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オーマンディのブラームス交響曲第1番

フィラデルフィアサウンドの裏に潜む重厚さ(戻る


フィラデルフィアサウンド、クラシック音楽の亜流・ムードミュージックじゃあるまいし…とクラシック音楽を聴き始めた頃、そんな風に思っていた。 ましてやレスピーギなんかの華麗な演奏は許せてもドイツ音楽なんて… しかし、今こうしてブラームスの交響曲を耳にすると、それが大きな偏見に満ちていたと言わざると得ない。 実に重厚、ケレン味のない誠実な演奏である。 確かに響きは独特な余韻を持ち、まろやかさが先にたつが、オーマンディはそんな響きにおもねることなく、フレーズを早め切って音楽を生き生きと推進させている。 芯のある重厚さがなんとも言えない充足感を醸し出しているブラームスであった。
第1楽章の冒頭のティムパニの響きが太くてまるい。 いかにもフィラデルフィアサウンドを連想させるが、かなり荒々しい開始である。 ヴァイオリンもちょっと金切り声をあげるように主題を奏なで、エネルギッシュな音楽が展開されている。 ホルンの音がこれみよがしに突出せずに全体の響きの中にきちんと収まっているというか、少々埋没しそうなくらい。 対する木管楽器のほうがはっきりときこえる。 コントラバスの力強い響きに満ちた終結部、ここでもホルンの斉奏はかなり遠い音である。 第2楽章も、変なアクセントなどつけずにサラリと音楽を流しているが、オケの響き自体は厚くかつ熱い。 オーボエやクラリネットのソロは巧いがやや控えめ、このあとに続く弦楽器群の力のほうが強靭である。 ホルンソロに続くヴァイオリンソロはまろやかでほの甘い。 ただここでも寂寞とは違い熱のこもった音楽である。 第3楽章の冒頭チェロのピチカートとクラリネットの旋律はなだらかだが、きちんと芯の通った音楽が展開されていく。 クラリネットの響きの豊かさと低弦楽器の力強い下支えによる聴き応えがある。 終楽章の序奏はゆっくと始まってしだいに響きを強める。 そしてホルンソロはまた若干遠くに響かせている。 フルートも角の取れた響きでこれを追い、またホルンが戻ってくる。 ゆっくりと音を前にではなく横に横にと響かせているような感じがする。 ピウ・アンデンテの第1主題は素朴な開始であざとさがない。 音楽はしだいに音量を増して熱せられてゆくが、変な細工などまるでなく端正で誠実な音楽である。 第1主題がもどっても基本的に同じ、華麗なフィラデルフィアサウンドにはならない。 響き自体はまろみを持っているがコンラバスがきちんと音楽を支えているので曖昧さがなく厳しさ、底力を感じる。 コーダに至って、ようやくトランペットが甲高い音で吼える。 それまでトランペットの響きは埋没していたがようやくという感じだなのだが、それもすぐに冒頭と同じく太くて丸いティムパニの轟音や低弦の響きに埋もれがちになってオケ一丸の堂々とした音楽を奏でて幕となる。
終始オーマンディは変な小細工などせずに実直にブラームスを見つめている。 オケも個人プレーを排して一体となってそれを実現している。 安直なイメージのフィラデルフィアサウンドで奏でられたムード音楽とは180度違う音楽がここにある。