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早川正昭/東京ヴィヴァルディ合奏団の「四季」

中庸で日本的なウェット感が惹きつける(戻る

1980年2月に発売された1300円盤である日本コロムビアの新選・名曲ギャラリーの1枚。 録音は1970年代のはじめころだろうか? このレコードが出た1980年頃、早川正昭さんは新ヴィヴァルディ合奏団を指揮し、同じく外山滋さんのヴァイオリンで「四季」をフォンテックに録音している。 こちらは旧盤になるけれど、僕がクラシック音楽を聴き始めた頃にとても話題になっていた録音である。

この当時、アーヨとイ・ムジチの四季がベスト・セラーを続けていた。 来日する室内オケは、必ずといっていいほど四季を演奏させられていた頃でもある(今でもそうか?)。 そしてこのイ・ムジチ盤、僕も珍しくレギュラー盤を購入しているので(見開きジャケットの中にはスコアが入っていたのには驚いた)、1曲1枚主義時代でもあって(少ないお小遣いは別の曲のレコードに投資しないと新しい曲が増やせないの)だから、この早川さんの四季のレコードを手にすることはなかった。 でも当時のFM放送ではさかんに放送されていたし、早川さんは対談などにも出ていらしたことを記憶している。 とにかく人気があったレコードだった。  そして念願かなって(?)、この度ようやく中古レコードとして捕獲したのがこれ。 とてもしっかりとした演奏に一気に惹き込まれた。

イ・ムジチのような豊穣さ、ミュンヒンガーのような構成感、パイヤールのような華麗さのちょうど中間をいくような演奏である。 往々にしてこのような演奏には特徴がなくなって、1回聴いてお仕舞になるところなのだが、しっくりと心に染み入ってくる演奏がちょっと不思議である。 日本人だからなのか、すっ〜と心に入ってくるような演奏をついつい聴きこんでしまう・・・ もっともイタリア的、ドイツ的というのはいったい何だ、と聞かれるとうまく説明できないのだが。 とりたてて愛国主義者というわけではなく、強いて言えば「四季のある日本に生まれてきてよかった」と思ってしまうような演奏・・・ かえって判りにくくなったかもしれないが、どことなく感じるウェット感のようなのがしっくりとくる演奏なのである。 とにかく素晴らしい演奏には違いない。 

最後にこのレコードには、細川俊之さんのソネット朗読に鳥の声や雷鳴の音も入っているちょっと珍しい録音である。 実演では、奈良チェンバー・アンサンブルの演奏会で指揮者の今村能(ちから)さんが「冬」の部分を朗読されから演奏されたのを聴いたことがあるのだが、巧いソネットが入る演奏はまた格別である(今村さんのソネット朗読はとても指揮者の余芸ではなかった)。