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メータ/LAPOのホルスト「惑星」

一家に1枚の常備盤としてお勧め(戻る

メータはロス・フィル時代が絶対面白かった、というのは1970年代始めにクラシック音楽の洗礼を受けた僕と同世代のクラシック音楽ファンの方々にとっては共通の認識でしょう。 
なかでもこのホルストの「惑星」は非常によく売れたレコードでした。 レコード・アカデミー賞も受賞していたのではなかったかしら。 何度も書きますけど、このレコードが出た当時はレギュラー盤なんて買えませんでしたので(廉価盤のセラフィムのストコフスキー盤で楽しんでいました・・・これも面白い演奏ですけどね)、メータの新譜はFM放送でよく聴いていたものです。 
ようやく数年前、今は亡き数寄屋橋ハンターでこの「惑星」のレコードを300円で見つけた時はちょっと(かなり)心が踊りましたよ。 さっそく家に持ち帰って針を下ろし、FM放送時とは比べ物にならないギラギラとする音色と押し出しの強さでわくわくしながら聴き進みました。 とにかくこのレコード、ステレオのボリュームを(近所迷惑にならない程度に)大きくして聴きたいですね。 デッカ特有の厚化粧のような録音も魅力的ですし。

ところで「惑星」を聴きたくなったのにはちょっと理由がありまして・・・事の発端はマーラーの交響曲第7番です。 アブラヴァネルの演奏から比較試聴として少しばかり集中的に他の演奏に聴き、レコード解説や本も眺めていました。 このとき柴田南雄さんの「グスタフ・マーラー」(岩波新書)で、第5楽章について「大げさなフィナーレ」と題された中に次ぎのような文章を見つけたのですね。
音楽が何かを表したり、意味有り気な楽相ばかり担わなくてもいいのではないか。 その行き着く先はグローフェの「グランド・キャニオン」かホルストの「惑星」のような音楽かもしれないが・・・」 
僕にはこのマーラーの楽章と「惑星」がまったく結びつかなかったのですよ。 言いたいことは分かるのですけど・・・ ま、そんなことからメータの「惑星」を引っ張りだして聴き返してみたというわけです。

たしかにこのホルストの「惑星」。 スレテオ初期のカラヤン/VPOのデッカ盤でこの曲のブームに火が付いた、というようなことがレコード評などにも書いてあります。 オーディオの進化とともに名盤が多く排出され、今日オーディオの低迷に合わせたかのように、演奏される機会も少なくなったようにも思います。 やっぱりそんな類の曲なのかな・・・とも思ったのですが、このレコードの故三浦淳史さん「回想のホルスト」と題された文章も併せて読むにいたり、神秘的なものに興味があっただけではなく内省的なホルストの姿も感じられて考えがちょっと変わりました。 とくにこの文章の終わりに一人娘のイモージュさんから、ポケットマネーで帰りのバスのチケット買わせて欲しいとの申し出があったくだり、父ホルストもそのように誠実で細やかな配慮をしたのではないかと思いをはせ、また一段とこの曲を興味深く聴くことができたように思います。

さてメータ/LAPOの演奏ですが、作為的なところは感じさせず真っ向勝負といった感じ。 

デッカ録音の優秀さ(厚化粧)にも支えられていると思いますけど、メータとロスフィルの良好な関係から生み出された稀有な音楽に惹き込まれていきました。 冒頭から力強く躍動する弦楽器のリズムにのせ、堂々とした金管ファンファーレなど特筆したいですね。  「木星」も勇壮な音楽なのですけれど、ここでも余裕を感じさせる音楽の造りがじつに素晴らしい。 ストコフスキー盤で刷り込まれた僕には、最初ちょっと物足りないような気もしましたけど、すぐにこちらの懐の深い音楽にはまりました。 表面的な効果や、単なる音色の豊穣さではなくって、音楽の構成・バランスといったものに注意が払われた演奏ですね。 説得力の強さではカラヤン/VPOとともに双璧かもしれません。 もっともあまり多くの演奏を聴いたわけではありませんけれど(また別の「惑星」も聴いてみたくなりました)。 

とにかくこのメータ/LAPO盤はリファレンスとして一家に1枚置いておいたほうが良いのではないでしょうか。 リマスターされたCDも1000円で出ているようだし、お勧めします。