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第21回「天理の第九」演奏会

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日時:2014年12月21日(日) 14:00開演(13:15開場)
場所:天理市民会館やまのべホール

曲目:第1部
    天理市制60周年記念式典
     君が代
     天理市歌(作詞:松本昭、作曲:平井康三郎)
    ドヴォルザーク/スラヴ舞曲第6番 作品46
    ブラームス(シュメリンク編曲)/ハンガリー舞曲第6番
     演奏:天理シティーオーケストラ
     指揮:安野英之
   第2部
    ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調作品125「合唱つき」
     独唱:福永修子(S)、廣澤敦子(A)、中川正崇(T)、鳥山浩詩(Br)
     合唱:天理第九合唱団、天理ピエーナ少年少女合唱団
     演奏:天理第九管弦楽団
     指揮:井村誠貴
(アンコール)エルガー/威風堂々(合唱付き、作詞:喜多園子)
(アンコール)蛍の光


天理市制60周年。 そして「天理の第九」を始めるきっかけとなった天理ライオンズクラブが設立50周年。 これらを記念したのでしょうか、ここ数年の第九の指揮をされていた安野さんに代わって井村誠貴さんが指揮を担当。 過去に2度「天理の第九」を振られている井村さんですが、当方は単身赴任中で伺えず、今年ようやく念願かなったという感じでしたが、そんな期待を遥かに超えるダイナミズム溢れた演奏に痺れました。
合唱団も見た目、年々男声が細ってゆく感じですけれど、数の少なさをものともしない鉄壁の合唱が熱く燃えていました。 そしていつも思うことですが「天理の第九」は何より一体感が素晴らしい。 男声・女声、合唱・管弦楽、ステージ・客席が一体になって盛り上がっているのがよく判るのですが、今年は更に集中力が高い熱い演奏によって、素晴らしい演奏会になっていました。 今年もこの充実した演奏で、一年を締めくくることできて幸せでした。

第1部、若い天理市長の挨拶のあと起立して君が代、天理市歌を斉唱。 天理シティーオーケストラの夏の演奏会にも伺っているので、なんとなく市歌も歌えるようになってしまいましたね。
そして60周年にちなんで6のつく曲、ドヴォルザークのスラヴ舞曲第6番。 そしてブラームスのハンガリー舞曲第6番。 安野さんの指揮によるオケは 8-7-7-5-5 の対向配置。 コンマス席には栄島さんが座っていましたが、その栄島さんの独壇場ともいえる演奏が展開されました。 腰を浮かし、弓を隅から隅まで使った素早く大きな動き。 いつもながら楽しそうな表情で演奏されていて、また安野さんも同様に楽しそうな表情を浮かべて、栄島さん、オケをコントロール。 視覚的にも楽しさがびんびんと伝わっくる演奏を楽しみました。

第2部の前には15分間の休憩、この間に合唱団がステージに出て着席しました。 オケも自由入場で配置につきますが、先ほどまで指揮されていた安野さんがチェロの席に座っているので 8-7-7-6-5 の編成、同じく対抗配置です。 定刻、コンマスは相原さんに交代(栄島さんは2ndヴァイオリンのトップ)、チューニングを終えるとソリストも登場しました。 合唱団とオケの間に着席して準備完了。 井村さんが登場して始まります。

第1楽章、冒頭指揮台の上でしばし沈思黙考、集中力を高めてからの厳かな開始。 しかし、いきなりダイナミックに盛り上げます。 先日の大阪市民管との惑星を彷彿とさせる動き、ストイックな響きがホールを満たしました。 やや早めのテンポ、メリハリを付けつつも一部の隙も感じさせない音楽に痺れました。 それでなくても長身の井村さんが大きく伸びあがるのだから、スケールの大きな音楽でした。 第2ヴァイオリンとヴィオラが死にもの狂い、必死に弾いていたのも印象に残りました。

第2楽章、こちらもストイックな開始より「時計仕掛けのオレンジ」を思い出してしまうのですが、やや淡々としながらも2ndヴァイオリンやヴィオラなど時に大きくうねるようでもあって、映画音楽の印象とは違ってちゃんと血の通った演奏。 ここではホルン、オーボエ、トランペットを始めとする管楽器の奮闘も印象に残りました。 

第3楽章の前にチューニング、汗をぬぐい指揮棒を片付けて手による指揮で始まります。 やわらなか音楽は、ロマンティックな香りを漂わせています。 ここでもヴィオラがいい音色でしたね。 木管アンサンブルも素敵で、目立たないけれどもファゴットがとても良い仕事をしていたと思いました。 自然な昂揚感、歌わせながら盛り上げてゆく静かながらもロマンティックかつドラマティックな音楽。 指揮棒を取り出して終結部を締めます。

第4楽章はアタッカで突入、全曲を自然な流れとするために合唱団やソリストを先に登場させていたのでしょうね。 冒頭、ティムパニは先が太くなってやわらかな打音がするマレットで打ち、次に先が細くて堅い音がするマレットと、何度か持ち替えて曲に変化を付けていました。 コントラバスによる歓喜の旋律、ゆったりと柔らかな響き。 第1ヴァイオリンも透明感ある柔らかな響きが素適。 そしてここでもファゴットがうまく絡んでいました。 
合唱団の中程、横一列に並んでいる天理ピエーナ少年少女合唱団の子供たちがそわそわし始めて・・一斉に起立(ちょっと微笑ましい風景)。 ソリストのバリトンの声は伸びやかでよく透る声でしたが少々軽量級な響き。 いずれのソリストも同様な感じだったかな。 合唱はいつもながら屹立した合唱団席より気迫のこもった押し出しの強い声が印象的。 井村さん、抑制もよく効かせてきちっとコントロールされています。 緊密に響くオケと合唱。 メリハリを利かせて歌わせる部分ではたっぷりとさせたり伸びやかにさせてます。 合唱はピエーナが加わったぶん、いつもよりも華やかなになっていたみたい。 そして合唱とオケが一丸となった熱い音楽が渦巻き力強く歌い上げてのフィナーレ。 息もつかせない見事な幕切れでした。 ブラボーも掛け値なし。

このあと昨年と同じく故里天理を歌い上げる合唱付きのエルガーの「威風堂々」、そして「天理の第九」の締めでは恒例となった会場全員がライトを振って「蛍の光」を歌ってお開き。 ああ1年が終わるのだな、と感慨深い瞬間でありました。 天理の冬の風物詩ともなった「天理の第九」今年も素晴らしい演奏会にお招きいただき、有難うございました。 ますますの発展を祈念いたします。


以下、未稿