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マズア/ゲヴァントハウスの「スコットランド」「イタリア」

質実なメンデルスゾーンの世界(戻る


ゲヴァントハウスのオケはクルト・マズアの時代になって面白くなくなった。
コンヴィチュニー時代からの相変わらずの渋い響きをしているのだが、どこか芯が抜け、精彩を欠くような演奏なのである。 旧共産圏時代、マズアとともにこのオケが来日したとき、かつていぶし銀と言われたこのオケの音色だが、それは単に楽器の古さによる洗練されていない響きではなかった、というようなことを言われていたことを思い出す。 またクルト・マズアのことをフルト・マズイなんて言う人もいて、妙に納得したものだった。

しかしこのマズアとゲヴァントハウスのコンビで唯一好きなのが、このメンデルスゾーンの交響曲である。 ゲヴァントハウスはメンデルスゾーンゆかりのオケであるからだろうか、じつに生気溢れる演奏を聴かせてくれる。 マズアでは唯一といってよいお気に入りのCDである。

スコットランドやイアリアを標題音楽としてムーディに聴かせるのは、巧い指揮者とオーケストラになるとお手のものであろう。 だから逆にカンテルリがイタリアで聴かせる澄み切った青空のようにどこかを削ぎ落としたような演奏にもとても魅力を感じる。 しかしこのような演奏には、奥深さや慈しみのようなものはあまり感じられない。 メンデルスゾーンはひたすら楽しく明るく演奏すれば正解、そんな気さえする。

しかしゲヴァントハウスにかかれば、メンデルスゾーンがベートーヴェンに続く世代であることを強く感じさせられる。 これが何よりの魅力なのである。

このCDでも、ゲヴァントハウスらしく弦楽器を主体にした響きの中から管楽器が顔のぞかせるいつものスタイルである。 しかし、いつもなら響きがこもったり、フレーズの切れが曖昧だったりするのだが、ここでの演奏には生気を強く感じさせる。 オケのやる気、それが勝っているからなのだろうか。

スコットランドにはコンヴィチュニーとの演奏もあるのだが、こちらは遅めのテンポ設定をとり、ひたすらに骨太である。 そして噛んで含めるような印象を持っていただけない。 しかしマズアのは、その点かなり現代的な処理が目立つ。 速度も速めで、響きが整理されていて、もたれるようなところがまるでない。 聴きやすくしているのだろうが、演奏の主体は弦楽器。 これがしっかりと握っている。 しかも重心を低くとり、各パートがメンデルスゾーンの世界を織り成しているかのよう。 質実な風景画の面持ちである。

そしてイタリアもまた浮ついた勢いで流されることのない演奏に感嘆させられる。 ことに第2楽章における主題提示の裏、ここでコントラバスをくっきりと刻ませて演奏させているのが印象的である。 ライナーによると、これは巡礼の歌であるとのこと。 なるほどと唸らせる。

マズア嫌いな人も多くいるだろうし、僕もまたそうなのだが、これは唯一お勧めできるマズアの演奏である。

日本ワーナーBEST100クラシック No.12 定価\1,000円