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チャイコフスキー物語〜クラシック・スクリーン・テーマ

思い出の名画がよみがえる美しいメロディへのお誘い(戻る

先に紹介した「「恋人たち」〜スクリーン・ロマンティック・テーマ」のルーツともいえるグロリア・シリーズのオムニバス盤。 昭和46年(1971年)発売当時、定価 900円の廉価盤です。 しかしながら見開きのダブル・ジャケット仕様。 しかもモノクロながら各映画のカットが散りばめられた構成はなかなか豪華です。 おまけに監修は荻昌弘さんが担当。 「映画で奏でられたクラシック」という文章まで掲載されています。 やはり選曲・曲順・演奏内容ともに素晴らしく、こちらも聴き飽きることのないアルバムです。

この種類のアルバムは評判良かったのでしょうね。 この1000円盤として出ていたグロリア・シリーズでも、同種の映画音楽をもとにした「アンコール」(FG-43)、「第3集」(FG-59)、「「永遠のクラシック・ラブ・テーマ」〜映画の中の名曲」(FG-89)が続いて出ています。 
その中でも、この「チャイコフスキー物語〜クラシック・スクリーン・テーマ」は初出だけあって、演奏にもけっこう気合がこもっているものをチョイスしていると思うのは考えすぎでしょうか。 ただし、ジャケットに印刷された演奏者名の省略や、レーベル面との相違(ジャケット印刷の間違い)が散見されるのが惜しいところではありますけれど。

その間違いについてまず解決しましょう。
A面3曲目。 映画「逢びき」で有名なラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の第3楽章の第2主題からの演奏者名としてアンチェル指揮ウィーン交響楽団とのみジャケットに印刷されていてます(ピアノ奏者の名前なし)。 しかしレーベル面には、ジャン・フルネ指揮ウィーン交響楽団、ピアノはユーリ・ブーコフと書かれていて(実際には英文)、FG-40にも彼らの演奏があるので、こちらが正解でしょう。 なお、ジャケット表紙にアンチェル指揮と書かれていますが、このアルバムにはアンチェルが指揮した演奏は入っていないことになります。
逆に、表紙にイ・ムジチ合奏団と書かれていますが、曲目リストには彼らの名前がなく、B面3曲目のモーツァルトのディヴェルティメントK.136の奏者として書かれた、イングリッド・ヘブラーが間違っています。 これもレーベル面にはイ・ムジチと書かれています。
またA面第6曲目のブラームス/交響曲第3番ハ長調はヘ長調、B面第4曲目のモーツァルトのピアノ協奏曲第21番ハ短調はハ長調、第5曲目のブラームスの弦楽六重奏曲第1番変ロ短調は変ロ長調ですね。

間違いを解決したあとは心おきなく音楽鑑賞といきましょう。
A面1曲目のチャイコフスキーの「花のワルツ」、フィストラーリ指揮の演奏はダイナミックで、クラリネットやホルンの音色にロンドン交響楽団独特の脂ぎった響きを感じます。 これで掴みはOK。 一気に音楽の没入できます。 
2曲目のハースのピアノによるショパンの革命ですが、この曲どこかのTV局の映画番組のエンド・タイトルに使われていませんでしたっけ。 
5曲目、レーデル指揮ミュンヘン・プロ・アルテによるバッハのカンタータ「目をさませと呼ぶ声がする」。 いつもどおりレーデルらしい心暖たまるような音楽が始まります。 そして聴き進んでいくうちに熱い感動が静かに押し寄せてきて、もうゾクゾクっとしてしまうほどです。 高揚する気持ちを抑えることができないほどの凄い演奏です。 ほんと、この1曲だけでもこのレコードの価値はあると言っても過言ではないほどの演奏です。
この高ぶった気持ちをすっと収めるのがブラームスの交響曲第3番第3楽章。 サヴァリッシュの演奏はスクリーン・ロマンティック・テーマにも含まれていましたけど本当に滋味で清楚ですね。 媚びることのない演奏に、しみじみとした気分でA面を終えることができます。

B面1曲目は「2001年宇宙の旅」より美しく青きドナウ。 ロベルト・ワーグナー指揮の音楽はモダンで堂々としてますね。 フォンタナには子孫のエドゥアルト・シュトラウスやパウル・ワルターといったウィーン仕込みの録音もあるのですけど、ここでは本場ものよりもインターナショナルな雰囲気で纏めたかったのかもしれません。 
続くハンス・リヒター・ハーザによる「エリーゼのために」、3曲目のモーツァルトのディヴェルティメントK.136のイ・ムジチによる演奏もドイツっぽいという感じではありません。 イ・ムジチはかわらず暖かくて、イタリアの陽光を感じさせる演奏が素敵です。
そんな暖かさは続くヘブラーによるピアノ協奏曲第21番の第2楽章にも現われていますね。 ヘブラーって急速に名前を忘れられているようですけど、女性らしい繊細さと端正の両方を持ち合わせてて、個人的には好きなんですけよね。
そして全体を締めくくるのはブラームスの弦楽六重奏曲第1番。 第2楽章の演奏がベルリン・フィルハーモニー八重奏団というのはスクリーン・ロマンティック・テーマと同じです。 先のはマーラーで締めくくりましたけど、ブラームスで渋く締めくくるのは時代の違いからかもしれませんね。 ともかく、表記の間違いはあっても、音楽は満足感の高いアルバムです。

A面
チャイコフスキー物語
チャイコフスキー/花のワルツ アナトール・フィストラーリ指揮ロンドン交響楽団
哀しみのトリスターナ
ショパン/練習曲「革命」 ウェルナー・ハース(p)
逢びき
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番 第3楽章より ユーリ・ブーコフ(p)
ジャン・フルネ指揮ウィーン交響楽団
(表記のアンチェル指揮ウィーン交響楽団は誤記)
赤いテント
ショパン/円舞曲 第7番 アダム・ハラシェヴィッチ(p)
みどりの壁
J.S.バッハ/カンタータ第140番「目をさませと呼ぶ声がする」 クルト・レーデル指揮ミュンヘン・プロ・アルテ管弦楽団
さよならをもう一度
ブラームス/交響曲第3番ヘ長調 第3楽章 ヴォルフガンク・サヴァリッシュ指揮ウィーン交響楽団
B面
2001年宇宙の旅
J.シュトラウス/美しく青きドナウ ロヴェルト・ワーグナー指揮インスブルック交響楽団
ローズマリーの赤ちゃん
ベートーヴェン/エリーゼのために ハンス・リヒター・ハーザー(p)
風の季節
モーツァルト/ディヴェルティメント ニ長調 K.136 イ・ムジチ合奏団
(表記のイングリッド・ヘブラーは誤記)
みじかくも美しく燃え
モーツァルト/ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467 第2楽章 イングリッド・ヘブラー(p)
ヴィットルド・ロヴィツキ指揮ロンドン交響楽団
恋人たち
ブラームス/弦楽六重奏曲第1番変ロ長調 第2楽章 ベルリン・フィルハーモニー八重奏団