安田の部屋へようこそ 〜 クラシック音楽(BQクラシックス)やフロンテクーペ、南沙織など「裕隆の部屋」を中心にした家族のページです。 ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」も始めちゃいました。
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南沙織

南沙織さまは別格ですので、歌謡曲編から独立しました。
(南沙織さま公式ホームページ →
http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/cynthia/top.html

南沙織さまアルバム・リスト (1978年の引退前まで)

17才 (1971)
潮風のメロディ (1971)
純潔/ともだち (1972)
哀愁のページ/Saori Hit Pops (1972)
ギフトパック/南 沙織(1972)
早春のハーモニー (1972)
傷つく世代 (1973)
20才まえ (1973)
ギフトパック/南 沙織(1973)
ひとかけらの純情 (1974)
夏の感情 (1974)
シンシア・イン・コンサート (1974)
南 沙織ヒット全集(1974)
20才 (1974)
南 沙織・ポップスを歌う(1975)
南 沙織デラックス(1975)
Cynthia Street (1975)
南 沙織ヒット全曲集(1975)
人恋しくて (1975)
素顔のままで (1976)
南 沙織のすべて(1976)
哀しい妖精 (1976)
ベストヒット/南 沙織(1976)
ジャニスへの手紙 (1976)
午後のシンシア (1977)
シンシアのハーモニー(1977)
ハロー!シンシア (1977)
シンシア・ラブ (1977)
シンシア・メモリー (1977)
SAORI ON STAGE(1977)
I'VE BEEN MELLOW(1978)
THE BEST/南 沙織(1978)
SIMPLICITY (1978)
THE BEST/南 沙織(1978)
さよならシンシア (1978)

20才まえ (南 沙織) 1973年

全曲、作詞:有馬三恵子、作曲:筒美京平コンビ、しかも構成:有馬三恵子となっています。名盤「傷つく世代」に続く、19才から20才へのコンセプトアルバムでしょうか。 有馬三恵子さんの「19才から20才へ」の詩が見開きジャケット内に書かれていて、アイドルからの歌手への目覚めが感じられるアルバムです。
A面、「いまもあなたが好き/まぶしいおもいでなの」で始まる「
色づく街」はヒット曲ですが、このシングル盤のB面になった4曲目の「秋の午後」もとても素晴らしい歌ですね。 個人的には両A面としてもいいくらい。 いや「秋の午後」を推したい気持ちもあります。 続く5曲目「妹よ」もまた、個人的にも妹を想う姉シンシアの気持ちがよく出ているのでは。 これらに比べるとタイトル曲「20才(はたち)まえ」「港のように」「素顔の朝」はアイドル曲でしょうかね。 ただ「港のように」の後年のじわっとくる歌唱力を感じさせます。
B面、メドレーで
シンシアのテーマから「17才」「ともだち」「純潔」と歌い続き、「哀愁のページ」では曲に乗せたナレーション、そしてまた「傷つく世代」をノリよく歌います。 そのノリの良さを引き継いで「美しい誤解」を歌い上げます。 「このごろの若者は気が知れないと」なんてちょっと青臭い歌ですけどね。 でもラスト、ナレーションで「生きるということはひとり/ひとりと思う事はせつないけど、/だから愛せるのかもしれない、/人や、歌や、人生を、そう思わない/・・・」と続くナレーションはじ〜んときたりして。 そして歌も見事ですね。 ふわっと歌って、推すところはぐっと力を入れ、そしてまたすっと抜く・・歌唱力で聴かせます。 ジャケット写真などアイドルっぽくて可愛いんですけど、内面も洗練されつつある20才(はたち)まえのシンシアが素適です。(2005.6.14)

 

ジャニスへの手紙 (南 沙織) 1976年

1976年12月21日発売。 手元のジャケットには「Golden New Year'77」と書かれています。 確かに引退する前年である1977年は名作「午後のシンシア」「Hello! Cynthia」も出た素晴らしい年だったように思います。 このアルバムもそれらと肩を並べる名作アルバムです。
全12曲のうちA面6曲はジャニス・イアン作曲、B面6曲も洋楽カヴァー曲で構成されていて、英語と日本語の訳詞を散りばめた構成はシンシアらしさがよく現れているように思います。 まず針を降ろすと冒頭、ラジオのオールナイト・ニッポンで収録されたシンシアとジャニス・イアンの電話対談。 ちょっと興奮気味に上ずった会話のあと英語による「
I LOVE YOU BEST / 哀しい妖精」が始まります。 1976年9月発売のシングル、アルバムともに日本語訳詞でしたけれど、さすがに英語の歌も心に染み入ります。 曲は「BACK HOME」「PEOPLE TALK / 輝く瞳」「I'M HOLDING ON 」「ONE MORE TOMORROW / 長い帰り道」「ANGELA / アンジェラ」と続きます。 「BACK HOME」の冒頭と「アンジェラ」は竜真知子さんの訳詞、いずれも素晴らしいのですけど後半英語となり伸び伸びと歌う「BACK HOME」が光っています。 「輝く瞳」「長い帰り道」は中里綴さんの訳詞、いずれも中里さんらしく繊細な女性の心の襞をそっとなぞるような詞をしっとりと歌うシンシアが素敵です。 「I'M HOLDING ON 」ではそっと語りかけるように歌い、そして最後は歌い上げる歌唱力。 いずれもそうなのですけれど、ジャニス・イアンの曲そのものがシンシアにとっても合っているような感じがします。
B面は、I.Tyson「
FOUR STRONG WIND」G.LIGHTFOOT「EARLY MORNING RAIN / 朝の雨」P.Stookey, J.Mason, D.Dixon「I DIG ROCK AND ROLL MUSIC」B.Dylan「DON'T THINK TWICE, IT'S ALL RIGHT」R.Farina「SWALLOW SONG / つばめの歌」B.Dylan「BLOWIN' IN THE WIND」と続きます。 「朝の雨」は比良九郎さんの訳詞、軽快に歌うけれど飛行機で去っていく恋人、その別れを淡々と歌うところが素敵。 「つばめの歌」は中里綴さんの訳詞、ちょっと湿っぽく歌っています。 そしてB.Dylan の曲が2曲選ばれていますけど、「DON'T THINK TWICE, IT'S ALL RIGHT」がいいな。 「BLOWIN' IN THE WIND」は本来もっと強いメッセージを感じさせる歌ですけど、これを丁寧でかつ綺麗に歌っているためか、やや平板に感じてしまいます。 前者は同じように綺麗に歌っていても懐の深さのようなものを感じるのですけれど・・・原曲に対する思い入れの深さの差なのでしょうけれど。 しかしとにかくどの曲、歌も聴き応えを感じるアルバムには違いありません。 (2004.10.24)

 

早春のハーモニー (南 沙織) 1972年

1972年12月21日発売。 ここでの早春とは年始の意味かもしれません。 まだまだアイドルぽい感じはするのですけれど、後年のしっとりとした女性になる息吹のようなものを感じさせる佳作アルバムです。
全12曲中5曲が有馬三恵子/筒美京平のゴールデンコンビによるオリジナル作品、あとは筒美さん作曲による他の歌手のカヴァー曲という構成になっています。 カヴァー曲といっても、どこかで耳にしたかな、という感じの曲なので、オリジナル?なんて思ってしまいがちです(僕もそう思っている時期が長くありました)。 「
ひまわりの小径」(チェリッシュ)、「ギターのような女の子」(佐良直美)、「恋のゆくえ」(新藤恵美)、「夢でいいから」「あふれる愛に」(いしだあゆみ)、「幸せですか」(青山一也)がB面に収録されていますが覚えておられるでしょうか。 あとA面5曲目「あの場所から」(Kとブルンネン)は、1982年に柏原よしえちゃんでヒットした曲です。「白いベンチに 腰かけながら/遊ぶ鳩を 二人で見てた」とTVで唄っているよしえちゃんを初めて見たとき、慌ててこのアルバムを出してきたこともよく覚えています。 カヴァー曲はいずれもゆったりとした感じで、ちょっと幼さは感じますけど、けっこういい感じで唄っています。 オリジナル曲では、すでにヒットしていた「哀愁のページ」は別格として、「早春の港」の原曲になった「ふるさとのように」がへぇ〜って思います。「ふるさと持たないあの人に」や一番の「好きとも言えないし/おたがいに聞かない」は同じですけれど、2番では「愛している時はまごころでいたいの」となり「いつかは私もあの人のいいふるさとになりたくて」と優しい気持ちがちょっと前に出ているような感じでしょうか。 そしてこのアルバムの一番素敵な歌は「魚たちはどこへ」です。 ファンの間でも評判が良いみたいで、公演の時にもよく歌っていたようです。 「春の魚たちはどこへ消えていった」という歌詞はちょっと意味深く、聴いたあとにじんとくるのが残る隠れた名曲だと思います。 そしてこの春の魚、今ならシンシアのことになぞらえてもいいのかもしれません。 (2004.4.25)

 

素顔のままで (南 沙織) 1976年

このジャケット写真(もちろん篠山さん撮影)を見ると当時TVで流れていた秋吉久美子のインスタントコーヒーの宣伝を思い出してしまいます。 ちなみに裏面の写真は、りりぃに似た影のある女性に写ってますね。 そんなことはさておき、このアルバムもよく聴きました。 アイドル路線から離れ、自分の身の丈にあった女性の姿を、ちょっとウェットな声で伸びやかに唄っています。 上質なアルバムです。
シングル・リリースされた「
気がむけば電話して」は、作詩/中里綴、作曲/田山雅充、編曲/萩田光雄。 ビリー・ジョエルのストレンジャーみたいなギターソロで始まります。 とにかくこのアルバムは中里綴さんの詩がとても素晴らしい。 とくにB面トップのタイトル曲の「素顔のままで」(作曲/田山雅充、編曲/水谷公生)から「ふりむいた朝」(作曲/田山雅充、編曲/萩田光雄)、「編みかけの手袋」(作曲/田山雅充、編曲/松井忠重)、「灰になった手紙」(作曲/田山雅充、編曲/萩田光雄)と一気に聴かせてくれます。 またA面には「泣きだしそうな空模様」(作曲/田山雅充、編曲/水谷公生)「近頃二人は」(作曲/田山雅充、編曲/松井忠重)がラインナップされてます。 「大人への階段をはやく知りすぎたから/友と呼べる人までなくした/ああ優しさで/あなた包んでね」(素顔のままで)は恋の歌ですけど、あとはすべて別れ歌。 いずれも心の襞をそっとすくうような中里さんの詩に、シンシアの力まずにすっと抜く歌がマッチしてて、派手さは少ないけれど、巧いなぁ〜って思うんですよね。
なお最初と最後の曲「
プロローグ幸せの予感」「エピローグ未知への想い」は英語の詩の朗読から始まって、この訳詩が唄われますが、これはシンシア作詩。 しっかりとした決意が感じられます。 (2004.2.13)

 

ひとかけらの純情 (南 沙織) 1974年

ヤングのテーマ」と題された一連のアイドル路線のアルバムのなかの1枚。 このヤングという言葉が時代を感じさせますね。 そしてアイドルとして全盛時のこのアルバムはちょっとお手軽な感じで制作されているのが残念です。 ジャケット写真もまた雑誌平凡(まだあるのかな)提供となっているのもちょっと気恥ずかしい感じがします。
さてこのアルバムの内容ですが、A面はシングル・リリースされたタイトル曲の「
ひとかけらの純情」を筆頭にオリジナル6曲構成で、B面は得意の英語を活かした外国カバー6曲構成となっています。 外国カバー曲については「SAORI MINAMI POPS ALBUM」のところに書いているので省略するとして、オリジナル曲のA面6曲全て作詞/有馬三恵子,作編曲/筒美京平です。 いわゆるゴールデン・コンビなんですが、忙しい時期だったせいか楽曲の質的な魅力が乏しく感じるのが残念に思えます。 ただし「いつも雨降りなの 二人して待ち合わす時」で始まる「ひとかけらの純情」はほんとにいい曲だと思います。 そういつも雨降りだったよなぁ、なんて自分の事に照らして想いを馳せ(実際にはどうだったかな…)「何も実らずにいつも終わるのね/(略)/あの恋のはじめの日を/誰かここへ連れてきてほしいの」とシンシアと一緒に口ずさむと遠いあの頃が蘇ってくるような感じがします。 そしてシングル盤ではこの曲のB面になった「透き通る夕暮れ」。 この曲は「ひとかけらの純情」以上の隠れた名曲でしょう。 詩も曲も素適ですが歌もまた一段と巧くなっています。 中でも1番の最後の部分「愛してさよならをして/今もまだ待ちつづけてる/待つだけですべては 行くかもしれないけれど」、そして2番では「別れもいい思い出よ/透き通る夕暮れみたい/透き通る目をして また愛していきたい」とシンシアに歌われるとき、自分の心もまた透き通るような感じがします。 このアルバムは、極論すれば、この2曲だけで充分だと思えます。 (2004.1.11)

 

人恋しくて (南 沙織) 1975年

人恋しい季節には「人恋しくて」・・・ってそのままのタイトルですが、内容も全12曲すべてが別れた人を想う歌で構成されています。 コンセプト・アルバムでしょう。 作品は、作詩/石坂まさお,作曲/五大洋光,編曲/水谷公生、作詩/落合恵子,作曲/筒美京平,編曲/林哲司、作詩/中里綴,作曲/田山雅充,水谷公生、作詞/有馬三恵子,作曲/川口真,編曲/萩田光雄の4チームが3曲づつ提供した構成で、ジャケット裏面には曲名、編曲者、演奏者の順にクレジットされたニューミュージックを意識したつくりになっています。 演奏者も当時のニューミュジック系のバックの有名どころの連中がクレジットされた落着いた雰囲気のバンド演奏です。 なおジャケット内には「20才ばなれ」という8面構成の写真集が付いているのがアイドルの残照でしょう(CD化時には復刻されていません)。
さて、別れた人を想う歌でも色々な形があるけれど、タイトル曲の「
人恋しくて」は中里作品、「暮れそうで暮れない黄昏どきは 」が印象的ですね。このシングルB面になったのも中里作品の「ひとつぶの涙」、「さよならあなた 忘れます」とこちらは訣別の歌です。 次にシングルカットされた「ひとねむり」は落合作品(シングルB面はこのアルバムに収録されていないNHK大阪制作の朝ドラ・テーマ曲「おはようさん」でした)、他の落合作品「想い出のかけら」「ひさしぶりね」はいずれもマイナー調で沈んだ歌唱にホロリとさせらます。 メジャー調でドラマ性があるのが有馬作品の「朝市の立つ町」、「市場には、セロリや秋あじが山なり・・・右左さよならした あなたを思うの」 と忘れがたいシーンが目の前に浮かんできます。 A面1曲目でフェードインしてくる「哀しみの家」が石坂作品、「薄むらさきの陽ざしのいろ・・・」とシンシアのウェットな歌唱が魅力的、途中に入るソプラノ・サックスも印象的で最後に、「愛することは 待つことだけ・・・」そうファンは今もあなたを待っています。 (2003.10.13)

 

夏の感情 (南 沙織) 1974年

今年の夏は冷夏だったけれど、今頃になって残暑というより猛暑といった感じがするこの頃。 そして南沙織さまの夏の音楽といえば、「みんな許してみたいの/過ぎた日々の出来事・・・」で始まる「夏の感情」でしょう。 この曲、アルバムには書いてないけれど、シングル盤には「演奏/キャラメル・ママ」と書かれている。 このノリの良いベースは細野晴臣さん。 凄いバックを従えることもサラリとやってのけてしまう南沙織さまですね。 さてシングルのB面になった「愛の序曲」も有馬三恵子さんの素晴らしい詞が光っています。 これも夏の曲ですね。 「夏になるはじめには/旅にでも行きたいの・・・私 人と別れた/過ぎてみればすべて同じ/堪えられない事など何もないのよ・・・」全て書けないのが残念ですが、意味の深い歌詞が魅力です。 それとインストルメンタルな編曲に耳を欹てるとチェロのソロも聞こえてきます(編曲:筒美京平)。 編曲に注目すると高田弘さんによる「この街にひとり」ではオーボエが要所をささえているのがぐっときますし、「ふたりの急行列車」では矢野誠さん(矢野顕子の前夫)によるファンキーロック調でエレキやハモンドオルガンが面白いところでしょう。 この曲、南沙織さまがじつに伸びやかに歌っているのも印象的です。 そしてA面最後は「バラのかげり」。 この曲もヒットしましたね。 大人の女性に変身するシンシアを垣間見せてくれた歌でした。 
アルバムB面は当時のヒット曲「
心もよう」「結婚しようよ」「私は泣いています」「夏色のおもいで」「ひとりぼっちの部屋」「あなた」を当時としては前衛的な矢野誠さんの編曲にのって歌っています。 懐かしいこれらの歌をシンシアの澄んだ歌声で聴くのもまた楽しいものです。(2003.9.9)

 

I've been mellow/Saori (南 沙織) 1978年

尾崎亜美の「Stop Motion」から「春の予感/I've been mellow」「もどかしい夢」をフューチャーしたニュー・ミュージック傾向を強めたアルバム。 しかし、素直で軽やか、女性っぽくちょっとウェットなシンシアの歌唱がとても魅力的な純粋歌謡曲のアルバムですね。 尾崎亜美、松本隆、松任谷由実の詩なども歌っているけれど、中里綴作詞の「最後の落とし物」が最高でしょうか。 しかしこのアルバムでは(個人的に好きな)中里綴作品4曲よりも、竜真知子作詞の作品4曲のほうが全体的な完成度が高いように思います。 「恋人達の場所」「そっと乾杯」「九月のエピソード」「アンコール」いずれも素適な歌詞ですね。 それをシンシアがそんな女性らしい心のひだをうまくすくって歌っています。 デビュー当時には問題視されていた歌唱力もデビュー7年目では光っていますね。 唯一ロック調の「ジョーのコンサート」、この歌だけはちょっと無理しているみたいな感じを受けますけれど、シンシアらしくないという点では貴重かもしれませんね。 未CD化。
補足)このアルバムをカセットテープに録音するとき、C-50でもダメでC-60が必要だったということでも懐かしいアルバムです。(2003.8.14)

 

SAORI MINAMI POPS ALBUM (南 沙織) 1975年

トップ・オブ・ザ・ワールド/やさしく歌って 南沙織ポップスを歌う」と題されているアルバム。 名作「20才」と「シンシア・ストリート」にはさまれた洋楽ヒット曲のカバー・アルバムで、全曲英語で歌っています。 デビュー時からシンシアのアルバムには洋楽ヒット曲が収録されていましたが、これはそれらの録音を集大成したオムニバス・アルバムです。 普通、このようなオムニバスは、寄せ集めで散漫な印象、といった感じになるのですけれど、このアルバムは実にセンス良く纏められています。 個人的には、隠れた名作アルバム、だと思っています。 収録曲は「トップ・オブ・ザ・ワールド」「やさしく歌って」「小さな恋のメロディ」「木枯らしの少女」「アンド・アイ・ラヴ・ユー・ソー」「ローズ・ガーデン」「カリフォルニアの青い空」「スィート・キャロライン」「君のともだち」「ビー・マイ・ベイビー」「オールド・ファッションド・ラブ・ソング」「愛するハーモニー」 。 いずれも懐かしい洋楽のオン・パレードですね。 これらの原曲がヒットして時代、洋楽ファンでもあったので、オリジナルを聴いています。 でも、このアルバムで素直に(これがとても重要な点でしょう)伸び伸びと歌っているシンシアの歌も原曲の魅力を損なうことなく、シンシアらしさがよく出ていて素晴らしいと思います。 ある意味、シンシアにとっては日本語による歌謡曲よりもこれらポップスを英語で歌うことのほうが表現に自由が効くからかもしれませんね。 またいずれの編曲もオリジナルに近く、自然とこれらの曲がシンシアの歌で蘇ってくることもまた今聴き返すと惹かれる点だと思います。 そしてまた何よりシンシアの歌う英語。 英語が苦手な僕にとってもヒアリングしやすいことが大きな魅力ですね。 単なるカバーにとどまらないシンシアの魅力が放たれているアルバムです。 SBMリマスターのよるCD化済み(「南沙織/やさしく歌って」 SRCL3968)。 (2002.9.30)

 

Cynthia Street (南沙織) 1975年

南沙織さまが1975年にロスアンジェルスで録音したアルバム。 今では誰もが海外録音をやっていますが、今から25年も前では画期的なことでした。 おまけに英語曲も含めた全10曲が書き下ろし、かつシングルカットされた曲もありません。 およそ歌謡曲のアイドル歌手のアルバムとしては異例中の異例なアルバムだと思います。 そして、このようなことをサラリとやってのけてしまっていたのが南沙織さまだったのですね。 さて、A面5曲は安井かずみ/作詩、筒美京平/作編曲のよる作品、B面5曲はアラン・オデイとジョージ・クリントンが作詩、ジョージ・クリントンによる作編曲作品で、両面ともにクリントン(Key)のバンドによる演奏です。 もちろんコーラス、ホーンセクション、ストリングスなどももちろんアメリカ側のメンバーでつけています。 A面に針をおろすと、冒頭の「20才の立場」からちょっとリキが入ったブラックっぽい曲が始まります。 この面はとにかく少しリキを入れた感じで少女からの決別を歌っているようです。 A面最後の「若い旅人」だけがやや歌謡曲調でしょうか。伸びやかに歌っていて日本語の語感としてはこのようなのがやはり合っているような気もしますね。 ちょっと背伸びしているかなという印象を持ちますが、しかし英語で歌っているB面、こちらは実に素晴らしい。 最近ちょっと耳にできないような良質なポップスの世界が感じられます。 しみじみと歌う「Can't Wait to Dream about You」もいいし、「Gifts」ではコールアングレも入って軽やかに歌うシンシア。 シンシアの声質とwood windsは本当によく合いますね。 そしてリズムボックスから入るブラックっぽい「Get it off - Get it on」、言葉が違うせいかノリがA面とはまるで違います。 「Spin Away」もイントロのメロトロンから歌謡曲とはまったくの別世界ですし、ラストのスローバラード「Linger」などうつむきかげんな気持ちがよく出ていて実に素晴らしいと思います。 SBMリマスターのよるCD化済み。 (2001.5.6)

 

傷つく世代 (南沙織) 1973年

南沙織さま初期の傑作アルバム。 ジャケット写真では黄色の服を着せられてサイケな感じがするし、ヤングのテーマ(サウンドドラマ編)という言葉も時代を感じさせますが、内容はすこぶる極上です。 A面は全曲有馬三恵子/作詩、筒美京平/作編曲、B面は4曲を外国カバー曲で占めています。 サウンドドラマとあって、曲の前に波の音や電話の音、ジェット機の噴射音などが入りますが、アルバムトータルとしての作りよりも各歌がそれぞれにドラマ仕立てになっているようです。 デビュー当時は何かと歌唱力の無さを指摘されていましたけれど、ここではそんなことは払拭されています。 どの歌も聴き応えのある歌の力を感じさせます。 まず都会の雑踏(工事現場の音?)から始まる「傷つく世代」、バックのベースギターが少々暴れ気味でワイルドなブラスロック風です。 「忘れんぼさん」ではシンシア得意の英語による電話の会話から始まりますが、ここにオーボエの音が絡むのも見事な編曲です。 夜汽車の音が蒸気機関車だったりするのも年代を感じさせますが、そんな「昨日の街から」では伸びやかな歌とミュートを効かせたトランペットとの絡みが絶妙です。「純情」は「傷つく世代」と同じ演奏でしょうか、ワイルドさがほどよく出ていていい感じです。 波の音から始まるのが「遠い海」で、どこか「17才」風の歌なんですが「あのころの僕、恋さえ知らなかったのに」と珍しく男言葉で歌うシンシアがとても魅力的です。 ドキっとしてしまいます。 そして同じ海の歌「ふるさと持たないあの人に... 」のヒット曲「早春の港」までA面6曲を一気に聴かせてくれます。 B面の外国カバー曲も巧いのですが、これはまた別に書くとしてジェット機の音が前後に入る「愛の花咲く頃」は橋本淳/作編曲。 ホルンの響きが効果的に入って伸びのあるシンシアの歌が素晴らしい作品。 ラストの「あこがれの旅」では曲中にサーキットのエンジン音が入り、コーラスのリバティベルスもシンシアのアルバムではお馴染みですね。 このアルバム、見かけで騙されてはいけない、じつにしっかりした傑作です。 CD化済み。 (2001.5.6)

 

SIMPLICITY (南沙織) 1978年

南沙織さま24才にして引退したときのオリジナル・ラスト・アルバム。 A面を有馬三恵子/作詩、筒美京平/作曲のオリジナル、B面を外国カバー曲としたデビュー当時のアルバム形態がなんとなく懐かしくもありますが、どこか手軽に制作された感じも残っているように思うのは僕だけかな。 しかしいずれの歌も、デビュー当時とは比較にならないほど向上したシンシアにかかっては、いずれの歌もとても聴き応えがあります。 はやり得意な英語で歌う「Good-bye Girl」、情感があふれて秀逸ですね。 自分の心情もこもっているのでしょうか。 そしてこのアルバム全体を通して聴くならば、冒頭(A面1曲目)の「Ms.(ミズ)」では明るくさっそうと自立を歌い、つづく「シンプル・シティー」で、「うぶ声と誰かを弔う鐘の音どこかで今日も響いてとけて... 」と生と死にもさりげなく触れながら、爽やかな一陣の風のようにふっと私たちの前から消えてしまったことを象徴しているのでしょうか。
ちなみに南沙織さまの最後の歌番組となった「ミュージック・フェア」。 ブラウン管より「私はビジネスとして歌を唄ってきましたけれど、歌を聴いてくださった皆さんとは決してビジネスとしてつきあってきませんでした」とのメッセージを我々に贈り、爽やかな笑顔のままフェードアウトされていったことが強く印象に残っています。 そんなことを思い出すラスト・アルバムです(2001.4.14)

 

20才 (南 沙織) 1974年

デビュー3年目。 南沙織さまが20才となってアイドルから脱皮する(個人的に呼んでる)中期の幕開けにもなった記念すべき傑作コンセプト・アルバムです。 冒頭(A面1曲目)「田園交響楽」(作詩:松本隆)のイントロでのモノローグ「二十歳になったと人は言うけど、私は私、今まで生きてきたよう、生きていくしかないし... でもちょっぴり変わったとしたら、ひとりぼっちが辛いことね」からシンシアの世界に惹き込まれます。そしてA面最後の「夜霧の街」(作詩:有馬三恵子)ではシングル盤にはないモノローグ「二十歳という名の駅に立ち、果てしない線路を見ています。 どんな旅が始まるでしょう。 もうここからはぬきさしならない本当の人生という感じです」という決意が語られ、彼女の20才の自立への決意が物語られています。 このアルバムに収録されている「卒業」「青春が終る日」「フラワー・ショップ」など、いずれも失恋の歌は秀逸です。 そしてまたB面では他の歌手のカヴァー曲を歌っていますが、なかでもいしだあゆみの「あなたならどうする」が実に素敵です。 SBMリマスターのよるCD化済み。 (2001.4.14)

 

HELLO! CYNTHIA (南 沙織) 1977年

まずは南沙織さまの隠れた傑作アルバムから紹介します。 シングルで発売された「街角のラブソング」を始め、軽快でさわやかなポップ・ミュージックがこのアルバムに満載されています。  デビュー当時、歌唱力の無さを指摘されていましたけれど、さすがにデビュー6年、このアルバムで聴かれるように、決してきばるようなことなく、軽々と唄いこなす歌の巧さが魅力的です。 「街角のラブソング」のほか、冒頭(A面1曲目)の「黄昏ドライブイン」「青春(はる)の電車」「はじめまして」など、つのだひろの作品が爽やかな魅力に包まれています。 これに対して、「シングル・ルーム」「秋がくるから淋しいのです」「愛ほのぼの」の岡田富美子(作詩),梅垣達志(作曲)の作品はこの年代の若い女性の揺れる心をしっとりと歌っていて素晴らしい作品です。 そして中里綴(作詩),梅垣達志(作曲)による作品「プロフィール」は、壊れてゆく愛の姿をその詩にある「笑いもせず・泣きもせず・ぼんやりと見つめている 」そんなさまを見事に唄いつづっているのがとても印象的です。 アイドルから完全に脱皮し、自分の身の丈で心の微妙な動きを唄える南沙織さまの傑作のひとつです。 未CD化。 (2001.4.14)