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リヒターのバッハ/ヨハネ受難曲

崇高な感動、ドライヴ感(戻る

今ではマタイやヨハネの受難曲、ロ短調ミサなども安価なCDで求めることができますけれど、学生時代には抜粋盤のレコードを買うのがやっとこさでした。 抜粋盤って良いところ採りになってしまうかもしれませんけど、入門者には有り難い存在には違いないでしょう。 でも最近、CDでは抜粋盤はあまりお目にかからないような気がしますね。 やはり安いからでしょうか。 それとも新規参入を拒むマニアック&アカデミックな風潮でしょうか。 そんなことはともかくこのリヒターのレコード、よく考えられた構成で聞き手を飽きさせることなく、崇高な感動に包みんでくれます。

このレコード、帯広の学生時代に買いました。 グラモフォンのレゾナンス・シリーズですから 1,500円盤ですね。 これを買ったのはオイル・ショックの頃でしたから、ガソリンの値段が1リットル150円を超えて大変でした。 帯広なんていうところ、自動車が無いと生活できませんからね、学生でもたいていは自動車を持っていました。 僕もそれに漏れず高いガソリン代に頭を悩ませていた一人でした。 とにかくそんな頃ですから、このレコードを買うのにも勇気が必要だったことを思い出します。 

このシリーズには、この他にもリヒターによるマタイ受難曲、ロ短調ミサの抜粋盤もありましたけど、まずヨハネを買った理由は何か・・・思い出せません。 とにかくこのレコードを手にしたおかげで他の曲よりもヨハネ受難曲が好きです。 またこのレコードで感動したので、マタイ受難曲やロ短調ミサの抜粋盤も買おうと思っていたのですけど、まさかのカール・リヒター死去の報。 レコード店に行ったらすでにありませんでした。 売り切れたのか、回収したのか(両方かな)、このシリーズでの再発はされなくて、半年ほどしたころかな 2,000円盤で復活したと記憶しています(こうなると手が届きません)。 そんなことも思い出してしまいますけど、そんなことはともかく・・・

第1曲目「わが統治者なる主よ」の合唱、真摯さがとても素晴らしいですね。 これで一気にヨハネ受難曲の世界に突入してします。 このあと第7曲のコラールに続いてソプラノ(イヴリン・リアー)による第13曲のアリア「我が喜びの歩みもて汝に従う」。 柔らかいフルートとのかけあいがとても美しく優しい。 口三味線ならぬ口フルートしながら聞き惚れていたら、合唱がしみじみと第15曲「汝を鞭つ者は誰ぞ」を歌います。 今度はしんみりとしたと思ったら、第19曲のテノール(エルンスト・ヘフリガー)のアリア「ああ、わが思いよ」が緊張感を漂わせてぐっと気分を引き締めます。 ほんと、聴いてて飽きるって感じがありませんね。

そして第21曲のコラールで受難が告知されますと、続いて第40曲のコラールに飛ぶのですけど、第21曲と第40曲は同じ曲調ですね。 ここから第47曲まで連続して収録されていますが、ここがピークでしょうか。 とてもドラマティックな演奏が展開されます。

第41曲のレチタティーヴォに続いて第42曲の合唱「汝もしこの人を赦さば」、第43曲のレチタティーヴォから第44曲の合唱「除け、除け、十字架につけよ」、第45曲のレチタティーヴォから第44曲の合唱「カイザルの他われに王なし」と、いずれもレチタティーヴォからポリフォニックな合唱に結びついていて、合奏・演奏ともにドライブ感があります。 あれよあれよっていう感じで進むのんですけど、どこかしらプログレッシヴ・ロックを連想してしまうのは、あの時代に育ったからかもしれませんね、きっと。

B面は、第52曲のコラール、第53曲のレチタティーヴォに続き第54曲「これを裂くな」の合唱がまた素晴らしいですね。 後半に一段と大きくなり、ポリフォニックなバッハの世界を堪能できます。 
このあとの紹介は省略しますけど、起伏はありますけど、なだらかに終曲に向かって最後は崇高な音楽で全体が締めくくります。 まったく弛緩することのない合唱・演奏がとても素晴らしい抜粋盤です。 抜粋盤もバカにしてはいけませんよね。