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大阪市民管弦楽団 第84回定期演奏会

どの曲も美しい響きに彩られて、美観を大切に戻る


日時:2016年9月11日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:ザ・シンフォニーホール

曲目:ボロディン/歌劇「イーゴリ公」より「だったん人の娘の踊り/だったん人の踊り」
   マスネ/組曲第6番「おとぎの国の風景」
   ショスタコーヴィチ/交響曲第10番
(アンコール)ショスタコーヴィチ/劇場音楽「ハムレット」より「フォーティンブラスの行進曲」

指揮:中井章徳


指揮者の中井章徳さん、初めて聴く方ですけれど、しっかりとした棒で纏められた演奏は、どの曲も美しい響きに彩られて、美観を大切にされる指揮者だなと思いました。
もちろん演奏には迫力もありましたけれど、いわゆる勢いに任せた爆演ではなくて、きちっと計算されたタメを使ってしっかりと歌って盛り上げる感じだったかな。 

オーケストラもそんな中井さんによく応えて、聴き応えのある演奏を展開していて安心して演奏を楽しめました。 いずれの曲も好演でした。


簡単に演奏を振り返ってみたいと思います。

今回、いつもの2階席ではなく1階席K列での鑑賞。 オーケストラの中がよく見えないのでちょっと残念だったのと、中央通路の後ろあたりだったけれど多少音が上を飛んでゆく感じだったかな。 オーケストラの編成は、ちょっと見えにくかったけれど 13-13-12-10-7 の通常配置。 自由入場ながら管打楽器、コトンラバス、チェロ、ヴィオラ最後にヴァイオリンとパート毎に揃って準備完了。 コンマスが拍手で迎えられてチューニングを終えました。 燕尾服の中井さんが出てこられて始まります。

1曲目、ボロディンの「だったん人の娘の踊り/だったん人の踊り」も迫力よりも美感に焦点を置いた感じの演奏でした。 淡々とフレーズを繰り出して進めてゆきます。 韃靼=粗野という方程式は当てはまらず、みずみずしい響きで清廉な印象を覚えた「娘の踊り」。 ヴォリュームアップしてグイグイと進めた「だったん人の踊り」でも綺麗に響かせることに注力されていたみたい。 オケの纏まりも感も良く、スネアも切れ味は良いけど刺激的でない響き、ヴィオラのちょっと甘い響きが食い込んできたりもして、面白く聴かせてもらいました。 エンディング、スピードアップして力が入りましたが、ここも美しい響きで彩って駆け抜けました。

マスネの組曲第6番「おとぎの国の風景」、たぶん初めて聴く曲だと思います。 この曲も前曲同様で美感を大切にした演奏でしたが、アンリ・ルソーの絵を見るような陽気さと素朴さを感じた演奏でした。
第1曲「行列」、軽やかなトランペットと弾力ある響きのオケと掛け合ったファンファーレより行進曲が明るく賑々しく進みました。
第2曲「バレエ」、機動力を感じさせるオケの響き、中井さんフレーズをちょっと伸び縮みさせ、ここでも弦楽器と管楽器の呼応が良かったですね。
第3曲「幻」、思索的な音楽として深いヴァイオリンの響き、遥かなホルンも素敵でした。 オケ全体がまろやかなな響きながら押し出し強くして安定感ありました。
第4曲「バッカナール」、軽やかながら内声部をしっかりと歌わせて走ってくので、ここも安定感抜群。 機動力を持ったオケがしっかりと地に足つけて走って見事でした。

20分間の休憩を挟んで、いよいよメインのショスタコーヴィチの交響曲第10番。 かつて宝塚市交響楽団の第41回定期演奏会でも聴いたことがあるので実演では2回目となりますが、難曲ですね。 自分にとって・・・。 イマイチ捉えどころの分からない長大な第1楽章、第2楽章以降はお馴染みのフレーズが出てきて盛り上がりますが、第3楽章の終わりから第4楽章の初めがイマイチ馴染めない感じがぬぐえない・・・そんな印象ですが、意外と第1楽章冒頭より各楽器が織り成す響きを面白く聴かせてもらいました。

第1楽章、低弦の奥深い響きより開始、ヴァイオリンも深い響きでしたが、ヴィオラが甘く美しい響きにハッとしました。 コントラバスが芯になった弦楽アンサンブルは豊かで安定感抜群。 透明感高いヴァイオリンも冴えますね。 緻密に組み立てられた音楽、中井さんが分かりやすい指揮でリードしていて、客席から見ていても納得度の高い振りです。 徐々に緊張感を高めてクライマックス。 ピッコロが絶叫調の吹きますが、きちっとオケ全体の響きにマッチして纏まり感充分。 タイトなホルン、銅鑼も打たれて、パワフルながら堂々とした落ち着きすら感じられ、集中力抜群。 これを越えて深みのあるサウンドに。 ヴィオラの美しい響き、低弦の上に乗ったヴァイオリンも透明感ありました。 静かな緊張感を保ってこの楽章を終了。 繰り返しになりますが、緻密に組み立てられた音楽だったんだなと感じ入りました。

第2楽章、深く張りを持った弦の響き、木管楽器のパッセージでスピードアップ。 スネアがカッコ良く打ち、ホルンもまたカッコ良い。 場面転換をしっかりとキメて、また走ります。 木管奏者の方がノッて吹いてらっしゃいますね(演奏していて楽しいんでしょうね)。 聴いているこちらも楽しい。 中井さん、ここでは大きく上下動させてリードしていて、要所をしっかり決めて曲を進め、ここでも安定感あります。 大きく腕を振ってこの楽章を締めました。

第3楽章、緻密な弦楽アンサンブル、コントラバスの深く重い響き、ヴァイオリンはしっとりとした響きでしたね。 フレーズがフルートから弦楽器に移って次第にヴォリュームアップ。 これが収まるとファゴットがハリのある美しい音色でフレーズを吹き素敵。 コントラバスにフレーズを渡して力を持たせ、ホルンがカッコ良く吹いてパワフル。 中井さん各パートを見事にコントロールして、各パートもしっかりとそれに応えて聴き応え十分。 タイトな音楽となっても、安定感あるのはコントラバスが芯になっているからでしょう。 山を越えて、コンマスの断片的なソロ、こんな風に象徴的に扱われているのですね、CDではよくわかってませんでした。

第4楽章、コントラバスの重い響きより始まって、木管楽器も加わって徐々に走り始めました。 落ち着いたアンサンブルが余裕で走っている感じ。 金管も加わってパワフルなんですが、ここもきちっと制御されています。 大太鼓が打たれたクライマックス、絶叫したり、勢いに任せることのないきちっと抑制かけた音楽が流れます。 要所でのコントラバス、底力があってカッコ良くで安定感も抜群。 ホルンの斉奏、スネアなどもカッコ良く切り込んできましたね。 音楽がいったん落ち着き、木管と弦楽器の会話を経てから、またコントラバスが芯になってのエンディング、ティムパニ奏者の女性がこれまた鋭く打ち分けて見ていても爽快、そして盛り上がった音楽を中井さんが右腕を大きく回しての着地。 残響がホールに残り、客席からは大きな拍手が湧きあがりました。 最後の最後まできちんと美しく響くことを計算されたような演奏でしたね。 大きな拍手を贈りました。

アンコールもショスタコーヴィッチ、これを告げる指揮者の中井さんの明晰な声がホールに響きました。 聞き取れない指揮者の方も多いのですけれど、きっとこんな声のように曲も明晰に分析してオケに指示していたのではないかな、と想像しました。 オーケストラもそんな中井さんによく応えて、聴き応えのある演奏をして下さり安心して楽しめました。 ありがとうございました。 そして皆さんお疲れさまでした。