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シュナイダーハン、シューベルト/幻想曲D.934

格調高いファンタジー(戻る

東京での仮住まいを始めて1年半、そして東京の部屋に念願のステレオを設置してアナログ・レコードが聴けるようなって10ヶ月。 自宅と違い、集合住宅ということもあって、これまでの交響曲・管弦楽曲から室内楽へと路線が大きく変わってしまった感があります。 20〜30才の頃、室内楽は老後の楽しみ、と言っていたのですが、現実その年齢になったということでもありましょう、興味は徐々に室内楽に移りつつあるのは事実です。 そして休日の朝、面白くないTVのスイッチを切り、シュナイダーハンとクリーンによるシューベルトの幻想曲D.934、格調高いファンタジーの響きを部屋に満たしています。

シューベルトのヴァイオリンとピアノのための幻想曲ハ長調D.934、亡羊として夢見心地のような冒頭の響き、耳を澄まし、繊細に引き伸ばされたヴァイオリンの調べと透明感のあるピアノの響き。 なんだか不安げな印象も与えつつも移ろうように進みます。 しかし、アレグレットになって軽やかに駆け出すと、チャーミングで上品なサラサーテみたいな感じでしょうか。 ピアノの走句も透明感の高い響き、凜とした清潔感を持っています。 そして約20分間、ロマン溢れる大曲を一気に聴いてしまいました。 初演では、あまりに長いので、席を立った人が多かったそうですけれど・・・

演奏するヴォルフガング・シュナイダーハンは、1915年ウィーンで生まれ、2002年にウィーンで没した名ヴァイオリニスト。 ウィーン交響楽団、ウィーン・フィルのコンサートマスターも務めた生粋のウィーン子。 対するワルター・クリーン、1928年にオーストリアのグラーツ生まれ、ウィーン音楽アカデミーで学びオーストリアを中心に活躍。 亡くなられた1991年、NHK教育TVの趣味百科 「ピアノでモーツァルトを」での講師としてお馴染みになられた方も多いのではないかしら。

なおこれは1978年に発売されたグラモフォン・スペシャル1300のレコード。 当時隆盛を誇っていたクラシック廉価盤レコードです。 同年代のオジさんたちにはお馴染みのシリーズかもしれません。 CDでは1998年に1,200円で出て、アンコールプレスもありましたが、現在は製造中止になっているようで残念です。

シューベルトの青春の移ろう雰囲気を湛えた典雅で押し付けがましさを感じさせないシュナイダーハンのヴァイオリンの響き、最近ではこのようなタイプの演奏家は居ないのではないでしょうか。 とにかく、黒い円盤がくるくると回るのをなんとなく眺めながら、室内楽の調べがスピーカから流れて出てくるの見て楽しむのも良いものです。

ヴォルフガング・シュナイダーハン(vn)、ワルター・クリーン(p)
録音:1965年12月9〜10日
ウィーン・フィルム、シンクロ・スタジオ