BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
紫苑交響楽団 第21回定期演奏会

集中力とバランス感覚の良さ戻る


日時:2013年2月11日(月・祝) 14:00開演(13:00開場)
場所:京都府長岡京記念文化会館

ヴェルディ/歌劇「運命の力」序曲
チャイコフスキー/幻想序曲「ロミオとジュリエット」
メンデルスゾーン/交響曲第4番「イタリア」

(アンコール)ロッシーニ/歌劇「セヴィリアの理髪師」序曲
(アンコール)マスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲

指揮:牧村邦彦


名曲プログラムのような演奏会、ちょっとためらって伺いましたけれど、いつもの見事な集中力とバランス感覚の良さに、牧村さんのクールでスマートな指揮が相俟って至福の時間となりました。
中でもイタリア交響曲が素晴しかった。 いつもはクールな牧村さんが縦ノリのジャンプを繰り返したりもし、優等生になりがちなオケにジャブを繰り出しては鼓舞。 単なる勢い良い演奏とは違う、充実した演奏にのめりこみました。 これ以上の言葉が出てきません。

ホールには10分前に到着しましたが、ほぼ満員で席を探すのに苦労しました。 かつては団員のご家族を思われる方が中心みたいで、ベビーカーを押しての観戦という方もいらしたのは遠い過去になってしまいましたね。 今回、なんとか最後列に陣取りましたけれども、休憩後は立ち見されている方も散見されました。 シンフォニーホールで第20回を記念したマーラーの交響曲第7番、これでお客さんが増えたのかもしれませんが、いまノリに乗っている紫苑交響楽団であります。 そおいえば当初は、宗教団体とは関係ありません、の貼り紙もありましたね。

前回が大曲だったからでしょうか、今回は名曲プログラムのような御馴染み曲で、ちょっと小振りな曲が並びました。 これだと1時間半で終るのじゃないか、と予想しましたけれど、結果的には素晴しい演奏に大盛り上がり、アンコールも2曲はまた熱演、たっぷりと楽しませていただきました。

「運命の力」序曲、タイトながらも深みとコクを感じさせるブラスでの開始。 凝縮した響きの弦アンサンブルに繋ぐ見事な滑り出し。 クラリネットのソロも落ち着いて情感籠もっていていいですね。 牧村さん、指揮台の右前に出て斜めに立ち、オケを睥睨しながら的確に曲を進めてゆきます。 牧村さんお手の物のオペラ、余裕を持ってクールに決め、オケも最後は筋肉質で弾力ある響きで巧く纏めました。

「ロミオとジュリエット」、この曲も劇的というよりも牧村さんらしくスタイリッシュかつクールに決め、オケも見事に要求に応えていました。 第1主題のモンターギュ家とキャピレット家の争いの場面、熱い音楽になるだけれども決して声高になることなくタイトに引き締まった音楽。 巧いですね。 深みを感じさせるチェロとコントラバスも素晴しい。 ヴィオラの旋律もまたコクと奥行きがあって、この後のヴァイオリンの柔らかな響きも際立たせていたように感じました。
しかし深刻にならないのが牧村さん流のクールさでしょう。 展開部からフィナーレに至るまで、機動力のあるオケを凝縮させた響きでしっかりと鳴らしていますが、雄大になる部分は抑制かけて纏めて内面の熱さとします。 充実した響き。 ホルンの響きさえも渋く聴こえます。
エンディングも落ち着いた渋い響き、求心力を高めた演奏としてティムパニの太い打音にタイトなブラス、最後までキリっと引き締まった響きで見事な集中力でした。

20分の休憩を挟んで、メンデルスゾーンのイタリア交響曲。 颯爽とした軽快なこの曲ですが、単なる勢いだけではない充実した演奏に耳を奪われました。
第1楽章では、いつもはクールな牧村さんが縦ノリのジャンプを繰り返したりもし、優等生になりがちなこのオケにジャブを繰り出しては鼓舞。 第2楽章では低弦がしっかりと絡んでいるのが素晴しいのですけれども、ヴィオラがまたいい音色でした。 牧村さん、この楽章ではちょっとタメも作ったりして、弦楽アンサンブルを駆使していたようです。 第3楽章は柔らかな響きのホルンが印象的、しかもここにファゴットが絡んでいるのですね、ここは充実の管アンサンブル。 トランペットも力まずいい味で対話してましたね。 終楽章は機動的なオケによる充実した響きが満載。 牧村さんの的確な指揮でドライブされながらも時折繰り出すジャブで鼓舞、あれよあれよって言う感じで終ってしまいました。 面白かった。 単なる勢い良い演奏とは違う、充実した演奏にのめりこんでいました。 言葉が出てきません。

カーテンコールで出てきた牧村さん、とてもにこやか、嬉しそうですね。 いつもはクールな牧村さん、にこやかにアンコールに応えることはあっても、こんなに楽しそうで嬉しそうななのは滅多ないように思います。 それだけ演奏に満足されたのではないでしょうか。 花束を受ける前なのに、笑いながら楽屋のメンバーにアンコールだから出るようにと手招きされていましたね。
「セヴィリアの理髪師」序曲は、アンコールらしくちょっと荒っぽく、スピードも上げ気味だったでしょうか、ダイナミックに締めたエンディングなど楽しい演奏でした。
そして思いもかけず、2曲目アンコールの「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲は指揮棒を持たずたっぷりとした指揮で叙情豊かながらもスタイリッシュに纏めていました。

御馴染みの曲は聴き手のハードルも高くなるものですけれども、カッコ良くそして充実した演奏会でした。 脂ののったオケと指揮者として充実されている牧村さんの見事なマッチング、至福の時間となりました。 皆さんお疲れさまでした。


以下、未稿