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グリーンユース・オーケストラ2000 大阪公演

情熱の迸る熱演戻る


グリーンユース・オーケストラ2000 大阪公演
2000年4月25日(火) 19:00 ザ・シンフォニーホール

斉木由美:扉〜オーケストラのための(委嘱世界初演)
マーラー:交響曲第9番

指揮:金聖響 チェレスタ独奏:藤島啓子

大熱演のマーラーの交響曲第9番。 特に第3楽章以降の集中力は凄まじく、息もつかせぬ演奏だった。 そして第4楽章のピンと張りつめた緊張感と、その消え入るような終演の余韻から続く長い長い沈黙... 実に素晴らしかった。 ここにこの素晴らしい演奏を聴かせてくれたグリーンユースオケの皆さんに感謝したいと思います。 ご苦労様でした。

グリーンユース・オーケストラは、関西の学生オケや音大生をオーディションで選抜したとのこと。 この曲をやりたいメンバーが集められ、昨年10月から練習していたというマーラーの交響曲第9番。この指揮者がマーラーには特に強い思い入れがあるという金聖響さんとあってはこれは絶対に聴き逃せない。 そんな期待を強くもって会場に向った。
演奏前、舞台の上は人・人・人... オーケストラは対向配置。 コントラバス10本、チェロ12本が舞台左隅から指揮台に向って楔を打ち込むように並んでいたのが非常に印象的であった。
さて、第1楽章の冒頭の深いため息から、ことのほか思い入れの深さが客席に響いてくる。 一音一音に意味を持たせたような深い音楽。 しかし曲が進むに連れてそれが情熱のほとばしる熱い音楽に変わってゆく。 常に熱く、また全体的にはテンポが大きく変動したりもするけれど、音楽の骨格が揺るぎ無いため全く違和感がなく聞き手に入ってくる。
特に圧巻だったのは第3楽章。 速いテンポで始まったが、それが後半また更に速くなり、狂ったように走り回るがオケは乱れない。 それだけでも見事なのだが、それも単に指揮者について行っているだけではなく、各自が自分達の音楽を一生懸命に表現しようとしている姿がそこにあった。 それはとても感動的だった。
第4楽章はこの緊張感が持続されたまま消え入るようなフィナーレ... そして長い長い沈黙... 本当に素晴らしい演奏会だった。
絶賛ばかりもナニなので、ヤボを承知で言わせてもらうなら、第1・2楽章でホルンがもうちょっと安定していたら... ということは気にしないとしても、このマーラーは若さと情熱が120%の熱演だと感じた。 適切な言い方ではないと思うが、体育会系で汗をいっぱいかいたようなマーラーではないだろうか。 会場を後にしたとき、ぐったりと疲れていたのは、このような若さにずいぶんとあてられたのかもしれない。 そういうこともあってか、個人的には2月20日の黒岩さんと芦屋交響楽団のマラ9の方が人生の辛酸も感じられ、自分にはしっくりきた演奏会だったように思う(芦響のマラ9の第4楽章、黒岩さんの唸り声が2階席まで届いてきており、こちらも入魂の大熱演だった)。
これは単純な受け手としての許容量の問題であり、決してどちらかが優れているとかを言っているのではない。 これを読んでくださる方は誤解なさらないよう。

なお、これに先だって演奏された斉木さんの新曲。 友人に言わせると現代版「死と変容」とか、また別の人は、ここ数年に聴いた新作の中では一番気に入った曲の一つ、と言われている。 それを否定するつもりは毛頭ないが、これを理解する力が自分になかったことは事実。 これが一番の問題なのだが、オーケストラから出てくる音がどこかせせこましく感じられ、聞き手としての余裕が持てなかったこと。 何度か繰り返し演奏され、繰り返し聴くことにより、この曲自体が持つ世界の広がりももっと大きくなると強く感じた。 もう一度どこかでやってくれないだろうか。

最後に、金聖響さん、グリーンユースに参加された皆さん、素晴らしい演奏をありがとうございました。 皆さんの今後の活躍に期待しています。