BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
吹田市交響楽団 第75回定期演奏会

粘り気の伴った機動力のある素晴らしい演奏戻る


日時:2013年6月2日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:吹田市文化会館メイシアター・大ホール

ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
プロコフィエフ/交響曲第7番「青春」 -*

(アンコール)プロコフィエフ/交響曲第1番 第3楽章 -*

独奏:安達 萌

指揮:米山 信、新谷 武 -*


プロコフィエフの交響曲第7番、この曲をお目当てに伺いましたが、期待を遥かに上回る演奏に大満足。 素晴らしかった。 もっと知られてもいい曲なのを再認識したしだい。 第1楽章での憂いや想いを含んだ美しい響き、これをさっとひるがえして重量感のある低弦、そして締まった響きのホルンで畳み掛けるのにグッと来ました。 そして第2楽章ではめくるめくように曲が展開、打楽器も多用されていますけれど、派手にならず曲の中にきちんと納まっています。 しっかりと地に足が付いていますね。 終楽章の終結部はピチカートで静かに終わる短縮ヴァージョン。 この演奏ならばここから急展開させて全奏で終わるパターンで聴いてみたかった、と少々惜しくも感じましたけど、とにかく最後まで粘り気の伴った機動力のある素晴らしい演奏。 魅了されました。

これに先立つベートーヴェンの「皇帝」、ちょっと面白い演奏でした。 ピアニストの安達萌さんはフレーズを早めに切ってハッキリと弾くタイプ。 高音部分などチェレスタの響きのようにキラキラッと輝く響きが印象的でしたが、オケもまたザッハリッヒにバサバサッと潔く進めていましたね。 しかし注目は、トランペットとホルンにナチュラル楽器を使っていたこと。 バルブを持たない古楽器を2本づつ配し、ティムパニも先の細いマレットでコンパクトに打っていて、タイコは元気あるな、ラッパの音が突き抜けて聴こえるし、でもホルンソロはちょっとヨタヨタとしていたかな、などと聞いたのではないでしょうか。 それでもちゃんとカタチになって聴こえていたところが見事だと思います。
もっともこの演奏形態にどんな意味があるか、と言われると判りませんけれども(中途半端なだけの意見もあるでしょうが)、個人的には面白く聴いていました。

冒頭のドビュッシーの「牧神」は、フルート奏者の一人舞台といった感じだったでしょうか。 深く柔らかい響きで会場を魅了していました。 アマオケでこの曲の持つ漂うような雰囲気を醸し出すのは至難のことでしょうが、米山さんはオケを上手く纏めて雰囲気作りをされていました。

このオーケストラ、いつも色々と面白い試みをされているようですが、それがまったくプログラムには書かれていないのが残念です。 アマチュアらしくこっそりと楽しむというコンセプトかもしれませんけれど。 次回はどんな試みがあるかも楽しみです。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

梅雨に入って天候が心配でした、奈良では出がけにパラパラっときたものの吹田は高曇りだったでしょうか。 開演15分前にホールに入り、いつものとおり2階席へ。 意外と、といっては失礼ですが、けっこうお客さんが入っています。 最終的には2階席も中央通路前は7割以上入っていたようです。 中央付近は諦めて、サイドでのんびりと鑑賞することにしました。

定刻、左右より整列入場。 いつもどおりの通常配置で 11-10-8-6-5 だったでしょうか。 コンマスが立ってチューニングを終えると、指揮者の米山さんがにこやかな表情でゆったりと歩いて登場。 コンマスと握手をし、そのまま指揮台に登壇して客席への一礼のあとオケを向いて始まります。

ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、フルート奏者の一人舞台といった感じだったでしょうか。 深く柔らかい響きで会場を魅了していました。 アマオケでこの曲の持つ漂うような雰囲気を醸し出すのは至難のことでしょうね、聴き手としてもホルンの響きなど柔らかいのか弛緩しているのかの判断が難しい。 オーボエやクラリネットは柔らかさはあるけれどもはっきりとした響きだったかな、弦楽アンサンブルも時おり熱気を孕んでみたりと、米山さんが端正な棒さばきによってオケメンバー各自の響きを整理して纏めての雰囲気作りをされていたようです。
この曲どうも個人的に苦手でして、掴みところのない感じの感想ですが、フルートがとても良かったことは特筆しておきたいと思います。

舞台は暗転、オケメンバーが楽屋に引き上げてピアノをステージ中央に出してきます。 休憩前なので、急いでヴァイオリンの席を揃えて自由入場でメンバーが席に着き、ピアノを叩いてチューニングをしますが、この時はまだコントラバスが入場中。 慌ただしい。 ようやく全員が揃うと同時に真っ赤なドレスに身を包んだピアニストの安達さんが指揮者の米山さんとともに登場。 始まります。

ベートーヴェンの「皇帝」、ちょっと面白い演奏でした。 ピアニストの安達萌さんはフレーズを早めに切ってハッキリと弾くタイプ。 高音部分などチェレスタの響きのようにキラキラッと輝く響きが印象的でしたが、オケもまたザッハリッヒにバサバサッと潔く進めていましたね。 しかし注目は、トランペットとホルンにナチュラル楽器を使っていたこと。 バルブを持たない古楽器を2本づつ配し、ティムパニも先の細いマレットでコンパクトに打っていて、タイコは元気あるな、ラッパの音が突き抜けて聴こえるし、でもホルンソロはちょっとヨタヨタとしていたかな、などと聞いたのではないでしょうか。 それでもちゃんとカタチになって聴こえていたところが見事だと思います。

第1楽章、弾けるような響きで開始。 トランペットの響きが少々突き抜けて聴こえてきました。 安達さんのピアノもキラキラと輝くようなハッキリとした響きで印象的な開始。 ティムパニも先の細いマレットで硬質なコンパクトな打音、米山さんもザッハリッヒにバサバサッと響きを切って潔く進めます。

注目はトランペット、2nd奏者は明らかに通常の長さの倍はある一重のナチュラル楽器を操っています。 1st奏者はロータリー式の通常の楽器かな、と思ってみていましたけど、遠目でよく見えませんがバルブが無いようです。 ホルンも2nd奏者のはすぐにナチュラル楽器と見たのですが、1st奏者のはウィンナホルンと思ってみていましたけど、どうやらこれもナチュラル楽器ですね。 するとこればっかり気になってしまうがちょっと困ったところです。

そして金管がナチュラル楽器で打楽器を含めオケもザッハリッヒに進めてゆくとなると、安達さんのピアノの響きも深みや陰影を抑えてやや平板に聴こえるのは、エラールやコンラート・グラーフといったベートーヴェン当時の楽器の響きになっているのか、などと想像も膨らみます。

とにかくピアノの打鍵が明快で聴いていて気持ちいいですね。 特に高音域などチェレスタみたいに煌めく響きも楽しみました。 オケもぐっと力のこもった響きでこの楽章を終えました。

第2楽章、深みのある弦楽アンサンブルからのいい感じで開始。 安達さんのピアノはここでも凛として響きます。 背筋をピンと伸ばしてピアノを弾く姿がそのものが音を現わしているような感じに見えました。 弾力のあるピチカートといい、終始落着いてこの楽章を進めてゆき、ためらいがちに進む第3楽章への道程も重くなく進めていました。

第3楽章、パンチのある明快な響きながら落着いた感じ。 粒立ちの良い響きなので重量感には少々欠けるきらいはありますが、キラっキラっと輝く響きが魅力的です。 タイトに打つティムパニ、金管楽器の響きも相まって、打点をしっかりとつけた伴奏。 楽器間の受渡しも良く前に前にと進んでゆく演奏がお似合いです。 そして終結部も重量感や深みよりも煌めく感じ、華々しく全曲を閉じました。

演奏後、安達さんの経歴を見ると阪神古楽器倶楽部ピアニストとの経歴がありましたので、ベートーヴェン時代を意識されたピアニズムだったのかもしれませんね。 現代オーケストラに古楽器を交えた編成、この演奏形態にどんな意味があるか、と言われると判りませんけれども(中途半端なだけの意見もあるでしょうが)、個人的にはとても面白く聴かせてもらいました。

15分間の休憩。 この間にピアノは舞台上手に移動、また舞台下手に2台あったハープも1台が上手に移動(移動した側のピアノ、ハープを利用されていました)。 定刻となって左右より整列入場となりました。 コンマスによるチューニングを終えて、ニコニコと笑いながら指揮者の新谷さん登場。 両手を上げてオケのメンバーに立つように促して、コンマスと握手。 指揮台に登ることなく、指揮台と客席の間に立って深々と礼をしてから登壇します。 気づいたら、米山さん、演奏後も一度もオケを立たせることなく舞台袖に引き上げてゆきましたね。 対照的です。

プロコフィエフの交響曲第7番、実は今日のお目当てはこの曲でしたが、期待を遥かに上回る演奏に大満足。 素晴らしかった。 もっと知られてもいい曲なのを再認識したしだい。 第1楽章での憂いや想いを含んだ美しい響き、これをさっとひるがえして重量感のある低弦、そして締まった響きのホルンで畳み掛けるのにグッと来ました。 そして第2楽章ではめくるめくように曲が展開、打楽器が多用されていますけれど、派手にならず曲の中にきちんと納まっています。 しっかりと地に足が付いていますね。 終楽章の終結部はピチカートで静かに終わる短縮ヴァージョン。 この演奏ならばここから急展開させて全奏で終わるパターンで聴いてみたかった、と少々惜しくも感じましたけど、とにかく最後まで粘り気の伴った機動力のある素晴らしい演奏。 魅了されました。

第1楽章、勢いよく開始、そして流麗な旋律がまた重厚な響きを孕んでいて、いきなり心を掴まれました。 憂いや想いを含んだ美しい響き、少々粘着質のある響きなのは新谷さんの動作からも見えるようです。 かつてはオーバーアクション気味でオケが付いてこない場面を目にしていましたけれど、今ではオケも動きに付いていて、さっとひるがえしては重量感のある低弦、そして締まった響きのホルンが畳み掛けて見事。 雄大な響きになってゆくさまも素晴らしく、機動力のあるオケの響きを堪能しました。

第2楽章、やわらかくうごめくようなクラリネットの響きで開始。 それがめくるめくように展開して、巧いなぁ。 打楽器が多用されていますけれど、派手にならず曲の中にきちんと納まっているのもいいですね。 しっかりと地に足が付いた音楽といった感じ。 さっきはタイトに打っていたティムパニもここでは弾力のある響きで叩き分けています。 引き締まった響きと集中力、音量が上がっても耳障りのない見事なエンディングを形成ました。

第3楽章に入る前にチューニングを実施、その甲斐あってヴィオラとチェロによる憂愁の響きが流れ出てきました。 クラリネット、ファゴット、コールアングレいずれも哀愁漂う素敵な響きで魅了。 中音弦の響きがまたいいですね、オケの響きに奥行き感があって素晴らしい演奏でした。 ハープの音もしっとりとした響き。 最後のトランペットが少々乱れたかもしれませんが、みずみずしくもありました。

第4楽章、軽快にオケが走ってゆき、時に現れる飄々とした感じがプロコフィエフらしさでしょう。 安定した音楽ながら、うきうきとさせる楽しさがあり、引き締まった響きのホルン、そしてトロンボーンとチューバの迫力もまた見事でした。 パンフレットの曲目解説では、リタルダンドで静かに曲を閉じる、とあったのでピチカートで静かに終わる短縮ヴァージョンによる終結。 この演奏ならばここから急展開させて全奏で終わるパターンで聴いてみたかった、と少々惜しくも感じました。 とにかく最後まで粘り気の伴った機動力のある素晴らしい演奏を楽しみました。

アンコールは、プロコフィエフ自身の青春時代の曲、古典交響曲より第3楽章。 少々いやかなり粘り気のある演奏だったように思いました。 演奏されなかった先の終結部を聴きたかったなぁ、とやっぱり思ってしまいました。

このオーケストラ、いつも色々と面白い試みをされているようですが、それがまったくプログラムには書かれていないのが残念です。 アマチュアらしくこっそりと楽しむというコンセプトかもしれませんけれど。 次回はどんな試みがあるかも楽しみです。 とにかく皆さんお疲れさまでした。