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カラヤンのフランク/交響曲ニ短調

カラヤン一流の聴かせ上手(戻る

林さんのサイトの掲示板にてフランクの交響曲ニ短調の話題があったので、以前買ったまま暫く放置していたカラヤン/パリ管によるレコードが気になって再聴。 カラヤン一流の聴かせ上手な演奏に思わず参りました。 さすがに帝王カラヤンですね。 これならフランクが苦手な人にも気に入ってもらえるかもしれません。 当時は大嫌いなカラヤンでしたが、クラシック音楽の裾野を広げた功績は無視できないものがありますね。

フランクの交響曲ニ短調。 初めて聴いたのは、第何回か忘れましたが15年ほど前の大阪フィルの定期演奏会。 東京カルテットのヴァイオリン奏者から指揮者に転向した原田幸一郎さんの客演指揮でしたが、あまりの陰鬱な演奏に眩暈がしました。 元の曲調も暗いのですけど、抑える所作を繰返した原田さんの指揮にも賛同できず、精彩を欠いた納得のいかない演奏会でした。 以来この曲はとても暗いイメージがつきまとい、避けるようになりました。 初めて聴いて、あれれ・・・と思って、そのまま嫌いになる典型的なケースですね。 このあとのCDとの出会いも悪かったけど省略します。 とにかくとっつき易い曲ではないですよね。

ということで陰鬱な曲として避けてきたのですけど、転機は大阪シンフォニカーの第53回定期演奏会(1997/6/19)でのトーマス・ザンデルリンクの演奏。 このオケの定期会員でしたから、好き嫌いとは関係なくプログラムが組まれ、チケットが送付されてくるのが幸いした格好です。 ザンデルリンクの構成感を持ったしっかりした曲作りに、若いオケ団員による金管の咆哮、コールアングレも巧かったので違和感が少なくなりました。
その後CDでトーマスの親父であるクルト・ザンデルリンク指揮シュターツカペレ・ドレスデンの録音を入手。 渋い味わいながら、やはり構成感のある演奏で払拭された感じでしょうか。 とにかくこの曲、じっくり聴くとオルガンのような響きもしてブルックナーと共通点があるかもしれませんね。

さて、カラヤンの演奏。 何度も録音することの多いカラヤンですが、フランクの交響曲ニ短調は、このパリ管弦楽団の音楽監督時代に録音したこの1枚だけ。 カラヤンにしても気に入った録音なのかもしれません。
第1楽章、実にゆったりしたテンポで巨匠風の音楽で歩みを始め、盛り上がりでは壮麗に纏めます。 何度も押し寄せては返して盛り上がりますけど、微妙にアプローチを変えてアキさせません。 第2楽章冒頭のピチカートの力強さ、コールアングレやホルンを端正に纏めてから高音弦アンサンブルが艶やかに響いてハッとさせられました。 第3楽章、パリ管のカラフルな音色がドイツ風の馬力を持って進む見晴らしの良い音楽。 どこをとっても聴かせるポイントを巧みに突いて、自信たっぷりにさぁどうだ、と呈示してくれているみたい。 随所にカラヤンらしい聴かせ上手な音楽運びに舌をまきます。

個人的には、やはり渋く纏めたクルト・ザンデルリンクの演奏の方が好きですが、 これならフランクが苦手な人にも気に入ってもらえるかもしれません。 当時は大嫌いなカラヤンでしたけれど、こうやってクラシック音楽の裾野を広げた功績はやはり無視できないものがあると感じ入りました。