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紫苑交響楽団 第26回定期演奏会

よく訓練されたオーケストラを聴くと気持ち良い戻る


日時:2015年9月6日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:長岡京記念文化会館

曲目:ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
   ビゼー/カルメン組曲より
   ベルリオーズ/幻想交響曲
(アンコール)ドビュッシー/小組曲より第2曲「行列」

指揮:森口真司(音楽監督)


いつもながらよく訓練されたオケを聴くと気持ちがいい。 これまでこのオケでは弦楽アンサンブルの巧さが光っていましたけれど、今回のプログラムは管楽器、とくに木管楽器の良さが前面に出ていたように感じました。 冒頭のドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、柔らかで落ち着いたフルートの響きが最後まで残っていたからかもしれませんね。

生憎の雨ではあったけれど、ほぼ満員となったホール。 指揮者の森口さんが拍手に包まれて登場、指揮台に登壇したもののうつむいたままピクリとも動かない。 会場の静けさが徐々に増し、固唾を飲んで待つ客席にもオーケストラと同じであろう緊張した空気が包まれたとき、ようやく腕が動いてフルートの柔らかな響きがホールに流れました。 ホルンも柔らかく、ゆっくりと進めた素晴らしい開始にうっとり。 凛としたオーボエや、深味のある落ち着いた音色のクラリネットも素敵でしたね。 森口さん、ゆったりたっぷりと進め、柔らかな響きに躍動感を持たせた自然な昂揚感を持ってピークを築いていました。 瑞々しい弦楽アンサンブルともども素晴らしい演奏から始まりました。

続く「カルメン組曲」は全10曲。 このオケにしては珍しく覇気に満ちた大音量で彩られ、推進力を感じさせる豪快な演奏。 一気呵成に寄り切った、そんな感想を持ちました。

「闘牛士」、今度は登壇するといきなり開始。 派手で切れの良い音楽が飛び出しました。 ぐぃぐぃと力を込め、サクサクと進めますが、艶のある弦楽合奏は健在。 見事でした。
「第1幕への前奏曲」、ここではぐっと力を込めヴァイオリン、そしてチェロ。 粘り気を持たせた弦楽合奏としていましたが、即物的でキレの良い演奏でした。
「ハバネラ」、トランペットの色気のある響きが魅力的でした。 要所でグィと力を込めたメリハリを持たせた派手目の演出。 ここまで一気に聴かせて、一息ついてまた開始。

「セギディーリャ」、エキゾティックな木管の響き、とくにオーボエが素敵。 柔らかな響きのトランペットにチャーミングな弦楽アンサンブルも印象に残りました。 ここでも小休止してから再開。

「アルカラの竜騎兵(第2幕への間奏曲)」、森口さんの軽いハナ息とともにキレの良い音楽でスタート。 深みと朴訥とした感のあるファゴット、時にぐっと力を入れる低弦とチャーミングな高音弦で、硬軟取り混ぜて進めていました。
「闘牛士の歌」、機動力のあるアンサンブルで一気呵成。 艶のあるトランペットとパワフルな弦楽アンサンブルが呼応し、勇ましい幕切れとしました。 ここで息を落ち着かせてから次へと進みます。

「第3幕への間奏曲」、これまでと一変し、ハープとフルートの柔らかな音色による素適な開始。 弦楽器もそっと絡んでゆったりと進みます。 ティムパニが入って音量を徐々に上げますが、またそっとしめやかに締めくくりました。
「密輸入者の行進」、アタッカで粘り気を持たせたアンサンブルによる行進曲。 ほの暗さを醸し出しつつも纏まりの良いアンサンブルは変わらず。 ここで小休止。

「アラゴネーズ(第4幕への間奏曲)」、ぐぃぐぃと力を込め、キレキレッの演奏。 エキゾティックなオーボエの響き、瑞々しいオケの響きの中に底力も感じさせるアンサンブルで進めていました。
「ジプシーの踊り」、ハープとフルートそしてヴィオラとチェロのピチカートがよく歌う開始。 リズミカルに曲を進めて、少々派手めの響きがオケを彩り、タイトなティムパニで気合いも入ります。 加速度をつけたフィナーレは筋肉質な響き。 それで着地もピタリと決めたカッコ良い結末に、会場は大ウケ。 割れんばかりの拍手に包まれていました。
いずれも耳慣れた曲なのでハードルは高かったけれど、楽々クリア、って感じだったでしょうか。

15分間の休憩。 当方はずっと自席に座って開演を待ちましたけど、遅れて来たお客さんもいてロビーやトイレは混雑していたのではないかな。 演奏が始まる旨のアナウンスがあった後もしばらくステージは暗転のまま。 なんとなく客席が落ち着いてきたころオケメンバーがステージに現れ、後半プログラムの開始です。

幻想交響曲、先ほどのカルメンで聴かせたような派手な演出とは一線を画し、スッキリと丁寧に纏めていて、ある種クールでスマートな演奏でした。 が、最後の最後に至って残っていた力をグィっと全部吐き出した感のある怒涛のフィナーレ。 ここもまた感動的な幕切れとしていました。

第1楽章、ふわったとした滑り出しより、十分に間合いをとって、丁寧にゆっくりと進めました。 キレ良く、要所に力を込めるのは森口流でしょう。 音量はやや控えめだったようで、パワフルながらコンパクトに纏めた感がありました。

第2楽章、弦楽パートの纏まりの良さから重層的な響きとしたワルツが素敵。 しなやかでよく歌っう演奏には美観もよく出ていました。 個人的にはバルビローリみたくもっともっとタメを効かせるのが好きなのですが(かなり臭くなりますが)、それでも普通ならすっと流れるところもちゃんとシナ作っていて嬉しかったな。

第3楽章、この楽章も大きく呼吸しながらも丁寧でよく纏まっていました。 コントラバス7本、チェロ9本の低弦もよく纏まっていて、ぐっと力を込めても轟音にはならない(先のカルメンでは轟音にしていたようですが)。 場面転換のキレも良かったのが印象的。 ティムパニ2台に奏者4人でのロールもまた同様でした。 あと冒頭、2階右側バルコニー(ステージ側最前列)にバンダ席を設けてステージと掛け合っていましたが、バンダの響きがステージ方向を向いているとはいえハッキリと聴こえてしまい・・・指揮者や奏者には判りやすかったかもしれませんけれど、立体的な感じとしてはちょいと乏しかったかな、という印象も持ちました。

第4楽章、この楽章もコンパクトでスクエア、スマートな演奏としていました。 繰り返しを行ってましたが、サクサクっと進んでいって、タイトに締めた感じかな。 さすがにこの楽章はちょっと抑制かけていたのか、なんとなく進んでいった感もあったみたい。 終結部こそタイトに締めたので、後ろの方からパラパラと拍手も出ていました。
アタッカで終楽章に入って欲しいところでしたが、小休止してから終楽章へと入りました。

第5楽章、緻密な高音弦、芯のある低音弦によるアンサンブルでキレ良く進みました。 鐘はステージ右側に教会の鐘みたいなのを2個置いて、よく透る響きでインパクト十分。 チューバ2本(トラで大阪交響楽団の潮見さんも参戦)にトロンボーンの低音金管楽器も充実した響きでした。 各パートしっかりと纏まっていて、それで全体を纏め上げて推進させる森口さんの動作もキレキレっ。 クールでスマートな演奏で、ドラマがあまり感じられないようにも思っていましたけれど。。。クライマックスに近づくにつれて気合も入ってきました。 そして最後の最後、なりふり構わないような急激な盛り上がりとして幕。 残っていた力を全て出し切ったかのような怒涛のフィナーレでした。 会場からは熱狂的な拍手が湧きあがっていました。 大ウケでしたね。 冷静に考えると、ちょっとバランス悪いかな、と生意気にも思ったりもしましたが、終わり良ければすべて良し、ですものね。

とにかくよく訓練されたオーケストラを聴くと気持ち良かったですわ。 佳演、熱演お疲れさまでした。


以下、未稿