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紫苑交響楽団 第34回定期演奏会

至福の時間戻る


日時:2019年9月7日(土) 18:00開演(17:15開場)
場所:京都コンサートホール・大ホール

曲目:ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲
   ブラームス/ヴァイオリン協奏曲
(アンコール)失念
   ドヴォルザーク/交響曲第7番
(アンコール)ドヴォルザーク/スラブ舞曲第14番

独奏:玉井菜採(vn)

指揮:森口真司(首席客演)


常に真摯に前向きに曲に立ち向かった演奏を聴くと心を動かされますが、それがよく訓練されたオケであったなら、演奏時間は至福の時となります。 その至福の時間を過ごすことができました。

いつもながら森口さんが指揮されたこのオケは集中力がさらに高まりますね。 ウェーバーの歌劇「魔弾の射手」序曲、冒頭より底鳴りのする響きで一気に惹き込まれました。 冒頭のホルンこそ慎重でしたが、弦アンサンブルの重厚でありながらも透明感を失わない響きが腹にズンズンと押し寄せてきていました。 お馴染みの主題も木管の好演もあって充実した独逸音楽の体。 一本に聴こえる見事なコントラバスの響きと落ち着いたチェロを軸にしてキビキビと曲を進め、冷静な盛り上がりによるフィニッシュ。 オケの機動力の良さをうまく引き出した演奏でした。

京都生まれ・滋賀育ちで、東京芸大教授である玉井菜採さんをソリストに迎えたブラームスのヴァイオリン協奏曲、しっとりとして深みのある美しいヴァイオリン(ストラディヴァリウス)の響きが魅力的でした。 ヘルマン・クレバースに師事されたとのこと。 くしくも当方がこの曲を始めて聴いたのがクレバース(伴奏ハイティンク/ACO)のレコード。 美音を前面に出した演奏だったと記憶していますが、玉井さんも同傾向ながらより現代的な表現、さらに森口さん率いる紫苑もシャープな伴奏で一体となって現代的なブラームスといった印象も持ちました。

第1楽章、ヴィオラとチェロの重厚な和音に高音弦と木管が絡んだ素敵な響き、華やぎも感じた印象的な開始。 玉井さん、透明感のある伸びやかながらも深い艶を持った響きで割って入りますと、ソロ・オケともに一体となって落ち着いて曲を進めます。 玉井さんの響きに粘りつくような色気も出て歌い込んでゆきます。 オケだけのなるとぐいぐいと熱気孕んで歌うと、カデンツァではスケール感を持ったソロで応えて、ソロ・オケ一体となり間合いとっての着地もうまく決めました。
第2楽章、オーボエが艶ののった響きが素敵でしたね。 さらにファゴット、クラリネットもしっとりと絡んで上々の滑り出し。 ゆったりとした呼吸で進めますと、玉井さんもそれを受けて艶やかで繊細な響きで丹念に歌い込んでゆきました。
第3楽章、端正なソロにシャープなオケが熱気をもって曲を推進させます。 もうちょっと甘美にと思わなくもありませんが(クレバースの影響?)、メリハリつけた現代的なブラームスを堪能。 ソロとオケの一体感が素晴らしいかった。 徐々に熱気を孕んで力演としての大団円でフィニッシュ。 聴き応えありました。

20分の休憩を挟んでドヴォルザークの交響曲第7番。 洗練されたオケの響きが伸びやかでかつ思い切りよく鳴る充実した演奏に心奪われました。 森口さん、いつもながら奇をてらったり、興に乗って煽ることなく、冷静に曲を進めてゆきますが、メリハリをうまくつけてオケを巧く乗せ、よく訓練されたオケより生き生きとした音楽が迸り出てくるのですね。 とても気持ちのいい演奏でした。 至福の時間でした。

第1楽章、低弦の落ちついたサウンドを軸に弦アンサブルの分奏がビシッと決まって見事な導入。 打点を明確に、キレよく機動的でありながら流麗で伸びもあります。 重軟織り交ぜながら曲を進めてゆきますが、ヴィオラの8名(?)に存在感あってドヴォルザークらしさを醸成。 金管も抑制かけて全体のサウンドに統一感を持たせていたのが魅力的でした。
第2楽章、落ち着いて温かみのあるクラリネットとファゴットに魅了された開始より、弦管が一体となって曲をおおきな呼吸で進める、これまた見事な音楽。 メリハリもしっかりと決め、たっぷりとしながらもしっかりと決める。 オケ全体がひとつにまとまった見事な音楽でした。
第3楽章、快活で流麗かつパワフルさも併せ持ったスケルツォ。 中間部、いつくしむようでありながらも快活さを併せ持った響き、そしてまたパワフルかつ流麗、巧い、よく訓練されたオケでしたね。
第4楽章、ぐっと粘りを効かせてじっくりと進め、徐々にパワーを込めてゆきますが、一筋縄でいかない力の込め方でしたね。 小技が色々と繰り出されているようで、確かに耳馴染みのある旋律だけど、ふっと前に出てきたりもしますね。 それが嫌味とかでなく、ごく自然な流れとして届けられる。 発見のある音楽でとても新鮮な響きでした。 スコアを読める人なら、なるほどと膝を打っているんじゃないかな。 表面、そして裏側、側面などのパーツを浮かびあがらせ、押して引いてオケを十分に鳴らして変幻自在での自信に満ちたエンディング。 感動しました。 素晴らしい演奏に大きな拍手を贈りました。 至福の時間をありがとうございました。


以下、未稿