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オーマンディ/フィラデルフィアによるメサイヤ

明るく健康的なアメリカを感じるメサイヤ(戻る


個人的に2001年はオーマンディの評価を一段と高めた年だったが、年末にディスクユニオンで100円で捕獲した「メサイヤ」(米コロムビア2枚組)もその評価を揺るぎないものにしたレコードとなった。 グーセンス編曲によるビーチャムのような豪華な演奏かと思いきや、音の響きこそ明るく健康的だが、最近流行りの古楽によるどこか恣意的な明るさ・軽快さとは違って刺激的なところを極力抑えた落ち着きのある演奏である。 しかも媚びたところのない真摯な「メサイヤ」で、大人の音楽であった。
オーマンディがメサイヤを録音しているとは寡聞にして知らなかった。 値段が示すとおり状態のあまり良くない盤だったので躊躇するところはあったのだが、ジャケットの金・黒・青色という綺麗な配色に惹かれて捕獲した。 レコードの音は第3部で2ヶ所針飛び(同じ所を廻る)があるもののノイズ感も割合少なく聴き易い。 余談になるが、学生時代は針飛びはおろかスクラッチ・ノイズには神経質で心痛むものがあったのだけれど、今はほとんど気にならないのは大人になったせいだろうか。 そして、このオーマンディの音楽もまた大人の音楽であると思う。 ソリストも含めて音が全体的に明るく健康的に響くために軽い気分になるが、じっくりと耳を傾けていると恣意的な部分がなく、キリストの生涯を音楽の叙事詩として誠実に奉仕しているようだ。 とくに序曲をじっくり聴くとその深い精神性が感じられるように思う。 これに続く第2〜3曲のテノール(Davis Cunningham)も明るく健康的な声で、これにちょっと厚めのだがとても清澄に響く弦楽器の響きがよくマッチして聴き易い。 通奏低音はオルガンを用いている。 合唱(The Mormon Tabernacle Cohir)は少々木目が粗いように感じるが、とてもストレートに歌っていると思う。 そして各歌手もいずれも突出することなく誠実な歌を聴かせてくれる。 なおこのレコードは第1面の裏に第4面とちょっと戸惑ったが、これはオートチェンジャー仕様なのだろう。 こんなことも含めてこのレコード(録音)はとてもアメリカ的だと思った。 とても健康的で良き時代のアメリカを彷彿とさせる真摯なメサイヤではないだろうか。
最後にこのレコードは全曲かと思っていたのだが、慣習的に省かれる第2部34-37、第3部49-52以外に、第1部10-11,18、第2部27-32,38-39,41、第3部46が省かれていた。