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紫苑交響楽団 第27回定期演奏会

スマートでカッコ良く、それでいて底力を感じた戻る


日時:2016年2月28日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:八幡市文化センター・大ホール

曲目:スメタナ/歌劇「売られた花嫁」序曲
   グラズノフ/ヴァイオリン協奏曲
(アンコール)プロコフィエフ/無伴奏ヴァイオリンソナタ op.115 第3楽章
   ドヴォルザーク/交響曲第6番
(アンコール)スメタナ/歌劇「売られた花嫁」より第3幕「道化師の踊り」
(アンコール)J.ウィリアムス/スターウォーズ「帝国のマーチ」

独奏:石上真由子(vn)

指揮:牧村邦彦


牧村さんらしく、スマートでカッコ良く、それでいて底力を感じた素晴らしい演奏会でした。 

牧村さんは淡々と棒を上下に振るだけなのだけれど、紫苑交響楽団らしくきちっと揃って近強い弦楽アンサンブルで曲を進め、管楽器も好調でどの曲も聴き応え十分。 またグラズノフのヴァイオリン協奏曲を弾いた石上さん、キレが良い美しい響きながらも余韻のある深みがまた魅力的でした。

そして最後の最後、スターウォーズの R2-D2 が舞台袖より出てきて、ダースベイダーのテーマまで飛び出すサービスもありました。 
コンサートマスターが客席に一礼して散会したオケに会場から暖かい拍手を贈られたことがこの演奏会の成功をよく物語っていたと思います。


簡単に演奏会を振り返ってみます。

近隣の火災により演奏開始を10分遅らせての開演。 確かにホールに来る途中のバス通り、片側車線を通行規制していて、鎮火した火災現場を横目で見ながらホールに到着しました。 その時、ホールへ向かう方向のバス停にはバス待ちの方が沢山おられ、歩いてホールまでいった当方を追い抜くバスは1本もなかったような・・・ とにかく10分遅れでの開演、整列入場されたオケは弦楽器 12-10-10-9-6 の通常配置。 低弦が厚い構成ですね。

スメタナの歌劇「売られた花嫁」序曲、張りのあるソリッドな響きでの開始。 牧村さんは右手に持った棒を単に上下しているだけだけれど、筋肉質の響きが推進力を持って進みます。 とくにヴィオラの深く張りのある響き、これがズシリと心に響きました。 自然な盛り上がりのクレッシェンド。 牧村さん、機械仕掛けの人形のようなカクカクした動きで盛り上げてましたね。 透明感の高い木管の響き、余韻の少ないティムパニの打音など、終始ソリッドな演奏が印象的でした。

いったん第1ヴァイオリンのみ舞台袖に下がってソリスト用の空間を空けて再登場。 チューニングして準備万端、石上真由子さんが薄紫のドレスで登場しました。 写真ではボブカットでしたが伸ばした髪をポニーテールにして白い髪飾りを付けていたかな。 プロとしての活躍をしながらも京都府立医科大学の学生で医師も目指しているから驚きです。 天は時には二物も与えるものなのですね。

グラズノフのヴァイオリン協奏曲、キレの良い美しい響きながらも余韻のある深みが魅力的、一気に惹きこまれました。 オーケストラも柔らかな響きでしっかりとサポート。 ロマン溢れるメロディを深く美しくたっぷりとした余韻をもって弾き進めますと、ここでもヴィオラがコクのある深い響き、木管の柔らかくもまた芯のある響きによる間奏、素適ですね。 カデンツァ、安定したテクニックで軽やかながらも思索的な雰囲気とスケールの大きさをも表現して素晴らしかった。 フィナーレではオケの明るい響きと艶やかなソロが一体となって見事な着地として締めました。
そしてアンコールもまた奥行きのある深い響きが素敵。 単に音が美しい、綺麗なだけではない深みのある音を堪能しました。

15分間の休憩を挟んでいよいよメインのドヴォルザークの交響曲第6番。 牧村さんのスマートでカッコ良い音楽の骨組みに、引き締まって厚い低弦がベースになったオーケストラサウンドを堪能しました。 牧村さん、余計な感情を排したかのように棒を淡々と上下に振って曲を進め、時に起伏を付けて筋肉質でパワフルになりますが節度ある盛り上がりがまたカッコ良い。 牧村さんの師匠オトマール・スィトナーがベルリン国立歌劇場のオケの振った演奏をより若々しくした感じに思いました。

第1楽章、透明感のあるヴァイオリンと引き締まった低弦、重心を低くしたサウンドで開始。 左のヴァイオリンと右のコントラバスやブラスとの音の対比が面白い。 徐々に引き締めての盛りあがり、少し開放的にして起伏を付けていましたがぎゅっとまた搾って変な感情を乗せずストレートな音楽造り。 主題を繰り返して、自信たっぷりな音楽に参りました。 恰幅の良さ、スケール感も申し分なし。 ただし繰り返される主題、いずれも自信たっぷりな音楽で聴き手として少々疲れを感じるなど贅沢ですね。 たっぷりとして落ち着いた着地でこの楽章を締めました。

第2楽章、オーボエを始めとする管楽器そしてヴァイオリンもゆったりとした響きでの開始。 低弦もここでは柔らかく響かせてました。 落ち着いたホルン、ゆるやかに進める恰幅の良い音楽が素適でした。 叙情的な旋律、余計な色をつけずに作品そのものに語らせているような感じ。 スラブ的というよりドイツ的な感じなのは師匠スィトナー譲りかしら、と思ったしだい。

第3楽章、タイトながら流麗に曲を進めます。 ここでも低弦が芯になって、左に配されたヴァイオリンとの音のブレンド。 管楽器と弦楽器の会話もうまく決めて、機能的なオケの響きが推進力を持って進むのに一気に惹き込まれました。 タイトなホルン、スマートで力強くもまたチャーミングな木管の彩りをもって曲が進み、中間部の瑞々しい木管楽器と低弦の柔らかくもまた芯のある響きとの会話。 そしてまた牧村さんが棒を上下に振って主題を力強くもどして流麗に進めて締めました。

終楽章、ふわっとした開始より徐々に力を込めて全奏、牧村さんがすっと上げた右腕をすっと降ろし今度は小さく上下に振ります。 今度は牧村さんが左の拳でパンチを繰り出してパワフルに。 どの楽器も突出することのない引き締まったオーケストラサウンドを堪能。 旋律で聴かせるのではなく、よく訓練されたオケの響きでかっぷくの良い音楽として、ある種無駄のないインターナショナルなドヴォルザーク。 ストイックな音楽造り。
 一気に駆け抜けて全曲を締めました。 素晴しい演奏に大きな拍手を贈りました。

アンコールもまたカッコ良い音楽造りながら、ちょっと伸び伸びとした感じでの演奏。 拍手が鳴り止まず、カーテンコールを数度行ってちょっと落ち着いたかな、そろそろお開きかな・・・、と思った頃、舞台の左袖が明るくなって、なんとスターウォーズのロボット R2-D2 が舞台袖より出てきて、指揮者無しでダースベイダーのテーマが開始。 すると牧村さんがライトセーバー片手に登場。 指揮台では指揮棒に持ち替えて演奏を続けます。 タイトで迫力満点のブラス。 ここでもまたオーケストラサウンドを満喫しました。 曲の最後はライトセーバーに持ち替えてフィニッシュ。

ようやく散会となってコンサートマスターが客席に一礼、楽屋に引き上げるオケメンバーに会場から暖かい拍手が自然発生的に贈られたことが演奏会の成功をよく物語っていましたね。 とにかく皆さんお疲れさまでした。