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ペーター・シュライヤーの「春への憧れ」
(モーツァルト歌曲集)

抒情的で清潔感あふれたモーツァルトの歌曲(戻る

エーリッヒ・クンツ、ウィーンを歌う」で取り上げたのと同じキング・レコードのシリーズです。 同時期に買ったレコードですが、最近のようにちょっと気分が滅入りがちな時にしみじみと聴くのがいいですね。 清潔感があって清々しくて、気持ちがほっと休まります。 モーツァルトの歌曲って押しつけがましさがなくって、軽妙洒脱。 自由な雰囲気を漂わせていますものね。 標題は「春への憧れ」ですが、今はもう春爛漫になってしまいましたけど、気持ちの良いアルバムです。

オイロディスク名盤1700のシリーズの1枚。 先にも述べたクンツのレコードと同時期、1987年頃かしら、ダイエー京橋店にあったワルツ堂で買いました。 当時、CD化が進んでいたこともあって、アナログ・レコードの2割引の投売りのコーナーがありました。 すでに働いてはいましたけど、染み付いた貧乏根性は変わらず、1,500円以上のレコードを買うのは勇気が必要でした。 それに国内盤を値引きしてくれるところって本当に貴重でしたしね、このようなコーナーにも敏感でした。 そのようなことから、馴染みの薄い歌曲のレコードが射程距離に入ってきました。

レコード解説は吉田秀和さん、「シュライヤーの歌いぶりには、べたべたしたところのないのが、良い」「声の純粋な美しさという点でも(中略)まれにみる美質を具えたテナーといってよいだろう(中略)。独特の力強さと澄みきった輝きをもったフォルテにいちばん端的に出ているのではないか(中略)ピアノにしても、柔らかさというより、むしろ、遠ざかってゆく声のような距離感でもって、私をおどろかす。」 この文章のなかにほとんどのことが述べられていると思います。

そんなシュライヤーの歌うこのレコード。 最長でも6分26秒の「別れの歌 kv519」、ほとんどは2分ちょっとの曲で構成されています。 いずれの歌も歌詞のドイツ語が分るわけではありませんけど、語感が心地良く響いてくるのもシュライヤーの巧さゆえでしょう。 そして伴奏のイェルク・デムス、情緒豊かにしかも軽やかなサポートをしていて聴き心地良さを増幅させてくれていますね。

A面1曲目の「クローエに kv524」、この愛らしい歌で始まるのがいいですね。 気分が明るくなります。 そしてB面1曲目「だまされる世の中 kv474」の少々皮肉っぽい内容(世の中すべてだまされるのなら、僕もだましてやろう or 僕も喜んでだまされよう)もまたモーツァルトらしくていいですね。 両面の第1曲目、ほんといい曲を選んでいると思います。 

A面の最後の2曲「満足 kv349」「おいで、いとしいチターよ、おいで kv351」はマンドリン伴奏にのせて、軽やかに歌われているのも嬉しいですね。 そしてB面の最後の「子供の遊び kv598」は、標題の「春への憧れ kv596」「春 kv597」とともにモーツァルトの亡くなった1791年1月14日に作曲されたモーツァルト最後の歌曲だそうです。 いずれも溌剌として軽やかで明るく、死の影などまったく感じさせません。 春風のようにさわやかで、ほのぼのとしてしまいます。 このような歌も作っていたモーツァルトって、ほんと凄い人ですよね。 いままさに春爛漫、シュライヤーではなく、どなたでもいいですけど、モーツァルトの歌曲も楽しまれてみてはいかがでしょう。

春への憧れ
《ペーター・シュライヤー・モーツァルト歌曲集》
SideA
1 クローエに kv524
2 夢の姿 kv530
3 春 kv597
4 なんと私は不幸なことか kv147
5 別れの歌 kv519
6 満足 kv349
7 おいで、いとしいチターよ、おいで kv351
SideB
1 だまされる世の中 kv474
2 自由の歌 kv506
3 ラウラに寄せる夕べの想い kv523
4 私は私の道を kv309
5 私の慰めであって下さい kv391
6 すみれ kv476
7 春への憧れ kv596
8 小さいフリードリヒの誕生日 kv529
9 子供の遊び kv598
ペーター・シュライヤー(T)
イェルク・デムス(p)
エールハルト・フィーツ(マンドリン, SideA-6,7)