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ホール・バルティカ 第8回演奏会

20世紀の宗教音楽とは思えない清澄な祈り戻る


日時:2019年8月25日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:ザ・シンフォニーホール

曲目:リャードフ/魔法にかけれた湖
   エルベルディン/マニフィカート -*
   ワーグナー/タンホイザーより「巡礼の合唱」
   メンデルスゾーン/「真夏の夜の夢」より「夜想曲」
   ラッター/マニフィカート -**
   (アンコール)失念

独唱:丸山晃子(S) -*,-**、高原いつか(MS) -*
バンドネオン:仁詩 -*
アルボカ(スペインの角笛):楠元美子 -*
打楽器:深田瑞穂 -*、川向千草 -*

合唱:混声合唱団ホール・バルティカ
管弦楽:セント・マーティン・オーケストラ

指揮:河崎 聡(音楽監督)


スペインのエルベルディンと、イギリスのラターによるマニフィカトをメインにした演奏会。 スペインの民族楽器を交えてエキゾティックなエルベルディ、合唱と独唱が清らかに絡んで癒されるラター、ともに20世紀の宗教音楽とは思えない清澄な祈りを感じさせるとても良い時間を過ごせました。

久しぶりのシンフォニーホールですが、まず驚いたのが自由席だったこと。 1回中央に特別指定席を設けておられましたが、2階席最前列も自由席。 あいにくホールに到着したのが少々遅くなってそこは断念しましたが、左サイドのLG-2を確保。 足元が広くてちょっと得した気分。

オーケストラの編成は 10-8-7-6-5 の対向配置。 自由入場で楽器練習される団員さんが徐々に増えて気分も自然と高揚しますね。

まずは演奏のみの曲でオープニング。 リャードフの「魔法にかけれた湖」ですが、初めて聴く曲ながら、ロシアの平原の夕暮れ時、遠くには影になった山脈が望め、残照の残る空には星が瞬き始めた・・・そんな絵巻物でも見ているような気分となりました。 気づくと舞台の照明もやや落とし、ステージ後方のオルガンの銀色のパイプには薄青い照明を当てるなど、なかなか良い雰囲気を作っていました。

合唱団は女声のみ、独唱者とバンドネオンも加わったエルベルディンのマニフィカート。 聖母マリアへの讃歌ですが、このエルベルディンのは晴れやかな華を持った曲調で、バンドネオン、アルボカという角笛、タンバリンなどの打楽器など随所にスペインそれも片田舎と解説にあるような風情が楽しめる曲ですね。 特に角笛、ツィンクみたいな形でしたがオーボエ奏者が演奏されるだけあってラッパではなく和音の出る笛のような音で魅了していました。 肝心の合唱・演奏ともにやわらかな響きを基調として刺激的な要素は(角笛を除いて)なく、美観を漂わせた演奏に身をゆだねました。

前半最後はワーグナーの「巡礼の合唱」、男声も加わって最後は力強く熱っぽく盛り上げました。 冒頭のホルンや木管など柔らかく落ち着いた響き。 いつもはアグレッシブな演奏のセントマーティンですが、今回はこの他の演奏もそうでしたが、包み込むような落ち着いたサウンドでした。 徐々に熱い演奏として、リリックな女声に力強い男声。 メリハリつけて、最後はトロンボーン、チューバの芯のある響きも交えて歌い上げました。

20分の休憩のあと、まずは演奏のみの曲としてメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」より「夜想曲」。 今度もステージの照明を落としてパイプオルガンに緑色の照明を当てて雰囲気を作っていましたね。 透明感の高い高音弦と落ち着いた低弦によるアンサンブルが印象的でした。 冒頭のホルンちょっと危なっかしい感じもしましたが、後半よく持ち直して包み込むような響きで曲をうまく彩っていました。

独唱のソプラノ歌手とハープが加わってラターのマニフィカート、ミュート・トランペットだったかないきなりバーンスタイン風の賑やかな開始。 合唱も明るい歌声で、合唱・管弦楽が立体的に響いていましたね。 続いて落ち着いた色合いとして、静かな力のこもった合唱。 決して暗くならず、河崎さん緻密に合唱もコントロールされて曲を進めます。 金管・打楽器が入って雄大な音楽なれば、合唱もまた堂々と歌って音対決のような感じとなりましたが、圧巻はそれが退いてからのソプラノ独唱と合唱の絡み。 清楚な独唱に座ったままの合唱もからんで自然なもりあがり。 うっとりとしました。 合唱はこのあと立って力強くミュージカル風となりましたが、またソプラノ独唱と合唱、ハープ、木管、そして弦楽四重奏などとの絡みがゆったりと流れていって癒しの時間。 独唱、ハープと男性合唱がポイントだったでしょうか。 そして最後はまたバーンスタイン風となって輝かしく、かつカッコよく幕となりました。

2曲のマニフィカートを中心に据え、管弦楽曲も配したオムニバス的な演奏会でしたが、曲の配置の妙もあって、各々の演奏、また演奏会全体としても充実した内容に満足しました。
もちろんそこには混声合唱団ホール・バルティカの一本筋が通っていながらも柔らかさを失わない声、いつもの古典派音楽で聴かせる尖ってアグレッシブな演奏とは一線を画し丁寧で柔らかく包み込むようなセント・マーティン・オーケストラの演奏、河崎さんを中心に一つにまとまっていたことが大きかったように感じました。 素敵な時間を過ごすことができました。 ありがとうございました。


以下、未稿