス奏者のほぼ全員が揃っていて、準備に余念がありません。 いい意味での緊張感が客席にも伝わってきます。 席替えなどしていますが、弦楽器の編成は先と同じだったように思います。 そして定刻。 今度はコンサートミストレス、すっと立って入念にチューニングを行って席に着くと、井村さんの登場です。 今度はさっと登壇し、客席に深々と頭を垂れたあと、オーケストラに向かってからしばし沈思黙考。 ようやく指揮棒を構えて、始まります。

第1楽章、序奏、ゆっくりと厳かな開始ですが、かなり遅めのテンポ設定に驚きました。 静かに曲を進めてゆきますが、オーケストラも各パートが一丸となり、遅めのテンポによく合わせて見事です。 井村さん、ぐっと踏み込むと、ティムパニの張りのある打音でぐっと盛り上がります。 そして長身を大きくのけぞらせて、オケ全体を掴むようにしてクライマックスを形成。 そしてその後の落ち着き、統制もよかったですね。 オーケストラが一丸・一体となっています。 2002年の時は、楽器の数が少なくなると緩く感じる部分もあったのですけれど、今回はこの後も皆無でした。 この楽章は管打楽器のタイトな響きが印象的。 なかでも低音金管楽器の重い響きが良かったですし、銅鑼・バスドラ・ティムパニそれぞれに要所をかちっと引き締めていました。 後半、ヴァイオリンをたっぷりと歌わせていたのもまた魅力的でした。 余熱を十分に感じさせながら、柔らかなピチカートでそっとこの楽章を閉じました。 客席も緊張感から開放され、咳払いがあちらこちらより溢れ出ていました。

第2楽章、ヴィオラの淡い響きを伴って明るいファゴット、クラリネットが響く素適な開始から、ぐっと惹き込まれました。 軽やかな弦アンサンブル、リズミカルな音楽として進んでゆきますが、裏ではしっかりとチェロ、コントラバスが鳴っています。 安定感抜群。 そして、さあどうぞとヴァイオリンを歌わせて素適です。 井村さん、軽くジャンプをしてオーケストラをノセて軽やかに進めてゆきますが、それがまた緩やかなテンポとなっても、変わらず低弦がきちんと音楽の土台を支えいます。 この楽章を始め低弦が芯になっていたのもまた印象的でした。 ファゴットの響きが戻ってきて、また明るいアンサンブル。 よくオケが纏まっています。 この後、いずれのソロもまた素適な響きでしたけれど、何よりオケがやはりひとつに纏まっていて、流れる音楽に身を任せて聴きました。 素晴らしい。 そしてこの楽章はストレートに駆け抜けて終了。

井村さんが指揮台を降りるとチューニングを実施。 少々インターヴァルをとり、オケ・指揮者ともに呼吸を整えてから再開します。

第3楽章、よく引き締まった機動力に溢れた演奏でした。 冒頭よりリズミカルでいて、ぐいぐいと音楽が推進します。 オケの各パートはここでもまたよく纏まっていて、その中でもやはり低弦。 しっかりと芯を支えているので、音の洪水となり、ヴァイオリンが疾走しても、全体が真摯な響きとなって聴こえてきます。 長身の井村さん、ここでも更に大きく伸び上がるようにして、ホルンの斉奏を呼び込みますが、これもまたタイトな響きが素晴らしい。 シンバルの一撃、ピタッと決まってカッコ良かった。 トランペットのソロはもう少し抑揚が欲しいようにも思いましたけれど、真摯さという点ではこの演奏にマッチしていたようにも感じました。 とにかく一丸・一体。 ティムパニのロールが力を増し、井村さんが横に大きく振って大きく盛り上げたあと、すっと引くのも見事だし、クラリネットの転がるようなフレーズもとても素晴らしかったですね。 そして徐々にまた力を増してホルンの斉奏、ベルアップも見事に揃っていて見た目も引き締まっています。 カッコ良い。 低弦が唸り、ティムパニがタイトに打つ怒涛のクライマックス。 指揮棒が右上に高々と掲げられ、ホールに残響が残る幕切れもまた見事でした。

間髪を入れずアタッカで終楽章に入って欲しかったけれど、さすがにあの熱演の後では無理ですね。 静寂と緊張が残るホール、お客さんもじっと始まりを待っています。 そんな緊張感が漂うなか、井村さんは指揮台の背もたれに手を置き、呼吸を整えているのでしょうか。 ようやくヴァイオリンの方を向きました。

第4楽章、深い響きがホールに流れます。 中低弦の響きが重なって、ぞくっ、としました。 重層的な弦アンサブルがとても素晴らしい。 そして続くファゴットの音色に深みがあって見事でした。 そしてオーケストラの各楽器群が加わってきて、これらがまた層を成し、届けられる音楽に深く感動しました。 いずれの響きにも思いがこもっているのが判ります。 何故か、長い道のりを歩いてきた、そしてこれからも歩いてゆく、そのようなことがふっと頭に浮かびました。 井村さん、大きく身体をうねらせながら、この曲の中に演奏している方々の思いをも込めさせているのでしょう。 それが演奏をより大きなもの、真正なものにしているように感じました。 そしてそれは特に弦楽アンサンブルによく現れていたと思います。 粘りをも感じさせるヴァイオリンのアンサンブル、それが自然に減衰すると静寂をも感じられる素晴らしい演奏となっていました。 弦楽器のソロもまた可憐で美しくありながらも落ち着いていて、見事。 アンサンブルの響きに涙が出そうになりました。 そしてハープの響き、木管アンサンブルにも静寂さが感じられ、集中力を保ったまま、エンディングに向かって響きが刈り込まれます。 そっと、そっと・・・そして祈るような終結。 本物の静寂がホールに輪を描くようにそっと広がりました。 感動的な幕切れでした。

響きの調和を大切にし、大きなうねりの中でオーケストラを集中させてゆくのが井村さんの真骨頂ですが、それが大阪市民管弦楽団によって素晴らしい演奏として結実した今回のマーラーの第9番。 しばし放心状態となったあと、大きな拍手を贈りました。 演奏に参加された皆さん、お疲れさまでした。 そして素晴らしい演奏を有難うございました。