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スィトナーの春の祭典

スィトナーの激しく燃える熱い指揮(戻る


ちょっと前、何かにオトマール・スィトナー指揮による「春の祭典」の演奏が凄いと書かれていたので捕獲したのですが、とても驚き、この指揮者に対する考えを大きく変えてしまいました。 この「春の祭典」、指揮者は端正な音楽をするドイツの頑固親父ですし、オーケストラも長い伝統を誇り、シルキーな響きが魅力の老舗オーケストラです。 しかし、この両者が予想だにしない凄い熱演を繰り広げていました。 音切れに曖昧さがなく、場面展開がバシッと決って、ぐいぐい進んでゆく意外な展開でした。 「春の祭典」については、バーンスタインの1958年録音をリファレンスにしているのですが、このスィトナー盤も負けず劣らず血沸き肉踊るような演奏を展開し、完全に参りました。

さて、スィトナーさんについては言わずもがなの旧東ドイツの名指揮者です。 そして僕と同じ世代の人にとってはNHK交響楽団の名誉指揮者としてTVでもお馴染みの指揮者でした(過去形なのが悲しいです)。 1990年頃から体調を崩されて引退状態となっていますが、先年NHK交響楽団が欧州に行ったとき、ドイツの演奏会の楽屋にスィトナーさんが訪れて来られたそうです。 このことがN響アワーで放映されましたし、その後もこの番組でスィトナーさんへの励ましのお手紙を募集するようなこともやっていました。 日本人にとっては非常に馴染みの深い名指揮者の一人であることは間違いないでしょう。

でもそのスィトナーさんの演奏のイメージと言うとどうだったでしょうか。 特に僕たちの世代にとっては、サヴァリッシュさんとともに、ドイツの音楽の先生といったイメージがあるのではないでしょうか。 生真面目だけど、どこか面白みに欠けている・・・ といった感じを持っていないでしょうか。 これはTVでNHK交響楽団をせっせと指揮していたときのイメージが強く残っているからではないかと思っています。 そして個人的にも、グラモフォンから廉価盤で出ていたマーラーの交響曲第1番のレコードを聴き、とてもがっかりした記憶が強く残っています。 これは、たぶんにくぐもったレコード録音のせいだと思いますが(後年、Berlin Classics のCDで聴くと全く違った印象を持ちました)、終楽章のコーダにさしかかったあたりの高揚感がまるで感じられません。 きちんと音楽を流しているけれどまるで感動しない演奏でした。 何度聴いても受け付けることが出来ず、スィトナーは面白くない、と勝手に結論付けてしまいました。 ただし、後年デンオンから出たベートーヴェンの田園交響曲のレコードは、清澄な響きと正統的なアプローチでお気に入りでしたし、ブラームスやドヴォルザークの交響曲全集もドイツ的な構成感をしっかりもった演奏に好感を持ちました。 しかし、真面目でいつも沈着冷静な指揮者だという思いを拭い去ることはできませんでした。

しかし、この「春の祭典」の演奏を聴いていると、スィトナーさんの一面しか見ていなかったのではないか、という思いに強くとらわれます。 冷静に曲を見つめながらも、時としてテンペラメントに激しく燃える熱い指揮者の姿がここにあります。 1922年生まれのスィトナーさんですから、この録音(1964年頃)は40才をちょっと過ぎたころでしょう。 調べてみると、1964年にはベルリン国立歌劇場の第1音楽監督に就任したようです。 向かうところ敵はいない順風満帆。 まさに脂がのろうとしているときではないでしょうか。 とにかくティムパニの激烈な強打、金管の咆哮、金切り声をあげるかのようなフルートなどがとても印象的な「春の祭典」です。 特に第2部の後半など凄まじいものがあります。 この演奏を聴いてからというもの、スィトナーさんの演奏を聴くたびに、これまでとはまた違った部分を見つけようと耳とそばだててしまいます。

edelレーベル(Berlin Classics の亜種?)のCCC(Corona Classic Collectin)