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混声合唱団ホール・バルティカ 第6回定期演奏会

魂の叫びにも似た熱く力強い合唱戻る


日時:2017年4月22日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:いずみホール

曲目:《ウイーンの音楽集》
   E.シュトラウス/ポルカ・シュネル「テープは切られた」op.45
   J.シュトラウス2世/南国のバラ op.388
   J.シュトラウス2世/トリッチトラッチポルカ op.214
   J.シュトラウス2世/皇帝円舞曲 op.437
   E.シュトラウス/カルメン・カドリーユ op.136
   スッペ/「軽騎兵」序曲
   《モーツァルト/レクイエム》
   モーツァルト/レクイエム ニ短調 K.626(ジェスマイヤー版)
   アンコール:モーツァルト/レクイエム (レヴィン版)より「アーメン・フーガ」

独唱(昼公演):内藤里美(S)、大賀真理子(A)、小餅谷哲男(T)、片桐直樹(Br)

合唱:混声合唱団ホール・バルティカ
管弦楽:セント・マーティン・オーケストラ

指揮:河崎 聡


魂の叫びにも似た熱く力強い合唱によるモーツァルトのレクイエムに心揺さぶられました。 昼公演を鑑賞しましたが、夜公演でもまた同じテンションでできるのかなぁ、などと余計な心配もするほどの熱い演奏を展開。 そして前半プログラムは、ニューイヤーコンサートにも似たウィンナワルツやポルカの数々は、いずれもきちっと抑制をかけながらも悦楽感に富んだ演奏を楽しみました。 プログラムに書かれた指揮者の河崎さんのお話によると生と死がテーマであったようです。 色々な仕掛けもあったようですが、純粋に充実した演奏に満足した演奏会でした。

オーケストラは対向配置とし弦楽器を 9-9-7-4-3 とした編成。 定刻、舞台袖より整列入場でステージに集合するオケ・メンバーは起立したままで待ち、全員が揃ったのを確かめてコンミス以下一同が客席に一礼をして着席。 ちなみに演奏会終了時も、ホール内が明るくなったのち、オケ・メンバー一同が客席に一礼をして散会していて、礼に始まり礼に終わる、日本の武道のようなスタイルに客席からも暖かい拍手が贈られていました。

さて前半は「ウイーンの音楽集」、ホイッスルで始まるポルカ・シュネル「テープは切られた」。 汽車の出発を想像させる曲で、原語では Bahn frei ! 、Bahnは「道」でfreiは「自由」、道(人生)の出発で自由を感じたので「生」をテーマとした前半第1曲目に選曲されたとのこと。 軽快に進めていて、まろやかな金管も相まって自然と口角もあがりました。

この種の曲はある種判りやすいこともあって几帳面に演奏されがちですけれど、どの曲も河崎さんのリードによってきちっと演奏されながらも、なんともいえない浮揚感を醸していて、中でもヴィオラ奏者の方々、皆さんにこやかで微笑むような表情で演奏されていたのがとても印象に残りました。 素晴らしかったですね。

カルメン・カドリーユ、オペラ「カルメン」の有名なメロディが次から次へとめまぐるしく出てくるパロディ的な曲も面白かったですね。 2012年のニューイヤーで演奏されて世界中を魅了したのだとプログラムに書かれていましたが、今回初めて耳にしました。 まだまだ知らない面白い曲もあるのでしょうね。 奥の深い世界ですね。

そしてお馴染みの皇帝円舞曲や「軽騎兵」序曲、前者での独奏チェロや後者のトランペットによるファンファーレも素敵でしたし、耳に馴染んだ曲ながら深さと奥行きも感じさせる演奏に大満足。 「生」を満喫させるかのような内容の充実した前半でした。

20分間の休憩、ステージ後方に合唱団用のひな壇を、指揮者の前にはソリスト用の椅子を並べて準備を整えました。 定刻、合唱団の入場。 中央に男声、向って左にソプラノ、右にアルトを配しますが、ソプラノがアルトの倍近い人数でした。 あとステージの左右には字幕表示も設置されていました。 オケ・メンバーも配置について準備完了。 ソリスト4人と河崎さんが出てこられていよいよ始まります。

後半では指揮棒を持たず、たっぷりとした振りで深い響きを導き出した開始、音を重ねてゆき、合唱のバスそしてテノール、アルト、ソプラノと声が重なってゆくと鳥肌がたってきました。 ヴァイオリンがノン・ヴィブラートでしょうか無機的な響きもまたゾクゾクっとしました。 内藤里美さんの独唱は、一言でいうと美声でしょう。 落ち着いて清楚さを出していますが、華やかさが見え隠れしますね。 合唱団は重厚で力強い響きで圧倒するような感じも。 合唱団の演奏会ですからね、気合い十分なんでしょう。

「キリエ」も真摯ながら重厚でドラマティック、圧倒するような感じで推し進めましたが、間髪を入れず「怒りの日」が超高速なのにた驚かされました。 それでもソプラノ合唱はしっかりとに声を伸び縮みさせていましたね。 一気呵成で進めたあと、少し呼吸をとってトロンボーンの落ち着いたソロが心に滲みました。 片桐直樹さんのバリトン・ソロも深くて良い声ですね。 テノールの小餅谷哲男はドラマティクな感じ、大賀真理子のアルトもまた陰影のある落ち着いた声、そして艶やかなソプラノの内藤里美とつないで、重唱は粒が揃っていて聴き応えありますね。

「オッフェトリウム」柔らかな女声合唱、パワフルな男声合唱が絡み、メリハリもつけつつ躍動的としたあと、オスティアスでの暖かなやわらかな響きの合唱。 声が横に拡がって聴こえるなか、ピリオド奏法の高音弦がストイックに絡んで進んで素晴らしかったですね。 ここまでがモーツァルト。 そして輝かしく力強い「サンクトゥス」よりジャスマイヤーによるモーツァルトへの鎮魂歌だそうです。 各声部が有機的に絡んで壮大な世界を創り上げてゆきました。

豊かで暖かなオケの響きで始まったベネディクトゥス、滋味あるアルトの独唱に美しいソプラノが絡み、高音弦も寄り添って美しい響き。 バスのソロが艶のある深い響きで歌い、独唱そしてオケが立体的に絡んでドラマティクに進めて素敵。 合唱が雄大で熱気を孕んで歌い上げました。

一転して重厚な合唱で始まった「アニュス・デイ」、敬虔だけれども熱い合唱は力強くて、少々抑えても良いかな、と思いましたが、終曲となるとじっくりと進める河崎さんに合唱も深い響きでよく応えていました。 最後はぐっと盛り上げて着地するのかと思いきや・・・ゆっくりと音を絞って消え入るようなエンディング。 最後の音が終わっても静寂がホールを包み込むモーツァルトへの鎮魂歌らしい感動的な幕切れでした。 モーツァルトへのジェスマイヤーの想いに見事な光を当てたような素晴らしい演奏でした。

アンコールは、レヴィンが補筆時に偶然発見したというアーメン・フーガ。 珍しいオマケまでいただきとても満足した演奏会でした。 耳慣れた曲でしたが、また違った角度より楽しむことができました。 皆さんお疲れさまでした、そしてこんな素晴らしい演奏会にご招待いただき有難うございました。


以下、未稿