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六甲フィルハーモニー管弦楽団 第42回定期演奏会

メリハリを効かせた伊福部サウンドを堪能戻る


日時:2016年9月18日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:神戸文化ホール・大ホール

曲目:保科洋/風紋(管弦楽版)
   伊福部昭/シンフォニア・タプカーラ(1979年改訂版)
   ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」
(アンコール)シューベルト/劇音楽「ロザムンデ」間奏曲第3番

指揮:遠藤浩史


邦人作曲家2人による前半と、永遠の名曲ベートーヴェンの田園交響楽をメインに据えた個性的なプログラム。 個人的には前半プログラムがとても面白く聴かせていただきました。

保科洋の「風紋」は、吹奏楽では有名な曲とのことですが初めて聴く曲。 砂丘で砂が吹いているまさにそんな響きで始まり、吹奏楽らしいフレーズも随所に感じながら、後半には生き生きとしたリズム感もあってとても聴きやすい曲。 まるで映画音楽のようでもあり、どこか懐かしい風景を見ているような気持になりました。

伊福部昭の「シンフォニア・タプカーラ」は伊福部が亡くなった2006年、芦屋交響楽団第65回定期演奏会で聴いて以来2回目の実演。 すっかり忘れていましたが、メリハリを効かせた伊福部サウンドを堪能しました。 ステージ後方中央より左に一列に並んだパーカッションによるソリッドな響き、ブラス(tp×4、tb×4、tuba)が別動隊のようにステージ右後ろに別れて配置されたステレオ効果もあって大いに盛り上がった第1楽章が印象的でした。

指揮者の遠藤さんも初めて聴く指揮者ですが、しっかりと立って下半身はほぼ動かず、指揮棒は持たずに両腕を大きく使って曲の拍を取って進めます。 仁王立ちみたい。 太い線でぐいぐいと進めて、強烈なパーカッションの響きで切り取る、そんな感じのサウンドでしたね。

ただ後半の田園交響曲も遠藤さんは基本的に同じスタイルなので(ちょっと左足を引いて半身の体制も散見されましたが、けっして動き回らない指揮ですね)、ウェットな弦楽器の響き、端正な管楽器の響き、嵐の場面に象徴された鋭い打音のティムパニ、それぞれ頑張っているのは分かるのですが・・・オケ全体もまとまっていて、悪くもないのですが、何度も同じ曲を聴いている当方には、ざらっと曲を進めてどこか捕らえ処がなく終わってしまった・・・という感じでした。 指揮者のこの曲への思い入れの違いかもしれませんね。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

奈良を出たときは土砂降りに近い雨が断続的に降ってましたが、神戸は曇り空。 今回は奥さんと長男を連れての参戦。 ちょっと遅くなって急いで坂道を上っていたら蒸し暑くなってきて汗も出てきました。 開演10分前になんとかホールに到着。 さっそく2階席の8列52番に陣取りました。 このあたりガラガラでしたが、こんな天候なのに1階席はけっこうお客さん入っているみたい。

トイレに行って戻ってきたらオケの皆さんもう席についてスタンバってました。 オケの編成は、13-11-7-8-6 の対抗配置。 燕尾服の遠藤さんが出てきて始まります。

保科洋の「風紋」、砂丘で砂が吹いているまさにそんな響きで始まり、吹奏楽らしいフレーズも随所に感じながら、後半には生き生きとしたリズム感もあってとても聴きやすい曲。 まるで映画音楽のようでもあり、どこか懐かしい風景を見ているような気持になりました。

ヴィオラとチェロのゆらめくような響きによる開始。 流れるようなヴァイオリンの響きが加わってきて、懐かしい風景画を見ているような気持になりした。 まさに風で砂丘の砂が風紋を作っているようでいて、ゆったりと流れる音楽は映画音楽のよう。 生き生きとしたリズムとなって、舞台右後方のブラス隊(tp×4、tb×3、tuba)とステージ最後列に陣取ったパーカションとの対比効果。 まさに響宴ですね。 それが収まってフルートの暖かな調べ、ミュートトランペットも懐かしい感じを持たせたあとまた盛り上がってゆきます。 ステージ前方の高音弦、後方のパーカッション、右奥のブラス隊、またこれらの響宴でのピークを形成。 女性奏者の方、大太鼓打った手を返して銅鑼を叩いたあとタンバリン持ってと大忙しでしたね。 スッキリと盛り上がったのを、遠藤さんの左手が挙げて止めました。 初めて聴く曲でしたが、とても面白く聴かせてもらいました。

伊福部昭の「シンフォニア・タプカーラ」は以来2回目の実演ですが、すっかり忘れていました。 この曲は、メリハリを効かせた伊福部サウンドを堪能。 ステージ後方中央より左に一列に並んだパーカッションによるソリッドな響き、ブラス別動隊はtbを1本追加(tp×4、tb×4、tuba)、ステレオ効果もあって大いに盛り上がった第1楽章がとても印象的でした。 そして第2楽章はしっとりとした音楽、ハープの響きやティムパニの打音が心臓の鼓動にも聴こえたり、管楽器が和楽器のような渋い響きであったのも日本的な感じがして面白かったですね。 そして第3楽章はタプカーラのリズム、ミュートトランペットのソロや裏で吹くファゴットなども加わって伊福部サウンドを楽しみました。

第1楽章、ヴィオラとコントラバスの深みを感じさせる響き、ここにヴァイオリンのしっとりした響きが絡んでコクが出てきます。 ここがあるのが1979年改訂版。 木管楽器を伴った土俗的なリズムに、切れ味鋭いスネアが割って入ります。 クラリネットも負けじと頑張って、打楽器の強烈響きで応酬。 ちょっとやりすぎかな、と思うほど思いっきりよく打って、オケはリズム感よく走ってゆきます。
指揮者の遠藤さん、しっかりと立って下半身はほぼ動かず、指揮棒は持たずに両腕を大きく使って曲の拍を取って進めています。 まるで仁王立ちみたい。 太い線でぐいぐいと進めて、強烈なパーカッションの響きで切り取る、そんな感じ。
弦楽アンサンブルも高音・中音・低音の響きがよく混ざり合っていてパワーありますね。 特に中音がしっかり響くのがいいですね。 コクがあえります。 ホルンは別動隊と反対側、オケの左端に陣取っていてこちらもハリのある響きで参戦。 のびやかでもあってよかったですね。
ホルンのソロ、チェロのソロ、それぞれに深くハリのある響きが良く、それが断片的になってからクライマックスへ。 リズム感があってメリハリを十二分に効かせた音楽となりまですが、指揮者の姿と同じく腰の据わったサウンドがホールを埋め尽くし、最後は指揮者の遠藤さんの右ストレートで止めました。 客席からは大きな拍手は湧きあがりました。 客席もちょっと興奮状態ですね。

第2楽章、ハープを弾く音、後ろでコントラバスも添えているのですね。 フルートのしっとりとした響き。 ゆったりとおだやかな音楽。 ヴィオラもいい響きでしたね。 ティムパの打音が心臓の鼓動のようにも聴こえました。 この響きに乗せて、ミュートトランペット、フルート、オーボエ、ホルン、それぞれに和楽器のような渋い響きで彩ってゆきます。 ファゴットが裏で吹いているのもいい感じだったな。 ティムパニはマレットを持たず、手で叩いていて、最後はこと切れるように終わりました。

第3楽章、アイヌの踊りのリズム・タプカーラによる開始。 ここでもタイトな打楽器がさく裂。 リズムに乗せて進みます。 オケもノリノリかな。 遠藤さん、右手でリズム取りながら左手で抑えるような場面もありました。 これが収まると、オーボエの美しいメロディがコンマスのソロに移ります。 艶やかないい音でしたね。 ファゴットがいい感じでした。 ミュートミュートトランペット、ティムパニが調べをつないでゆくと音楽がまた盛り上がります。 リズムの響宴の開始。 伊福部サウンド全開ですが、ただ突っ走るのではなく音楽が伸び縮みしているので聴きごたえあります。 オケはそのまま整然と走ってエンディグに突入、遠藤さんが両腕を万歳、グリコのマークように挙げて止めました。 堪能しました。

20分間の休憩。

前半の邦人作曲家2人とはうって代わって名曲中の名曲であるベートーヴェンの田園交響曲。 オケの編成は、13-12-9-8-6 と中音を増強しましたが、舞台上の打楽器はティパニのみ(当たり前ですが)スッキリしましたね。 しかし舞台右奥には、離れ小島のようにブラス隊(tp×2、tb×2)が残っているのが印象的。 ベートーヴェンの交響曲の金管楽器って打楽器と同じような動きなので別にここに居る必要は特に無いように思うのですけどね。

田園交響曲、先日はソノリテによる美しい響きに彩られた演奏を楽しみましたが、六甲フィルではウェットな弦楽器の響き、端正な管楽器の響き、嵐の場面に象徴された鋭い打音のティムパニ、それぞれ頑張っているのはよく分かりますし、オケ全体も良くまとまっていて悪くもないのですが・・・なんか捕らえどころが薄く、ざらっと曲を進めて終わってしまった・・・という感じでしたね。 前半2曲と違って、指揮者のこの曲への思い入れの違いかもしれませんね。 そんな風に感じたしだいです(生意気ですみません)。

第1楽章、弦楽器の豊かな響きによる開始は上々。 徐々にテンポを早めに進めてコンパクトにたたみかけて進めたあと、今度はゆったりと、緩急つけて進めてゆきます。 遠藤さん、両足をしっかりと動かさず、指揮棒を持たない両腕での指揮は変わりませんが、前半と違って腕を水平に動かして太い線で歌わせているみたいですね。 木管奏者の方は全員女性なのですね、皆さん白のブラウスで気づきました。 ただし響きはいずれも端正な感じで淡々と曲を進めている感じ。 終盤もフレーズをやや短めにしコンパクトに盛り上げてたあとふわっと着地。

第2楽章、中音弦のちょっと分厚い響きで始まりました。 第1ヴァイオリンの響きは抑え目ですね。 ゆったりとオーソドックスに進んでゆきます。 朴訥としたファゴットが素敵でした。 遠藤さん、腕をぐるぐると回して歌わせますが、なんかこじんまりとまとまった音楽より抜けださない感じかな、端正な木管楽器の響きは素敵なのですけどね。 フルートが吹き、クラリネットのカッコウが鳴く美しい音楽。 いいですね。 でも部分はいいけど、全体としてイマイチ印象薄くなるのは何故でしょうね。 なんて思っているうちに終わりました。

第3楽章、柔らかな響きでの開始より徐々に力を増してゆき、コントラバスの響きがまとまって届きます。 ホルンは2本ですがタイトに吹いてオケ全体の響きによくマッチしていましたね。 オーボエのソロもまたオケ全体の響きに綺麗に合っていて、いいですね。 でもやはり全体としての印象薄くてちょっと眠くなってきましたよ。 皆さん巧いんですけどね。 第2ヴァイオリンの深い響きで嵐の場面へと進みます

第4楽章にはアタッカで入って、ティムパニのさく裂する響き、ソリッドな打音には重さと粘りも感じられて見事。 端正なオケの響きにもここでは鋭いキレと粘り気が感じられました。 前半プログラムをちょっと思い出したりもして、遠藤さんこういった場面が好きなのかな、と思ってみたり。

第5楽章、ゆったりと進めて、ちょっとソロが危なくギリギリセーフのような場面もありましたが、弦楽器の第1ヴァイオリンはしっとりとした響きで第2ヴァイオリンは暖かな響き、これらがまとまって暖かくまろやかな響きとなって届けられます。 管楽器はどれもまた端正な響きですね。 たっぷりとした音楽、緩急もつけて場面転換はビシッと決めて進みます。 悪い感じはしないのですが、なんか捕らえどころがなくなんだろうな・・・という思いがぬぐえず最後までやってきたという感じ。 ゆったりと腕を回してオケを止めました。

これが名曲を演奏するむずかしさなのでしょうね。 下手なオケならもっと別な部分を聴くのでしょうけれど・・・結局は指揮者のこの曲への思い入れみたいなのが、当方と合わなかったということかもしれませんね。 偉そうですみませんが・・・

でも上述したように個々はオケはよく頑張っていましたよ。 アンコールのロザムンデでは木管奏者の方は生き生きと吹いていらしたのも印象に残りました。 とにかくお疲れさまでした。 次回はプロコフィエフの交響曲第7番とこれまた先日聴いたショスタコーヴィチの交響曲第10番だそうです。 指揮は第37回定期演奏会でも指揮されたプロソロフさん、緻密さにパワーを兼ね備えたロシア・ロマンを期待します。 皆さんお疲れさまでした。