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ヤニグロ/ザグレブ放送響のハイドン交響曲第44番「悲しみ」

弦の響きの美しいハイドン(戻る


チェロ奏者アントニオ・ヤニグロがザグレブ放送交響楽団を振ったハイドンの交響曲「悲しみ」「告別」の入ったレコードはヴァンガードの輸入盤。 値段(300円)とジャケットの写真に惹かれて買ったレコードである。 イタリア生まれのチェリストで、ザグレブ放送交響楽団や彼が創設したザグレブ合奏団アのレコードは、中高生の頃から、キングのバロック音楽のシリーズで時折名前を見かけていた。 またCD時代になってからも、ヴァンガード・レーベルで時折名前を目にはしたが、特段に優れた指揮者というイメージもなく、また購買意欲をそそるような曲を演奏しているわけでもなかったので、いずれも手をのばすことのない存在だった。 そんなヤニグロであるので、今回値段とジャケットの魅力に誘われて気まぐれに買ってはみたものの、しばらく聞きもせずに放置していた。 そもそも、ハイドンの交響曲も積極に聴きたい音楽ではないこともある。 単純なメロディ、ハーモニーがかえって演奏者を選ぶ難しい音楽となっているし、また聴き手にとってもどこかセンスを試されているような感じがする。 そうやって買ってはみたものの敬遠していたが、ここ1週間ほど通勤時間に指揮者アントン・ナヌートの演奏を集中的に聴き返していたなかに、彼の指揮するハイドンの交響曲第44番があり、これがまたなかなか素晴らしい演奏だった。 そんなことがあってようやくヤニグロにも登板の機会が現れたのだが・・・ 針を落としてみると、じつに弦の響きの綺麗なアンサンブルで吃驚した。 ちょっと速いテンポだが、綺麗に旋律をなぞるなだけでなく、響きに厚みと躍動感がある。 快活にするために単に力で押したり走っているのではないし、かといって豊穣な響きで満たされているわけでもなく、生真面目さだけが取り柄の演奏でもない。 いうなれば綺麗な演奏といおうか。 押しつけがましさがなく、時折顔を覗かせる木管楽器やホルンもかなり控えめであって、綺麗な弦楽アンサンブルを聴かせてくれる。 第45番「告別」とのカップリングだが、ホ短調の「悲しみ」で聴かせる快活さのなかに秘められた憂いの表情のほうに心が惹かれる。 終楽章のホルンの呼応もそっけないくらいな単音のくりかえしだが、深刻にならない深遠さを聴くようだ。 各弦楽器の響きを基調にした真摯なハイドンの音楽世界の素晴らしさ、これをようやくヤニグロの演奏によって教えられたような気がした。 そして今度ヤニグロの演奏するレコードを見つけたら積極的に買ってみるつもりである。