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サー・ジョンのRVW交響曲第8番ほか

共感に満ちて熱い暖かい演奏(戻る

サー・ジョン・バルビローリの指揮によるラルフ・ヴォーン・ウィリアムズ(RVW)の交響曲第8番、エルガー、バタワースの管弦楽曲を収めたテイチクの廉価盤。 このレコードで英国音楽の魅力に触れた同胞の方も多いのではないでしょうか。 作品への愛情を感じさせて、共感に満ち、熱くかつ暖かい演奏の数々ですね。 年齢を経るにつれてしみじみと味わえるレコードかもしれません。

RVWの交響曲第8番。 1955年に作曲され、翌年5月2日にマンチェスターでサー・ジョンとハレ管によって初演されたとあります。 この録音は1956年6月19日とクレジットされていますので、初録音でしょうか。 それはともかく、演奏時間27分という、大作の多いRVWにしては小ぶりなサイズの曲ですが、深みを感じさせる演奏ですね。 重厚なのともちょっと違う。

第1楽章の冒頭、ヴィブラフォンの和音にチェレスタの響く幻想的な開始から主題を探す変奏曲が展開。 あくなき探究心でしょうか、若々しさも感じる精力的な演奏です。 第2楽章、管楽器のみのウィットに飛んだスケルツォ。 ちょっと湿っぽいのが英国的ですね。 第3楽章、今度は弦楽合奏のみによる演奏、叙情的でしとやかな音楽を歌わせる手腕はサー・ジョンの得意とするところ。 そして打楽器が活躍する終楽章、トッカータと名付けられたこの楽章、鳴り物入りで色彩感を感じさせても、やはりウェットな感じを拭えません。 多少録音が古いこともありますけど、開放的で突き放した感じが微塵もしないのは、作品への強い共感なのではないでしょうか。

盤面を返すと、エルガーの曲が2曲「序奏とアレグロ」「エレジー(悲歌)op.58」。 
まずは、重厚な動機と美しい主題が織り成す序奏、そしてアレグロではフーガとなって対旋律として弦楽四重奏が登場。 ヘンデルのコンチェルト・グロッソの様式を現代に生かそうとした試みとか。 弦の旋律の重なりに濃厚な歌を感じさせます。 熱く演奏しても、我武者羅ではない、暖かい眼差しを感じさせる演奏ですね。
エレジーは、そんな暖かな眼差しに満ちています。 音楽家協会の副執事ハドソン牧師への追悼曲とのこと。 深い祈りとともに、柔らかく気持ちを開放してくれるような感じです。

最後は第1次大戦に参加し31才の若さで逝ったバタワースの傑作「シュロップシャーの若者」。
もともとは青春の愛の思い出を歌った歌曲集のエピローグをバタワースが管弦楽曲に編曲したもので、伸びやかで香り高い音楽。 この音楽に、熱い血のたぎりのようなものも感じさせつつ曲を進めています。 繊細で夢見心地な音楽ではあるけれど、今流行りのヒーリング音楽のような芯のない表面的なものにしないのは、やはりサー・ジョンの共感ゆえでしょうね。

久々に取り出したこのレコード、これを買った時には気付かなかったものを多く感じ取れるように思えるのは気のせいでしょうか。 年齢を経るにつれ、しみじみと味わえるレコードかもしれません。 当分これにはまってしまいそうです。