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かぶとやま交響楽団 第47回定期演奏会

濃密な時間を過ごした演奏会戻る


日時:2013年7月14日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:伊丹アイフォニックホール・メインホール

曲目:オネゲル/交響詩「夏の牧歌」
   ミヨー/バレエ音楽「屋根の上の牛」op.58
   エルガー/創作主題による変奏曲(エニグマ変奏曲)

(アンコール)エルガー/愛の挨拶
(アンコール)エルガー/「威風堂々」第1番

指揮:藤田謹也


いつもながらの凝った選曲、自然な高揚感のあとに小さなアイフォニックホールが強靭な響きで満たされる、そんな密度の濃い演奏会を楽しみました。
メインのエニグマ変奏曲、恰幅が良くて深い響きによる主題呈示から惹き込まれました。 自然な高揚感、キレの良い響きで満たされていて、第14変奏の行進曲から徐々に音量を上げてストレートに響く金管、華やかで力強くタイト。 じっくりと進めたあとパワフルに大きく纏めての着地まで高い集中力でした。
ミヨーの「屋根の上の牛」の主題もまた軽やかながら強靭さをもったタテ乗りアンサンブルが見事でした。 トランペットの輝かしい響きもラテン系ならば、終盤のホルン3連奏もタイトでカッコ良く響いていました。 ギロを弾いていた奏者の方、ポーカーフェイスでの力演が最後まで崩れることなく印象的でもありました。
冒頭のオネゲルの「夏の牧歌」は、まさに夏らしい物憂げな感じ。 やや掴みどころの無い柔らかなホルンの旋律を伴う緩やかなアンサンブル。 それが自然に高みへといざなっての高揚感、そしてまた牧歌に戻ってコントラバスの静かなピチカートで幕。 始めて聴く曲でしたが、楽しめました。
ちょっと小振りな曲によるプログラムなのでアンコールは2曲。 それでも15時間45分にはホールを後にしました。 夏らしく省エネ・・・いえいえ濃密な時間を過ごした演奏会でありました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

昨夕の豪雨のあと一気に気温が下がって過ごしやすくなりました。 でも空気は不安定なのでしょうね、朝にもバラバラと屋根を叩く強い雨が振って目覚めました。 演奏会に出かける頃は晴天、暑くて家を出るのがちょっと遅れましたが、大阪駅でうまく丹波路快速に乗れたので、セーフ。 15分前にホールに入ることができました。 この時期、焦ってホールまで走りたくないですものね。

いつもの席を目指しますが、あいにく先約がいらしたので、後ろ3列目のLG-11に落着きます。1階席は前の方を除いて沢山の方がいらっしゃいますが、ここは閑散としていますし、何より湾曲していて前に席が無いので、失礼ながら靴を脱いでリラックスできるのですね。 そして高みの見物、天井桟敷の気分でもあります。 下方に見えるステージは、8-7-6-5-4 の通常配置に並んでいます。 楽屋からは管楽器の練習音もよく聴こえております。

定刻、場内が暗転すると左右より入場が始まります。 管楽器はホルン、オーボエ、フルート、クラリネット、ファゴット各1本づつ。 コンマスが入場、拍手に一礼してからチューニング。 これを終えると照明が点いて準備完了・・・と思いきや、ホルン奏者の方がいきなり袖に走って消えて何事かと・・・でもすぐに戻ってきて席につくと指揮者の藤田さん登場。 何事も無かったように指揮台の前で全員を立たせて一礼して登壇。 いよいよ始まります。

オネゲルの「夏の牧歌」、たぶん始めて聴く曲です。 中低弦の柔らかな響きのあと、ホルンによる旋律が唄います。 これが牧歌なのでしょう。 オーボエの落ち着いて凜とした音色も素適でした。 軽やかな弦のアンサンブルは、やや掴みどころの無い感じ。 緩いのか手探りなのか、始めてなのでイマイチよく判りませんけれども、音楽は自然な高まり、高揚感へと登ってゆきました。 木管の落ち着いた響き、中でもクラリネットの音色がよかったですね。 高揚感を何度か繰り返したあと、牧歌が戻ってきました。 端正な響きのフルート、渋いヴィオラの音色をともなって曲は静かになり、最後はコントラバスのピチカートで幕。 夏らしい物憂げな感じで、なかなか良い曲でしたね。

暗転、管楽器奏者の入れ替えと増強を行って2管編成にパーカッション奏者2名が登場しました。 コンマスによるチューニングを終えて、準備完了。 照明が点き、指揮者の藤田さんが登場して始まります。

ミヨーの「屋根の上の牛」、この曲は実演でも何度か聴いている楽しい曲ですね。 藤田さんの軽いハナ息とともに、明るく始まりました。 しかも奥行きを感じさせるトランペットの響き、弦楽アンサンブルも軽やかながら重量感を感じさせた冒頭から見事な演奏。 これが多少ルーズな響きに崩してから、またぎゅっ〜と引き絞った響きへと戻すなど、お見事。 金管のファンファーレはよく揃っていて、しかもラテン系な響きにジャジーな要素も垣間見えて楽しめました。 弦楽奏者の方も、中には首で軽くリズムを取りながら弾く方もいらして、全体としても大きく波打ったり粘ったりするアンサンブルが聴き応えありました。

それに比してというのもナニですが、パーカッション奏者の方2名は立つ間もないのか座ったまま、そして座ったまま身体を捻じって大太鼓を叩いたりと忙しい。 ギロを担当されていたこの奏者の方は常にポーカーフェイスでの力演でした。
終盤、ホルン3連奏がタイトでカッコ良く響いて、トランペットも明るく輝くような響きがオケを抜けてきます。 リズムは引き締まって、馬力を上げていってピッコロも入って絶高調に達したところでシンバルの一撃で止めました。 軽やかながら強靭さをもったタテ乗りアンサンブルが見事でした。

15分の休憩。 定刻となってホール内が暗転します。 左右よりオケメンバーが入場、ステージいっぱいの奏者がいらっしゃいます。 コンマスが最後に登場してチューニングを実施。 準備OK、照明が点いて指揮者の藤田さんが登場。 登壇前に客席に一礼してから始まります。

エルガーのエニグマ変奏曲、恰幅が良くて深い響きによる主題呈示から惹き込まれました。
主題、おおきくゆったりと構えた藤田さんが動くと、深く潤いのある弦の響きが流れ出てきました。 前2曲ではなかった恰幅の良さを感じました。
第1変奏、木管楽器も同じ種類の響きで受け継がれてゆきます。 チェロ、コントラバスの響きもずしりと響いきたのもよかったですね。 金管楽器が入って瑞々しくなったみたい。 ティムパニはちょっと控えめの打音による自然な高揚感が見事でした。
第2変奏、第2ヴァイオリンの深みのある響き、管楽器が加わって重層的に響いてきました。
第3変奏、ファゴットとコントラファゴット、管楽器の深みのある響きを持った音楽で、躍動的にもなった緻密な演奏が展開。
第4変奏、力強く、キレ良く、ストレートにタイトな音楽で締めました。
第5変奏、弾力、粘り気のある弦アンサンブルの分奏が光っていました。 木管の軽やかな歌も挟み込まれていました。
第6変奏、明るい木管、軽やかな弦のアンサンブルに渋い響きのヴィオラのソロに味わいがありました。
第7変奏、ティムパニの打音により力強く駆け出すスピード感、トロンボーンとチューバがパワフルでタイトに決めました。
第8変奏、クラリネットの明るい音色が素適、やわらかな弦アンサンブルでのびやかな演奏。 絡む木管もまた素適な響き。
第9変奏、アタッカで前の曲より続けて演奏、ゆったりとした弦のアンサンブルによってテーマが歌いまわされてゆきます。 たっぷりとした弦に木管が絡む自然さそして高揚感がとてもよかったですね。
第10変奏、深みのあるフルート、クラリネットが小粋な掛け合い。 しみじみとしたヴィオラのソロが絡んで進みます。 ファゴットも素適で、落ち着いた音色に満ちていました。
第11変奏、軽いハナ息とともにタイトに走る音楽。 金管ファンファーレが壁のようにパワフルに響いてきました。 力強いティムパニの一撃で終了。
第12変奏、チェロのソロがむせび泣くような開始。 しみじみとしたヴィオラとチェロのアンサンブルも絡みます。 情感をたたえた音楽ですが、ホールが小さいせいかやや大きな音量だったでしょうか。
第13変奏、クラリネットがしみじみと唄い綴ってゆきます。 ティムパニが入って曲が大きくなると、明るくもなります。 ティムパニは布を敷いた上を叩いていました。
第14変奏、ティムパニの布は素早く取り除かれて行進曲となります。 引き締まった音楽が音量を上げて、華やかで力強い音楽。 キレも良いのですが、じっくりと曲を進めてゆく手堅さ。 としてまたパワフル、トロンボーンが気持ち良さそう。 拡大した音楽を丸ぁるく纏めたエンディング。 充実した音楽を楽しみました。

ちょっと小振りな曲によるプログラムだったからでしょうかアンコールを2曲するとの藤田さんのスピーチで、まずは「愛の挨拶」。 艶やかなヴァイオリンが素適な開始、コントラバスの芯のある響きを伴った豊穣なるアンサンブルとなって演奏されました。
演奏終了後いったん袖に下がって出直した2曲目は「威風堂々」。 タイトながら重量感のある演奏は筋肉質。 小さなホールがそんな響きで満たされてのお開きとなりました。
演奏会が終る頃にはまた雨が降り出しそうな天気となっていて、慌ててホールを出たのは15時間45分。 けっこう早めに終わりましたが、夏らしく省エネ・・・いえいえ濃密な時間を過ごした演奏会でありました。 皆さんお疲れさまでした。