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バルビローリによるドイツ序曲集

明るく楽しく(戻る

ジョン・バルビローリ指揮ハルレ管弦楽団によるドイツ序曲集。 ちょっとミスマッチかも・・・なんて印象を持ちますけど、いえいえどうして、これがじつに楽しいレコードなんです。
抽象的な表現になりますけど、ヒューマニティを感じます。 サー・ジョンの優しい人柄とハルレ管の鷹揚で暖かなアンサンブル。 「ウィンザーの陽気な女房たち」での息の長いフレージングで艶っぽく歌わせるあたり、とても楽しい気分になりますよ。 「タンホイザー」序曲、これほどまでに威圧感を感じさせない演奏も珍しいのではないかな。 まさしく「愛による救済」ですね。 これはこれで納得するレコードです。

サー・ジョンのファンにとっては、サー・ジョンが指揮しているだけで、どんな曲を演奏しても満足なのかもしれません。 だからクラシック音楽の原理主義者の方にはなかなか受け入れ難いものがあるのかもしれませんが、そこは大目に見て欲しいところです。 逆に、サー・ジョンのファンからしてみると、インテンポでサイボーグのような演奏のどこが面白い、と言いたくなるところもあったりするのですけれど。
まっ、それぞれ人の好み、それをとやかく言うのはヤボというもので、好き勝手に音楽を楽しませていただきましょう。

前置きが長くなりましたが、このアルバムの収録曲。 順を追って説明すると、まずモーツァルトの歌劇「魔笛」序曲。 1959年4月録音とクレジットあります。 構成感をしっかりと持ちつつも柔らかな曲の展開がチャーミング。 気持ちのよくなる演奏だと思います。 これに続くオットー・ニコライの歌劇「ウィンザーのーの陽気な女房たち」序曲。 冒頭にも書いたとおり、息の長いフレージングでかつ艶っぽく歌わせて、サー・ジョン節が堪能できます。 この録音は他の演奏よりも古くて、1957年8月録音です。 そしてA面最後がワーグナーの歌劇「タンホイザー」序曲。 ゆったりしたテンポ、巡礼の合唱の部分なんてまるで噛んで含めるみたい。 オケの弱さを垣間見る部分もあったりしますけど、様式感は崩さずにしっかりと歌わせて、妙に納得してしまう演奏です。 1959年4月録音だそうです。

レコード盤をB面にひっくり返すと、ウェーバーの歌劇「オベロン」序曲が始まります。 活き活きとしたロマン派の音楽はサー・ジョンのお手の物ですね。 堂々としているけれど歌謡性のある聴き応えのある演奏に仕上がっています。 1959年4月の録音。 メンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」も、音の風景画と呼ばれていることがよく判る演奏ですね。 オケの構成も関係あるのかもしれませんが、古典派からロマン派への橋渡し的な曲のほうがしっくりとくるみたい。 感動的な曲の展開に惹きこまれます。 なおこの録音もちょっと古くて1957年5月29日録音(これだけ日付まで記載されています)。 そして最後にはまたワーグナーの大曲、楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕前奏曲。 しかしこちらは「タンホイザー」よりも恰幅の良い演奏となってますね。 やはり威圧感を感じないのは同じですけれど。 1959年9月録音。

テイチクの1,000円盤は金属的な響きがして音が悪い、と言われることも多いのですが(お恥ずかしながらそう誤解していた時期もありましたが)、このレコードはなかなかどうして古い録音ながら、たっぷりとしたアナログ・サウンド。 落着いて楽しめます。 これはテイチクの1,000円盤によるサー・ジョンのディスクの中でもとくに楽しめる1枚ではないでしょうか。