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奈良女子大学管弦楽団 第48回定期演奏会

勢いに任せず、きちんと音を鳴らした音楽戻る


日時:2018年12月2日(日) 13:30開演(12:30開場)
場所:奈良県橿原文化会館・大ホール

曲目:グノー/歌劇「ファウスト」よりワルツ
   ブラームス/大学祝典序曲
   チャイコフスキー/交響曲第5番
   (アンコール)エルガー/エニグマよりニムロッド

指揮:竹本裕一


始めて聴く指揮者の竹本さんはトロンボーン奏者でかつ吹奏楽団の指導や高校などで教鞭をとられている方だそうです。 きちんとしたリードでオケの手綱をしっかりと握り、いずれの曲も充実した演奏内容に感じ入りました。 特に素晴らしかったのはオケの音量を上げても音が前に出るのではなく、音の密度が増すこと。 勢いに任せず、きちんと音を鳴らした音楽は聴いていて安心です。 学生オケがよく演奏するチャイコフスキーの5番の交響曲など勢いに任せることがままありますが、竹本さんに率いられての充実した演奏内容に満足しました。 いい演奏会でした。

冒頭のグノーのワルツ、出だしより「響きの密度が濃いな」と感じました。 そして艶の乗ったヴァイオリンの旋律、柔らかに響く低弦に乗せて歌います。 常にトップサイドに座っていた松永さん、後ろのプルトには前年のコンサートミストレスも座っていて、安定した弦アンサンブル。 優美なヴァイオリンの響きにコクも乗っていましたね。 フルートもしっとりした響きで好演。 クライマックスは弾力のある響き、音楽を大きくせずコンパクトにしっかりと纏めた密度の濃い演奏。 上々の滑り出しでした。

ブラームスの大学祝典序曲も、女子大オケながら落ち着いた骨太のサウンドで覇気を内包していた堂々たる演奏でした。 力がこもっても音楽を肥大させず、落ち着いてじっくりと構えた音楽が魅力的。 金管コラールもゆったりと落ち着いた音色でしたね。 演奏のキレももちろんありますが、タイトに盛り上げたあとは、軽やかな木管のソロがちりばめられてしっとり感も出すのが奈良女オケらしさかな。 パーカッションが入って熱い演奏となるところですが、ここもスケール感よりも響きの密度を上げる集中力の高い演奏で乗り切ります。 竹本さん、終始オーソドックスで的確なリードでオケを統率、フィナーレもまたゆったりとして壮大ながらも誠実な演奏として締めくくりました。

15分間の休憩のあとメインのチャイコフスキーの交響曲第5番。 正直この曲、あまり好きではないのですね、特に学生オケの場合だと勢いに任せて演奏できるせいか、よく演奏会にかかりますけどね。 第1番「冬の日の幻想」が奈良女オケに似合っているのになぁと思ってましたが、ところがどっこい。 竹本裕一さんに率いられた奈良女オケは一味も二味も違ってました。 充実した演奏内容に満足しました。

第1楽章の出だし、やや音量小さめでそっと「これから物語が始まりますよ」って語り掛けるような感じ。 ゆっくりと進めて、ヴァイオリンの艶のある響きも素敵。 徐々に盛り上がってゆきますが、タイトに盛り上げてもスケール感を大きくとらず、ここでも音の密度が上がります。 打点を明確にした音楽ですが、しっとりとして落ち着いたトーンでゴリ押さない。 いい感じです。 ファゴットはじめ木管もしみじとした響きでしたね。

第2楽章、中低弦のじんとくる響きでの開始よりホルンの難しいソロ、ちょっと危なっかしい場面もありましたが見事乗り越えました。 クラリネットのしみじみとした響き、オーボエのちょっと線が細いんだけど、いい味になっていたようです。 全体的に落ち着いたトーンで曲を進めてゆきました。 ピークこそタイトに盛り上げますが、じっくりと語りかけるような感じとしての着地。

第3楽章、艶やかで明るめの響きですが、ここでも語り掛けるような木管楽器、落ち着いた音色でちょっと遅めのテンポで進めてゆきました。 弦が入って、竹本さんちょっとタメをつけて抑揚をつけ、たっぷりとした着地。 決まりました。

第4楽章、オケを引き締めてゆっくりと、かつ淡々と進めてゆきますが、じっくりとタメを作ってからの盛り上がり。 タイトです。 引き締まった音楽は音が発散するのではなく集中力を高めた密度の濃い響き。 派手さはないのですが充実した演奏ですね。 しっかりととめて、行進曲もまたたっぷりとした響きで語り掛けるよう。 金管の響きも抑制がきちんとかかって、ティムパニの打音も抑制された渋い音で決め、落ち着いた腰の据わったサウンド。 音楽が無防備に肥大せず、きとんとした密度の濃い響き。 全員一丸となった熱い音楽としてのフィナーレは感動的でした。 ブラボーがかかったのも頷けます。

アンコールもまた良かったですね。 徐々に楽器の数が増え、壮大な音楽としているのに、常に語り掛けるような説得力がありました。 思い返すと、どの曲も語り掛けるような感じで曲を進めていましたね。 竹本裕一さん、初めて聴かせていただきましたが、アマオケでは貴重なオーケストラトレーナーになるのではないかと感じました。 とにかくいい演奏会をありがとうございました。 皆さんお疲れさまでした。



以下、未稿