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天理シティオーケストラ 第19回定期演奏会

ドイツ仕込みの竹内さんの重厚なピアニズム戻る


日時:2019年6月30日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:天理市民会館やまのべホール

曲目:ボロディン/交響詩「中央アジアの草原にて」
   ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番
   (アンコール)ショパン/ノクターン第13番 op48-1
   チャイコフスキー/バレエ「白鳥の湖」組曲より
      情景、ワルツ、小さな白鳥の踊り、ハンガリーの踊り
   チャイコフスキー/幻想序曲「ロミオとジュリエット」
   (アンコール)チャイコフスキー/バレエ「くるみ割り人形」より「花のワルツ」
   (アンコール)J.シュトラウス/ラデツキー行進曲

独奏:竹内 奏(p)

指揮:安野英之(常任)


ドイツ仕込みの竹内さんの重厚なピアニズムが光っていました。 アンコールを褒めるのは良くないかもしれませんが、ショパンのノクターンがこんなにも深い音楽であったのか、と唸りました。 ピアノ独奏曲はあまり聴かないのですけれど、心にズシンと響くものを感じました。

その竹内さんが独奏をされたラフマニノフのピアノ協奏曲。 冒頭の和音の深い響き、たっぷりとしたオケもまた渋い響きで応えて、ロシア音楽というよりもドイツ音楽のような印象でした。 プレトークで、ピアノが約50年前のものなので、アクションが古いタイプだから速いパッセージへの追随性がイマイチ、そんなお話もありましたが、濃厚なロマンティシズムきらびやかなラフマニノフというよりも、質実としたドイツ風、艶消しを施した黒光りする重厚さがにじみ出ていたように感じました。

第2楽章も強めのタッチで大きな呼吸、気持ちを静かに込めていつくしむような感じ。 アタッカで入った第3楽章、オケとの呼吸もバッチリで一体感を持って進みました。 強めのタッチで重厚に響かせていましたね。 弦の編成が 7-9-8-5-5 の小型のオケですが、スケール感を十分に感じさせる伴奏は端正でありながら雄大さをも感じさせました。 そして両者ががっぷりと組み、しっかりとした着地でのフィニッシュ。 丁寧でとてもよく纏まった演奏という印象。 安野さんの的確なサポートですから当然といえば当然なのでしょうけどね(その分、わくわく感に乏しいのがちょっと残念だったかな)。

そしてこのあとのアンコールが、前述したとおり。 こんな演奏をされるのなら、竹内さんでベートーヴェンのピアノ協奏曲もいいかもしれませんが、個人的にはブラームスのピアノ協奏曲を聴きたかったですね。

これに先立って演奏されたボロディンの交響詩「中央アジアの草原にて」、刺身のツマのような演奏ではなくしっかりとした演奏としたい、安野さんが言われていたように、各パートが落ち着いた響きでよく纏まっていました。 丹念に場面を描き分けていて、聴き応えありました。

休憩のあとはチャイコフスキーのバレエ「白鳥の湖」組曲より4曲、いずれも落ち着いてしっかりとした演奏でしたね。 安野さんの判りやすい指揮のもと、オケが自然と鳴っている感じ。 テンポを揺らす事なく、強弱アクセントでメリハリをつけますが、それもやや控えめだったかな。 対抗配置にした弦楽器より低弦がやわらかく下支えしていたの好感が持てました。

最後のチャイコフスキーの幻想序曲「ロミオとジュリエット」もまた「白鳥の湖」と同様ですね。 恣意的な細工はせず美しく、音楽を自然な高揚感で描いてゆきます。 音量が上がってクライマックスになるとともに安野さんの指揮棒の動きは逆に小さくなって、オケの集中力を高めさせているようでした。 オケもよく訓練されていて、派手にならず落ち着いた雰囲気での纏まり感のある演奏でした。 ここでもしっかりとした着地を決めました。

アンコールは、「白鳥の湖」はチャイコフキーの初期の作品で鳴りが良くないけれど、ということで鳴りの良い「花のワルツ」。 確かに明るく響いた音楽で華麗な感じも出て面白かったですよ。 それにアンコールの気軽さもあってか演奏する愉しさも音楽に含まれていたように感じました。 そして最後はお馴染みのラデツキーマーチ、会場と一体感を持ってのお開きで気持ちよく会場を後にできました。 いつもながら上質な音楽を楽しませていただきました。 皆さんお疲れさまでした。


以下、未稿