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セント・マーティン・オーケストラ 第12回定期演奏会

エキサイティングな英雄交響曲で塗りつぶされた戻る


日時:2016年9月19日(月・祝) 14:00開演
場所:伊丹アイフォニックホール

曲目:ハイドン/「月の世界」より序曲
   ハイドン/交響曲第100番「軍隊」
   ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」

指揮:河ア 聡


これが自分達のベートーヴェンの英雄だ、そんな強い意志を感じた素晴らしい演奏に感服しました。 速いテンポ設定、ノンビブラート奏法なのでパッセージを早めに切り上げて走り、要所ではグィグィッと・・・これでもかというほど切り込むアクセント。 とてもエキサイティングな演奏でした。

しかも指揮者がオケを煽って演っているのではなく、指揮者とオケが一体となって進めていらしゃる。 指揮者の河崎さん、いつものようにこやかな笑顔を見せつつ満足そうに曲を進めていましたが、ステージの奏者の方もまた自信を持って演奏されているのが客席からも良く見えたのも印象的な演奏会でした。

このセント・マーチン・オーケストラを始めて聴いたのが第3回定期演奏会、くしくも今回再演となった英雄交響曲を東灘区民ホール(うはらホール)で聴きました。 当時と今を単純に比べることはもう難しいのですが、今回、響きの良いアイフォニック・ホールでの演奏は、前回同様に大きな音でしたが、より響きの多彩さを感じるところが多くあったように思いました。

なおこれに先立つ軍隊交響曲も同傾向の演奏で現代的なハイドン。 曖昧なところが無くスッキリとしていますが、小編成のオケながら音量が大きくて、コンパクトな力強い線で描いて、パパ・ハイドンと呼ばれるような恰幅が良くて伸びやかな音楽とは一線を画した音楽。 それぞれの箇所を面白くスポットライトを当てるがごとく(軍楽隊の打楽器は逆に控えめとして)面白く聴かせた軍隊交響曲でした。

そして冒頭に演奏された同じくハイドンの「月の世界」序曲。 この曲もまた太い響きが特徴的。 鋭角的に切り込む場面もありましたが、全般的に快活で伸びやかな演奏となっていて、いわゆるハイドンらしさがよく出ていたのではないでしょうか。

とにかく今回アンコールはなし。 エキサイティングな英雄交響曲で塗りつぶされた、そんな感じを強く思った演奏会でした。 確かに、こんな英雄交響曲のあとにアンコールは不要ですね。 今も耳の奥でメロディが鳴っています。 素晴らしい演奏会をありがとうございました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

台風の影響もあって雨がパラつく空模様のなか、ホールには30分前に到着。 いつもどおり2階席を目指そうとしましたが、ロープが張られていて、関係者以外立ち入り禁止の文字・・・仕方なく1階席後方 M-10 に陣取りました。 あとで1階席の一番後ろのドアからロビーに出ると、2階席にも回り込めるのが解ったのですが、かつてこのような裏ルートで入り込んで係員に丁重に追い出された経験もあるので、今回は大人しくしていました。 もっとも1階席がほぼ満員となってきたころ、2階も開放されたようですけれど・・・

定刻、オケの奏者が左右より各パートが揃って整列入場。 客席から拍手があがります。 オケの編成は 9-10-6-5-3 の対向配置。  メンバーが全員揃うまで奏者の方は起立したままで待ち、全員が揃ってからコンミスと伴に一礼して着席。 これは気持ちいいですね。 客席からも暖かい拍手がまた湧きました。 チューニングを終えて準備完了、燕尾服の河崎さんが登場されていよいよ始まります。

ハイドンの「月の世界」序曲。 弦楽アンサンブル、各パートの響きがブレンドされて太い線を感じさせた開始。 小編成オケによる纏まりの良さも勿論ありますが、ホールの響きで各パートの音が混然一体となって届けられてきます。 豊穣な響き、ってやつですね。 瑞々しいオーボエやファゴットが素敵に吹いてから全奏、ティムパニもまた太い打音なのは統一感があっていいですね。 中低弦が芯になって曲を支え、高音弦が鋭く切り込んでゆく感じ。 全般的に快活で伸びやかな演奏なのは、いわゆるハイドンらしさ、でしょうね。 木管との対話を経てまた全奏となりますが、全奏でも各楽器の音が綺麗に聴こえる見晴らしの良さ、最後は駆け抜けるようにして終わりました。

打楽器と木管奏者が加わって、ホルンとトランペットがフルートとクラリネットを挟んで左右に振り分けられました。 チューニングを行って準備完了。

続いてのハイドンの軍隊交響曲は、現代的なハイドンを表現していたようです。 曖昧なところが無くスッキリとしていました。 先ほども思いましたが、小編成のオケながら音量が更に大きくなって、コンパクトに力強い線で描いたような感じ。 ノンビブラート奏法の弦、推進力良く進むのですけれど、響きのコクが少なくなってしまい、ちょっと聴き疲れしやすい感じ・・・なのですが、そこは響きの多いアイフォニックに救われていたかもしれません。

第1楽章、艶やかなヴァイオリンの響きにチェロとコントラバスの響きが絡む素敵な開始。 ティムパニのロール、コンパクトに打って張りがありました。 美しいフルートの音色より、生き生きと走り始めました。 中低弦が芯になり、高音弦がその上で快活に響いて走ってゆきます。 木管楽器もやや堅めの音色だったでしょうか。 音楽が前に前にと推進しますが、息せききって走っている感じなどなく、余裕すら感じます。 河崎さんもノッてきたようで、にこやかな表情を見せつつオケをドライブ、走らせていました。

第2楽章、明るい響きで始まりました。 裏で吹いているフルートがまた綺麗でしたね。 旋律が各楽器を巡ってゆきますが、明るく伸びやかで屈託のない前向きな音楽。 そんな裏で吹くファゴットもまた素敵で、皆さん持ち場をしっかりと固めて曲を進めている感じ。 重心を低くした弦が入って、軍楽隊の打楽器の響きもまた落着いた響きでした。 そして堂々とした音楽となりました。 トランペットのソロ、渋い響きでしたね。 ティムパニのロール、コンパクトに打ちながらも劇的。 ぐっと盛り上げてキレ良く止めた着地でした。

第3楽章、河崎さんが思わず発した声より音楽が飛び出します。 鋭く切り込むような前向きな響き。 楽しそうな表情の河崎さんも見えて、メヌエットながらスケルツォみたいな感じ。 ノンビブラート奏法の弦、響きのコクが少なくなっているので少々聴き疲れする感じでしたが、ここはホールの音響に救われていた感じかな。

第4楽章、明るい響きの弦楽アンサンブル、少々音量を絞ってチャーミングな序奏。 管楽器が加わって音量が大きくなって音楽が前に前にと進みます。 統制のよくとれたオケの響きがホールに充満。 ティムパニがより先の細くなったマレットでコンパクトに打ってアクセントになってました。 そして軍楽隊の打楽器はここでも上品で落ち着いた響きで彩って、弦楽器は馬力を感じさせます。 オケが一体となり、曖昧さを感じさせない現代的なハイドンを演奏し、全曲を力強く纏めて幕としました。

パパ・ハイドンと呼ばれるような恰幅が良くて伸びやかな音楽とは一線を画して、それぞれの箇所を面白くスポットライトを当てるがごとく(軍楽隊の打楽器は逆に控えめとして)面白く聴かせた軍隊交響曲でした。

20分間の休憩。 1階席はほぼ満員盛況となっていますので、2階席が開放されているようですね。 定刻なってオケの奏者が左右より各パートが揃って整列入場。 客席から拍手があがります。 一部のメンバーは着席しましたが、コンミスが起立したままなので、アレっていう表情を見せながら立ち、全員が揃うのを待ってから客席に一礼して着席。

着席後、オーボエ奏者の方がチューニングの準備をして指示を待ちますが、コンミスは座ったまま微動だにせず・・・何度かコンミスに目配せをしてようやく気づいたみたいで、慌てて立ってチューニングを開始。 しかしその立ち方があまりに唐突だったこともあって、客席も気づいたみたいで笑い声。 しかしこれで会場がずいぶんと和みましたね。 そんなの分かっているわよ、これから立つことろなの…ってな感じで堂々と立たれたならば違っていたかも。 とにもかくにも準備完了です。

速いテンポ設定、ノンビブラート奏法なのでパッセージを早めに切り上げて走り、また要所ではグィグィッと・・・これでもかというほど切り込むアクセント。 とてもエキサイティングな演奏でした。 前日、井上道義が指揮した大フィルの英雄交響曲をTVで少し見ましたが、おっかない顔してストイックな演奏を展開。 しかしここでは指揮者がオケを煽っているのではなく、指揮者とオケが一体となって進めていらしゃる。 指揮者の河崎さん、いつものようにこやかな笑顔を見せつつ満足そうに曲を進め、ステージの奏者の方もまた自信を持って演奏されているのが客席からも良く見えていました。 素晴らしい演奏でした。

第1楽章、肩口より鋭く指揮棒を鋭く振り下ろすのは昨夜の井上道義と同じ動き、ストイックな強い響きによる開始。 鋭角的に切り込んで、超快速テンポでグィグィと曲を進めてゆきます。 いやぁ、速い速い。 こんなに速い演奏は初めてかも・・・そんな速度でしたが、しっかりと音楽が描かれていて、前に前にと曲が進みます。 河崎さん、時に小刻み膝を屈伸させて縦ノリのリズムを交えます。 エキサイティングな音楽。 後半となって河崎さんのにこやかなお顔も見えてきました。 とにかく明確な意思を持った演奏ですね。 こんなに超快速ながら、音楽が息づいていますもの。 力強い幕切れまで圧倒されっぱなしでした。

第2楽章、深くハリのあるヴァイオリン、重い響きのコントラバスによる葬送行進曲は一転してゆったりと進みます。 オーボエの物悲しい音色もソリッドで凛とした響き。 キレ良く端正でストレートな音楽造りですね。 弦も管も各楽器が同じ音色となっていて、ゆったりと大きく音楽を繰り返してゆきます。 まるでゴシック建築のようでもあり、細部は緻密に組立てられたモザイクのようでもあります。 ホルンの太い響きが見事。 そして延々と流れた音楽、キレの良い響きを減衰させた幕切れもまた見事でした。

第3楽章、弦の豊かな響きでの開始、徐々にスピードアップしてタイトな音楽になりました。 グイっと切り込んでくる低弦がカッコ良い。 河崎さん、ここでも笑顔で楽しそうですね。 ティムパニが短いストロークで小気味よく盛り上げて、ホルンのトリオ。 荘重で華やかな響きがとても素晴らしく、自信を持った響き。 弦楽器のアンサンブルも曖昧さはないのに、高音から低音までゴージャスに響いて盛り上げてゆきます。 河崎さん、身体を弾ませるように音楽も躍動的。 最後はタイトな音楽としてスピード上げて力強く締めました。

第4楽章、弦楽器の素早いパッセージ、張りのある響きで始まり、ピチカートが深く弾力あります。 金管・打楽器は太い響きで合いの手。 続いてノンビブラート奏法での弦楽アンサンブルの妙を楽しみました。 1プルトのみの合奏、聴き応えありましたね。 これを堪能したあと、木管が華やか、金管は力強く、だんだんと力を増してスピードアップ。 皆さん自信持って演奏されているのでしょうね、見て聴いてとても面白かった。 この曲の違った面白さを教えられました。 縦ノリのリズムとなり、力を増してゆくのもまた面白かった。 客席で一緒に楽しみました。 管楽器が端正に吹いてフィナーレの激しさを予感、そして力強い音楽。 でも拡散することなくコンパクトに纏めた着地へと結びついて全曲を締めました。 もっと苛烈に盛りがると思いきや、なるほどこれが見識というものですね。 大いに感じ入りました。

素晴らしい演奏にブラボーも出て納得です。 客席からの拍手の渦、そこで気付いたのですが、湧きおこった拍手の音が上から降ってくるんですね。 このホールの響きの良さを体感しました。 これが自分達のベートーヴェンの英雄だ、そんな強い意志を感じた素晴らしい演奏に感服しました。 今も耳の奥でメロディが鳴っています。 素晴らしい演奏会をありがとうございました。 そしてお疲れさまでした。 次回、来年4月の合唱団ホール・バルティカとのモツレク、いずみホールでの演奏会も楽しみです。