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アンサンブル・フリー 第29回演奏会

進取の気質に富んだアンサンブル・フリーらしい演奏会戻る


日時:2019年5月26日(日) 13:30開演(13:00開場)
場所:あましんアルカイックホール

曲目:薮田翔一/歌曲集《小倉百人一首》より「悲歌集」(管弦楽伴奏版、世界初演)*
  (アンコール)薮田翔一/新元号「令和」の由来になった万葉集 梅花の歌 三十二首 序文
   マーラー/交響曲第6番(改訂版)

独唱:藤井玲南(S) *

指揮:浅野亮介


進取の気質に富んだアンサンブル・フリーらしい演奏会。 薮田翔一さんは、Wikipediaによると兵庫県たつの市出身で1983年生、東京音楽大学・大学院にて研鑽を積まれ、世界各国で作品が演奏されている方とのこと。 小倉百人一首の全100首をピアノ伴奏、弦楽四重奏伴奏として作曲されており、今回は作者自らが悲しみに彩られた16首を選んで「悲歌集」とし、世界初演となる管弦楽伴奏版が演奏されました。

有名な小野小町による第1曲目「花の色は うつりにけりな いたずらに・・・」の透明感が高く集中力のある演奏で幕が開きました。 1曲が1分ほどの短い曲こともあってオーケストレーションは幻想的でもあるし、時にダイナミックにも変化していましたが、いかんせん大編成オケなので藤井さんの歌がかき消され気味。 1曲1曲がなかなか沁みてこず、オムニバス的な感じになっていましたけれど、そんな中でも藤井さんはしっかりとしたテクニックの持ち主であることはよく判る落ち着いた歌唱に凛とした魅力を感じました。

後半、パンフレットに書かれた歌詞を見ながら聴くようになり、かき消され気味な歌詞を目で補うことで曲・歌を楽しむ余裕が出てきたようです。 最初からパンフレットを見るべきだったかもしれません(贅沢を言うならばプロンプターで歌詞表示あればまた違った感想になったかもしれません)。 一番心に残った演奏は、点描チックな伴奏が印象的だっだ参議雅経による第15曲目かな。 ピアノ伴奏、弦楽四重奏伴奏とも全く異なる管弦楽伴奏版らしいですが、弦楽四重奏版で改めて聴いてみたくなった曲でありました。

アンコールは、同じく管弦楽伴奏による歌曲。 Wikipedia によると 2019年4月1日、「平成」に次ぐ新元号「令和」発表数時間後に、同名の歌曲を発表し注目を集めている、と書かれた曲の管弦楽伴奏版でしょう。 先の小倉百人一首と同じ作風で、この中の更に一首を歌われたのかと思ったほど違和感ありませんでした。

20分間の休憩を挟んで、マーラーの交響曲第6番。 わざわざ改訂版と書いてありますが、パンフレットには版の違いについての記載はありません。 ただ今回の演奏では、中間楽章を アンダンテ → スケルツォ の順序で演奏していること。 ハンマーの打撃は2回だったこと、これがそれに合致することのようです。 もっとも当方など楽器はおろか譜面も読めないので、知ったかぶりです。

肝心の演奏ですが、オケの若いメンバーの息吹に満ち満ちたアグレッシブな演奏でした。 そして浅野亮介さんの指揮もまた、このオケを始めて聴いた2005年の第5回演奏会(マーラーの交響曲第4番)を彷彿とさせる独特な動きが懐かしかった(最近はそれなりの指揮っぽい動きになったと思っていましたが)。 オーケストラの弦楽器は 13-13-10-11-10 の通常配置。 コントラバス10本、チェロ11本という重量級の編成ではありましたが、意外と重低音が唸るでもなくキレより曲を進めていったような印象。 また、浅野さんの独特な動きが恣意的で煽るようにも見えるのですが、オケは結構冷静で落ち着いて曲を淡々と進めていたようにも感じました。 随分と以前のアンサンブル・フリーの演奏会でやっていましたが、できるだけ浅野さんの指揮を見ないようにして音楽を聴く、そんな昔のことも思い出しながら今回は曲を楽しみました。

第1楽章、キレ良くタイトな響きで曲が進みます。 機械仕掛けの人形のネジがどこか1・2本外れたようなハイテンションな動きの浅野さん、それをものともせずに一糸乱れないオケの巧さに脱帽です。 ただもう少し弦楽器にコクとかタメとか欲しい気もしますが、ここはぐぃぐぃと進む解釈なのでしょう。 ホルンが全般通して巧かったですね。 底鳴りのする見事な存在感を示していました。 あと終結部ではトライアングル4本、4人が立って演奏されていたのが印象に残りました。

第2楽章はアンダンテを演奏、落ち着いたしっとりとした弦アンサンブルに、管楽器のソロが巧く並んで素晴らしかった。 浅野さんもここでは違和感のない動きでしたね。 ただ曲が進むにつれて、スピードは落としてなぞるけれどもぐっと内面より沸き起っているような抑揚感があまり感じられず、年寄りにはチト物足りなかったかな。 でもホルンのソロはここでも滋味ある響きで光ってました。

第3楽章、切れ味鋭いティムパニ、良く揃った低弦による行進。 コントラバス10本、チェロ11本ですが、引き締まっているいるぶん意外と重低音を感じずサクっサクっと進めます。 トンロボーン、チューバもタイトな響きでした。 トリオにうまく入ると伸びやかになって、不安定に感じさせる部分もうまく演出し、集中力を高めての着地。 見事でした。

終楽章、凝縮させたサウンドで疾走、強烈な打音が更に追い打ちをかけて盛り上げます。 一転ホルンのソロがここでも良い味を出してましたね。 急緩をしっかりとつけ、若いメンバーの集中力の高さで乗り越えてゆきます。 爺ぃである当方には、もうちょっとタメを作って欲しいな、と思えなくもありませんが、自信に裏打ちされた音楽なので安心して聴いていられます。 ハンマーは舞台右奥で杭打ち用のハンマーでしょうか、大きかった。 ホルン10本のベルアップも壮観でしたが、4人が立って打つシンバルも迫力ありました。 雄大な音楽として堂々の着地。

浅野さんの腕がまだ下りないうちに拍手が沸き起こりましたが、腕がしばらく上がったままなので拍手は自然消滅。 腕を下ろしてから、パラパラとそして盛大な拍手へと変わってゆきました。 う〜んんん、もうちょっと我慢して欲しかったな、でも焦って拍手したい気持ちもわかる演奏でしたけれど。 とにかく若いメンバー、しかも腕っこきの皆さんによる気持ちのいい演奏会でした。 ちょっと若返った気分。 皆さんお疲れさまでした。


以下、未稿