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トヨタ・ミレニアム・コンサート 大阪公演

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トヨタ・ミレニアム・コンサート 大阪公演
2000年 4月26日(水) 19:00 ザ・シンフォニーホール

トヨタ・ミレニアム・コンサートのための前奏曲「イントラーダ」(*1)
ロッシーニ:「セヴィリアの理髪師」序曲 (*1)
ロッシーニ:「同上」より、アリア「今の歌声は心に響く」 (*2)
モーツァルト:「後宮からの誘拐」序曲 K.384 (*1)
モーツァルト:「同上」より、アリア「どんな拷問が私を待ちうけていようと」(*2)
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K.216 (*3)
R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」op.40 (*4)

(*1)トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン
(*2)トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン 独唱:エヴァ・リンド
(*3)トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン 独奏:神谷美千子
(*4)指揮:小林研一郎
演奏:名古屋フィルハーモニー交響楽団 with トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン

連チャンのザ・シンフォニーホール。 前日の身体の疲れは残っていたが、今回はそれを癒すような心地よい疲労感に変わった演奏会だった。 前日が若者の世界ならこちらは大人の世界。 十分に堪能させてもらった。

前半のロッシーニ「セビリア」とモーツァルト「後宮」は余分やなぁ... と思っていたけど、これらはウィーンフィルのメンバーを主体とした30名弱の特別編成の室内楽。 指揮者なし。
しかし、自分の身体のリズムで合奏している。 まるで上質なサロン・ミュージックのようだ。 これは絶対に... と言って良いほど、練習を積んで出来るようなものではないように思う。 当たり前のことかもしれないが、オケの皆さんはパートリーダを見て、パートリーダは隣のリーダやコンマスを見て合わせている。 これが手に取るように分かる(座席は左サイドのLD10)。 これが練習どおりに合わせようとして合わせているのではなく、笑みも見せながらの自然体での合奏であるところが簡単には出来ないところだろう。 オーボエ2ndのレーマイヤーさんなど、キョロキョロとしては始終笑っている。 この人、ベームさんと来日したVPOの75年の公演ではソロを担当していたとか... このような人が脇を固めているとは思ってもみなかった。

歌は、エヴァ・リンドさん。
ブロンドでスレンダーな超を付けても余りあるような美人。 じつに柔らかい声でオケの音色にマッチしていた。 ただ最初は喉が温まっていなかったせいか、またサイドで聞いていたせいもあってか、直接的な声よりも反響音がよく聞こえてきてアレ... と思ったのだが、2曲目のモーツァルトでは良い声を堪能させてもらった。 しかし、この1曲目で吃驚したのだが、この人の声は指向性がいいのだろうか? 舞台の上で歌いながら、ちょっと顔の向きをかえると反響音も見事に変化していた。 真っ直ぐによく通る声なのだろうか。 よく通るが、これが決して耳障りになるような声質ではない。 「透る」と書くほうが良いだろうか。 そしてオケの音色に見事に合わせた柔らかい声が素敵だった。 当然のことながら発音などを気にすることなく声も自在に伸び縮みするし、よく転がる。 本当に心地よい時間が流れていった。 もっと聴きたかったし見たかった。
ヴァイオリン協奏曲の神谷さんもコンマスを見ながらの演奏。
このメンバーをバックにしてのソロもキツイとは思うが、音的には見事に溶け合い、ソロ+伴奏ではなく、合奏となっていたのが良かった。 しかしいかんせん微妙なリズム感が違う。 コンチェルトだから当然なのだろうが、このオケのコンマスでこの曲を聴きたい... と思ったことは事実。 このオケのコンマスはVPOコンマスの一人で、たぶん一番若いシュトイデさん。 1971年生まれとのこと。 神谷さんの出来は良く、またオケによく合った良い音を出して頑張っていたのだけれど、どこか容易に乗り越えられない壁があるように思えた。 このメンバーでは仕方ないか。

さてメインの「英雄の生涯」。
名古屋フィルに先の演奏には参加していなかったトロンボーン奏者などマスター・プレイヤーズのメンバーをフルに加えた4管編成。 前日に引き続き舞台の上は人でいっぱい。 マスター・プレイヤーズの人たちは、そのままの楽器で合流。 ラッパはロータリだし、ホルンはウィンナ... これらが通常のピストン式のトランペットやフレンチホルンに混じっている。 ソロはマスター・プレイヤーズの人が独占、弦楽器も前プルトはマスター・プレイヤーズ。
指揮はコバケンなので、ほとんど想像どおりの盛り上げ方。 ただやはり混成メンバーでの練習不足なのか、また楽器の違い・奏法の違いがあるのかわからないが、一丸となって押し切るような(前日のマラ9のような)感じはなく、ちょっと雑然とした感じだった。 聴いているこちら側もマスター・プレイヤーズの面々がどんなソロを聴かせてくれるかに注力していたこともあって、曲に対する集中力を欠いていたことも事実。 そんな中、やはり光っていたのはコンマスのシュトイデさんの美音だろう。 どこまでも優しく綺麗なソロ・ヴァイオリン、それがピアニッシモのまま引っ張っても少しも音型・音色が崩れないのは実に見事。 素晴らしい。

9時半まで少々長かったが、その長さを感じさせない大人の音楽をたっぷり聴かせてもらった演奏会だった。