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モーニングフィルハーモニー管弦楽団 第5回演奏会

一年の最後を締めくくるのに相応しい素晴らしい演奏会戻る


モーニングフィルハーモニー管弦楽団 第5回演奏会
2011年12月25日(日) 19:30 めぐろパーシモンホール・大ホール

マーラー: 交響曲第4番
マーラー: 交響曲第1番

独唱:紺野恭子(S)

指揮:小柳英之


「巨人」の終楽章に感動しました。 演奏会が終わった帰路でもまだしばらく演奏の余韻が残るほど、見事な集中力と迫力に酔いしれました。 とにかく素晴らしい演奏会でした。

モーニングフィルなのに、前回は 20時開演でマーラーの交響曲第6番でしたが、今回は19時半の開演、しかもマーラーの交響曲第4番と第1番の2曲プログラム。 しかも驚くべきことは、これらの演奏が練習4回ほどで仕上げられていること。 加えて、10分間の休憩を挟んんだだけの連続演奏で、管打楽器主席メンバーはもちろんのこと、弦楽器のプルトもまたほぼ同じだったこと(第1番で 2nd.ヴァイオリンが1名増えて10名になったのみでしょうか)。 技量はもちろんのこと、持続する体力も必要です。 凄い連中ですね。

お馴染みでしかも好みのマーラーの交響曲、しかも2曲連続演奏ですから、演奏について思うところは所々ありましたけれども、大きなミスは皆無。 しかも冒頭で述べたとおり、第1番「巨人」の終楽章の集中力と迫力にすべて吹き飛んだ、そんな感じですね。 あの演奏のような燃焼度はなかなか味わえるものではありません。

演奏終了後、オケの皆さんからこぼれた満足そうな笑顔も清々しく、一年の最後を締めくくるのに相応しい良い演奏会でした。 素晴らしい演奏を有難うございました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

午前中に演奏会を行っているのでモーニングフィルだったはずですが、前回は20時開演でマーラーの交響曲第6番、今回は19時半の開演でマーラーの交響曲第4番と第1番の2曲プログラム。 いつもなら既に飲んだくれている時間ですが、アルコールは口にせず軽く食事をして、目黒のパーシモンホールへと向かいました。

東急の都立大学で下車。 既に日は落ちてますが、事前に地図で調べた方向へと歩き、緩い坂道を登りますと、大きな公園が出てきました。 都立大学跡地を利用した施設なのですね。 ホール到着は開場5分前。 本当はもう少し早く着く予定でしたが、電車の乗換えを間違って急行に乗り、引き返してきたのでした。 間に合ったから良かったけど・・・ちょいと焦りました。

19時15分、きっかりにホールの扉が開きました。 積んであるA4用紙1枚(片面)の案内をとって、2階席に向かおうとするも、閉鎖。 仕方ないので1階席後方としました。 2階の屋根がかかるあたり、19列17番。 後ろから4列目でしょうか。 中央ド真ん中の席ですね。 お客さんの入りは最終的には3割位だったでしょうか。 若い人が多いのが特徴ですね。

ステージはゲネ終了直後みたいで、何人かの団員の方が残って話をされてました。 オケの配置は対抗配置。 開演時間が近くなると全員が楽屋に下がりましたけれど、楽屋からは盛大に練習音が聞こえてきます。 その音も定刻を告げるチャイムで消えて、ホールの暗転とともに左右より整列入場です。 編成は 12-9-8-8-8。 服装はやや自由で、セーター姿やワイシャツ姿の人もいれば、ドレスを着た女性の方も目に入りました。

コンサートマスターがヴァイオリンを2丁持って登場。 客席へ一礼をしてから入念なチューニングを行い、準備完了。 あれよあれよと言った感じですね。 指揮者の小柳さんがさっそうと登場し、コンマスと握手をしてから客席へ一礼。 ゆっくりと登壇、集中力を高めて始まります。

交響曲第4番、個人的には色々と思うところがありましたけれど、オケの皆さんを見ていると、真摯に一所懸命表現しようとしてらっしゃるのがよく分かり、音楽に息吹があるのを感じました。 いつもは前のめりに聴こえる演奏も、ここではややテンポは速いかなとは思いましたけれど、丁寧に演奏されていましたね。 これほどの演奏を4回程度、しかも巨人とともに仕上げて来たなんて凄いことだと思いました。 見事でした。

第1楽章、シャンシャンシャンと心地良い音色が響いた上々の幕開け。 暖かな弦やホルンの響きもいい感じです。 テンポはやや速めでしょうか、いつも前のめりに聴こえるこのオケの演奏ですが、今回は単にテンポが速めに感じました。 弦アンサンブル、弦がふくよかな芯となっていて素適なのですが、第2ヴァイオリンとヴィオラがちょいと薄い感じがしますね。 数が少ないこともあるし、対抗配置なんで楽器が裏向いていることもあるでしょう。 ちょっとバランスが悪いかな、と思う面もありましたけれど、徐々にクライマックスに登ってゆきます。 低弦が変わらずいい感じです。 トランペットの潔い響きも見事。 渾身のティムパニのロールに、大太鼓の締まった響きでの頂点。 これをすっと越えてからのトランペットの響きがまた見事でした。 ただ個人的には、手前でちょっとタメてからピークをもっと大きくして欲しかったな。 すっと乗り越えた感じでした。 また熱い音楽となって2度目のピーク。 ここでもトランペット、ホルンの強奏が良かったですね。 弦楽器の分奏もしっかりとしてました。 終結部はタメを作ってから一気に駆け抜けたのは良かったですね。
小柳さん、いったん指揮台から降りて汗を拭いて小休止。 再登壇して始まります。

第2楽章、ホルン、木管楽器そしてヴァイオリンのソロ、妖艶な雰囲気を漂わせた開始です。 ここもややテンポが速かったでしょうか。 すっと止め、ホルンそしてクラリネット。 このクラリネットが良かったですね。 生演奏の楽しさでしょうね、色々な楽器が色々な風に演奏されて曲を形作っているのが手に取るように見えたのが素晴らしかったなぁ。 3番ホルンの甘い響き、1番ホルンの力強さとか、オケの皆さんの顔も真摯で一所懸命表現されようとしてらっしゃるのがよく分かりました。 音楽に息吹があるのを十二分に感じた次第です。 そんな音楽を小柳さんが祈るようにそっと止めました。
小柳さん、ここでも指揮台を降りて小休止ですが、コンマスが立ち上がってチューニングを実施。 このあとブルーのドレスを着たソリスト紺野恭子さんも登場して準備完了です。

第3楽章、ゆっくりと呼吸するような開始、チェロのふくよかな響きにコントラバスの落ち着いたピチカートが素適。 ヴィオラがしっとりと絡んで第2ヴァイオリンもそれに重なりますが、ちょっと質素な感じに思えたのは先で述べた理由だからでしょうか。 それでも萎びた感じにならないのは若さの特権でしょうね。 オーボエが巧かったですねぇ。 ゆったりと丁寧に進んでゆきます。 小柳さん、大きく振って盛り上げますが、弦の表情はさほど変わらず、ホルンの響きが突き抜けてきて、ティムパニが入り、ホルンそしてクラリネットのベルアップと盛り上って、すっと退いたのですが、このあとちょっと散漫な印象も受けましたけど、すぐに挽回。 また快活な音楽となって、逆に粘りも出てきたようです。 ピークを重ねていったあと、ゆっくりと潮が引いてゆきますと、小柳さんが直立不動となりました。

第4楽章、アタッカよりクラリネットの甘い響きがホールに流れます。 素適でした。 紺野さんのソロの出だしはちょっと堅くて声も小さかったかしら。 伸びのある声ですけれど、うまくコントロールできていなかったのかな。 オケだけの部分になると、猛然と力強い響きで進め、すっと音量を絞ってソプラノに渡します。 これが良かったのでしょうか、紺野さんの声も大きくなったようですね。 オケとソロが入れ替わる度に紺野さんも調子が出てきたようで、次第に甘くふくよかな歌声となり、これがまたよく伸びるようにもなりました。 冒頭とは見違えるようで、木管やハープとともに天国の音楽を満喫。 そして静寂の中に消え入ったエンディグ。 小柳さんの腕がゆっくりと下りてからの拍手もまた良かったですね。

10分間の休憩、楽屋よりまた練習音が響いてきます。 その音がまたどんどん大きくなってゆき、定刻を告げるチャイム。 ステージにはコントラバス奏者の方が5人いらっしゃいましたが、そのまま整列入場が左側より始まりました。 左側が揃ってから、右側のメンバーが入場して全員が揃いました。 第2ヴァイオリンの末席プルトに1名増員があったようで 12-10-8-8-8 の編成。 コンマスが登場、一礼したのちにチューニングを実施して準備完了です。 小柳さんがさっそうと登場、客席に一礼ののち登壇。 集中力を高めてからゆっくりと振り始めました。

交響曲第1番「巨人」、パーカッションの響きに加速度がついて弾けたフィナーレにしばし呆然としました。 素晴らしい幕切れでした。 華やかな音楽でもあったのですが、最後まで見事に統率されていて、深い響きと感動が籠もっていました。 1年を締めくくるのに相応しい素晴らしい演奏に、熱烈な拍手を贈りました。

第1楽章、集中力を持った慎重な開始、クラリネットによる狩のテーマが暖かく控えめで、トランペットによるテーマもまた軽めでした。 ホルンの冒頭。ややつっかかり気味でしたけど事故に至らずクリア。 郭公が鳴いて爽やかな朝となります。 ヴァイオリンの速いパッセージがちょっと端折ったようにも聞こえましたけれど、音量が増すと生き生きとしてきました。 すっと退いて、フルートの明るく落ち着いた響き、素晴らしかったですね。 全体的にはじっくりと構えた感じで曲を進めているようで、落ち着いた印象を受けました。 クライマックスもまた腰をぐっと下げ、推進力を持って進めた感じかな、見事です。 しかも先の第4番から管打楽器のメンバーチェンジはなく同じ主席の方がソロを吹いているのを発見し、ちょっと舌を巻きました。 躍動的なコントラバス、安定したティムパニの下支えに乗ってのエンディング。 微妙にフライングもあったようにも聞こえましたが、きちっとした着地で締めました。
小柳さん、またもや指揮台を降りて汗を拭ってから再登壇となります。

第2楽章、小柳さんのハナ息とともに、力強く大きな音楽が始まりました。 この楽章、常にこの躍動感が全体を引っ張っていったように感じました。 木管のベルアップも見事に揃ってましたし、チューバとバス・トロンボーンがまた力強い響きが何よりカッコ良かったなぁ。 小柳さん、上下運動のタテ乗りリズムで、聴いているこちらも乗せられました。 ホルンの響きより伸びやかなヴァイオリンの旋律になって、柔らかなフルートの響きにも魅せられましたけれど、とにかく各楽器がよく呼応しあってます。 そしてそれがまた上下運動となって、ぐいぐいと力を増して乗せられたのを、小柳さんの突き上げた左拳でストップ。 残響がホールに残りました。
コンマスが立ってチューニングを実施、小柳さんはその間また汗を拭っておられました。

第3楽章、コントラバスのソロがティムパニの打音とともにホール流れます。 微妙に遅れがちのコントラバスの旋律、これがしみじみとして葬送行進曲らしいですね。 チューバがまた良い音を出してました。 ゆっくりとタメの入ったヴァイオリン、音楽が大きく流れ出しました。 ここも低弦のピチカートが巧く絡んで素適でしたね。 ハープから、柔らかな響きのヴァイオリン、そしてフルートと続くあたりも良かったし、ヴァイオリンのソロも全体の響きの中に納まって見事でした。 葬送行進曲が戻って、ソプラノ・クラリネットかしら、これも巧かったなぁ。 惹きつけられました。 トランペットの響きで活気づいたのもつかの間、ゆっくりと引いてゆきます(ここのファゴットも素適でした)。 最後はティムパニが静かに打ってゆきます。

第4楽章、アタッカで大きく伸び上がった小柳さんのハナ息とともに強靭な響きが溢れ出しました。 やや堅い響きでの音の洪水となっていて、集中力満点で強い響きに落ち着きも感じ、しかも余力すら感じさせたのは見事というしかありません。 感動的でした。 嵐が去ったあとも柔らかな低弦ピチカートが芯となって、大きく抑揚のついた音楽なのがまた素晴らしい。 そしてまた嵐が近づいてきましたが、抑えの効いたトランペットにホルンの強奏、タメをもって盛り上がってゆきます。 華やかな音楽でもあるのですが、見事に統率されていて、深い響き。 感動がこみ上げてきます。 そしてここでのヴィオラ、ちょっと影が薄いようことも書きましたが、ここは素晴らしかったですね。 こうなるとあとは音楽に身を任せて聴き進むのみ。 ホルン7名がすくっと立っての演奏。 実に感動的でした。 オーケストラ全体が一丸となっていて、それが客席をも巻き込んでいましたね。 フィナーレは、パーカッションの響きに加速度がついて弾けました。 しばし呆然とした見事な幕切れでした。
客席もまた同様だったでしょう、一瞬の静寂が流れたあと熱烈な拍手とブラボーの渦に包まれました。 熱い拍手を贈りました。

これだけのプログラム、しかもお馴染みのマーラーの交響曲ですから、演奏について思うところは所々あって、普段は書かないことも今回は無謀にも書いていまいましたけれども、それだけ感動が深かったということで許してください。 とにかくあの集中力の高さと燃焼度はなかなか味わえるものではありません。

また、演奏終了後、オケの皆さんから満足そうな笑顔もこぼれていたのも清々しく、一年の最後を締めくくるのに相応しい演奏会となりました。 素晴らしい演奏を有難うございました。 来年は5月6日あたりに演奏会が予定されているそうで、楽しみです。