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京都大学交響楽団 第167回定期演奏会

オケ全体に漲る活気が素晴らしい戻る


京都大学交響楽団 第167回定期演奏会
2000年6月24日 17:00 吹田メイシアター大ホール

ブリテン:歌劇「ピーターグライズム」より 4つの海の間奏曲
ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」より 前奏曲と愛の死
ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 作品67 「運命」 (ベーレンライター新版)

指揮:篠崎 靖男

ISO9001審査の精神的・身体的な疲れがどっと出てきたので、行くのを止そうか、と思っていたけれど、オケ全体に漲る活気で、こちらも元気つけられたような演奏会だった。

会場の吹田のメイシアターはほぼ満員だったのではないだろうか。 1階席の前3列を除き埋まっていた(2階席は確認せず)。 いやぁよく入るんだな... と感心したしだい(ここがホームグランドの吹田市民交響楽団なら6割くらいなので)。

さて、今回の狙いは、なんと言ってもベーレンライター新版による「運命」。 ジンマンのCDはアテにならないので、いったいどんなのだろう、という興味だったのだが、聴感上の違いは全くわからなかった。 冒頭のフェルマータを短く切ってはいたけれど。
オケは14型、この曲のみ対向配置だった。 僕の席は会場の後ろ3分の1のところで右隅から3つ目だったこともあり低弦の不足は感じなかったが、反対の左隅ではほとんど聞こえなかったそうである。 そのせいか、息せききって走るという感じはあまり持たなかったのだが確かに第1楽章は速かったように思う。 ちょっと走りすぎたせいなのか、ここで長々とチューニング。 またこれがちょっとぎこちなくって、ちょっと水を差されたような感じを持ったのだけど、結果的にはこれが良かったかな。 第2楽章から音楽にずいぶんと落ち着きが出たように思った。
オケでは、特にオーボエと中心として木管楽器群が巧かった。 また音色も素晴らしかった。 それにホルンもいい音をタイミング良く出していたのは見事だったと思う。 弦楽器群も各パートがよく訓練されていて、第3楽章でゾクゾクってくるほどだった。 オケ全体が奮闘しており、 漲る活気がストレートによく出ていた熱演、といってもいいと思う。
ただ弦楽器の音量が大きいので、ベーレンライター新版の狙いであったはずのベートーヴェンが作曲したときに思考したであろう響き、という感じはせず、どことなく19世紀的ですらあったような感じだった。
ところで以前、ベーレンライター新版による「田園」を本名徹次/大阪シンフォニカーで聴いたことがあるが、これは「精密機械につき取り扱い注意」みたいな細密画的な音楽だった。 また弦楽器も古楽器奏法を使っていたこともあり、玄人受けしたかもしれないが、一般には感動の薄いものになっていたように思う。 しかし、 今回の運命は、「やっぱりベートーヴェンはいいよねぇ」などとにこやかにお喋りしながら会場の後にされる方を何人か見かけたほど、ドラマティックに盛り上がっていた。 さて、わざわざこの版を利用した狙いは何だったのだろうか... んんん???

この篠崎さんという指揮者。 1968年生まれだそうで今年の5月にシベリウス国際指揮者コンクールでも2位になったとか。 分かりやすい棒だったように思うが、緻密に鳴らすという風ではなく、曲を構成的に組み上げてクライマックスに結びつけ、思い切りよく、ダイナミックに鳴らすという感じだろうか。 両手を大きく広げ、反り返るようにして天井を見上げるような場面がどの曲にもあった。 集中力は素晴らしい人だと思うのだが、裏をかえすと遊びが少ないってことのようにも思う。 ただ運命で遊ぶのは100年早いのかも?

なおブリテンのピーターグライムズの4つの海の間奏曲は、冒頭の弦楽器の音がちょっと堅いような綺麗な音で吃驚した。 しかしただなんとなく単調に進んで大団円で終わったような感じもしました。 が、この曲は初めて聴いたのでこのくらいで...

ワーグナーのトリスタンとイゾルデの間奏曲と愛の死も弦楽器が巧かったように思う。 オーボエの音色もよかった。 ただ、どろどろとした愛の世界の音楽がやたら綺麗にサラサラと流れたようにも思う。 健康的で見とおしの良い音楽だったのは学生オケだから当然なのであって、予習でクナッパーツブッシュのCDを聴いたほうが悪かった、そんなところだろう。