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京都教育大学管弦楽団 第48回定期演奏会

入魂の「運命」に大きく心揺さぶられた戻る


日時:2017年11月23日(木・祝) 14:00開演(13:30開場)
場所:文化パルク城陽・プラムホール

曲目:スッぺ/「軽騎兵」序曲-*
   チャイコフスキー/幻想交響曲「ロメオとジュリエット」
   ベートーヴェン/交響曲第5番「運命」
(アンコール)アーグナー/歌劇「ローエングリン」から「エルザの大聖堂への行進」

指揮:藏野雅彦(客演)、東谷ひとみ(学生)-*


失礼ですが正直こんな気迫に満ちた真摯な「運命」に接することなど想定外。 藏野さん入魂の「運命」に大きく心揺さぶられました。 単科大学ゆえOB/OGや近隣オケの方の賛助を得て演奏会なので、そんなに鳴りの良いオーケストラではないけれど、藏野さんの気迫が乗り移ったのでしょうね、失敗を恐れず攻めの姿勢での演奏が実に潔く、気持ちの良い演奏に感動しました。 ベートーヴェンって凄いな、運命って名曲だな、などと改めて感じ入った素晴らしい演奏に出会えて幸せでした。

文化パルク城陽での演奏会、ここのホールに来る楽しみの一つに市民プラザの催しがあって、この日はフリーマーケット。 お気楽にあれこれと覗いていたら開演10分前、慌ててホールに駆け込みました。 2・3階席はクローズされていたのでやや混み合う1階席 U-37 の席を確保、慌ててトイレに行って準備完了です。 オケの皆さんが整列入場され、弦楽器編成 13-12-9-8-7 での対向配置で着席されました。

スッペの「軽騎兵」序曲は、オケ始まって以来の女性指揮者・東谷ひとみさんによる指揮。
 小柄な体躯が伸び伸びとして大きく見える指揮姿でしっかりとリードしていたのが印象的でした。 冒頭のファンファーレより明るい音色で快活に進めて、ブラスの響きの重なりも良かったな。 お馴染みのメロディ、元気よく進めてゆきます。 ヴァイオリンのアンサンブルにやや纏まりが欠けていたようにも思えたりもしましたが、抑揚をきっちりと付けるなど、しっかりとした構成を崩さす、オケもまた指揮者にしっかりと応えていました。 最後は一段と音量を増した若さ溢れる演奏として見事にフィニッシュを決めました。

オケがいったん全員掃けたあと再入場。 準備を整えると藏野さんが出てこられてチャイコフスキーの幻想交響曲「ロメオとジュリエット」。 厳かで重みのある序奏がこれから始まる悲劇を予感させる上々の滑り出し。 コントラバスが鋼のようにキレを持った重い響き、ヴァイオリンの奥深い響きを駆使し、音楽を十分に練り込みつつ進めてゆきます。 場面転換、緊張感を持った音楽でスピードアップしますけれど、しっかりと地に足がついた音楽としているのは藏野さんらしいところ。 見ていても実に判りやすい棒で、端正な音楽造りなんだけれど、要所を決めてエキサイティングな音楽でもあります。 また落ち着くと、ちょっとウエットなコールアングレやホルンの響きでしみじみとさせたあと、小さく振って集中力を高めたクライマックス。 タイトに打つティムパニにゾクゾクっときました。 音量が上っても音が前に飛ぶのではなく、ホールを包む込むように響きが押し寄せてくる感じ。 十分練り込まれた響きが良かったですね。 そして終結、力強くも引き締まった響きでの着地。 十二分なタメに熱くなりました。 会場からも大きな拍手が沸き起こっていました。

15分間の休憩を挟んでいよいよメインの「運命」、勝手知ったる名曲中の名曲、長くない曲なので、15時半にはお開きかな、などと軽い気持ちで臨みましたけれど、冒頭の気迫に満ちた真摯な響きで、そんな気持ちは吹き飛び姿勢を正しました。 藏野さん、腰をぐっと落して力を入れる渾身の指揮で、ホルンのタイトな響きも素晴らしく、スピード感溢れる演奏についてゆくのが精一杯。 オーボエのソロもしみじみとして良かったし、再現部ではティムパニが芯となってドラマティックな演奏として盛り上げたのを、すっと力を抜いてふわっとした着地がまた素晴らしかった。 あまりの迫力ある演奏に会場より大きな拍手が湧いたのもうなずけました。

第2楽章は一転して豊かな弦の響き。 ヴィオラとチェロの見事なアンサンブルで始まって、湧き上がってくるようなヴァイオリンの響き、やや明るめの木管へと繋いでゆきます。 中音弦がたっぷりと鳴っていて、恰幅の良さが際立ちますね。 藏野さん、ここでも充分に響きを練り込んでいますが、ダイナミックレンジも大き目にとっていて、堂々たる名曲として存分にオケを鳴らしています。 失礼ですがここのオケからこんな響きが出るのかと思ったしだい。

第3楽章、コントラバスのキレのある重い響き、タイトなホルンが好演。 高音弦も強く弓を押し当てて弾いているのでしょうね。 キレの良いティムパニ、明るめの音色のトランペットにも彩られた充実したアンサンブル。 楽器の数が少なくなっても音楽の充実度が変わらない、集中力の高い演奏。 その集中力の高さを切らさずアタッカで終楽章へと昇華。

華やかなラッパの響き、重量感のあるコントラバス、オケが一丸となって進む渾身の演奏に巻き込まれた感じ。 不覚にも涙が出そうになりました。 もう音楽に身を任せるのみ、といった感じ。 藏野さんに導かれつつ、オケの皆さんが気持ちを合わせ、そして失敗を恐れない攻めの姿勢での演奏が本当に素晴らしかった。 トランペットの女性奏者の方、吹く前に掌で口元をぶるぶるとさせて気合いを入れていて、輝かしい響きで曲を見事に彩っていました。 ティムパニも曲の芯になって蔭に日向に曲を見事に支え、そしてオケが一丸となって迎えたフィニッシュ。 前の曲では藏野さんの巧さが光っていましたが、運命ではオケの攻めの姿勢が光っていました。 オケの皆さんに大きな拍手を贈りました。 気持ちのよく乗った音楽は本当に素晴らしかった。

市民プラザで何やってるかな?、などと軽い気持ちで出かけた演奏会でしたが、予想もしない真摯でかつ活力に満ちた運命の出会え、その余韻にひたりつつ会場を後にすると、フリーマーケットは既に撤収していました。 が、入場前に慌てて買ったセーターもお土産にとても充実した幸せな時間を過ごすことができました。 皆さんありがとうございました。


以下、未稿