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大阪シンフォニカー フェスティヴァル名曲コンサート13

野村さんのチェロがすすり泣く戻る


大阪シンフォニカー フェスティヴァル名曲コンサート13
2000年7月16日(日) 18:00 フェスティヴァルホール

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104
ビゼー:歌劇「カルメン」演奏会形式(抜粋・日本語版)

独奏:野村朋亨(Vc)
ソプラノ:六車智香 メゾ・ソプラノ:田中友輝子
テノール:山本裕之 バリトン:田中勉
合唱:大阪シンフォニカー合唱団(合唱指揮:谷幹夫)
指揮:牧村邦彦

今回の演奏会の目玉は、大阪シンフォニカー特別主席であり、熱血チェリストとして髪を振り乱しての熱演で有名な野村さんのチェロであろう。 ドヴォルザークのチェロ協奏曲で、大阪シンフォニカーの木管楽器群と息のあった演奏を期待して出かけた。
野村さんのチェロが文字通りすすり泣き、大阪シンフォニカーの木管楽器群と息のあったチェロ協奏曲の佳演、カルメンは日本語上演ながらテノールの山本さんの表現力が光っていた演奏会であった。

チェロ協奏曲は、冒頭のクラリネットによる主題はほの暗く始まり(ソロは原田さん)徐々に明るさを持たせてオケの全奏となって力強いチェロの独奏に結びつけた。 さすがに牧村さんの伴奏は安心して楽しめる。 第2主題の細田さんのホルンも美しく、クラリネット、オーボエに引き継がれていくあたり大阪シンフォニカーの本領発揮(一部ではいつも熱演の大阪シンフォニカーのレッテルが貼られているようだが、木管楽器群の素晴らしさはこのオケの伝統である)。 オケの印象ばかりになってしまうが、野村さんもこれに応えての熱演。 特に第2主題が美しい。 野村さんについて全般的に思ったことだが、速いパッセージよりもこのようなしみじみとした部分に技量が冴えるようだ(1日2公演なので疲れていたのかもしれませんが)。 ただ視覚的なことなのだが、舞台上の感極まった野村さんの姿を見ていると、どこか演歌のよう。 泣きの表情とメロディーが重なってしまう。 歌を目的に来られたおばさま方には(失礼)ウケていたようだが... オケの中での熱演とは違って、一人ひな壇の上ではちょっと表現過多な感じがした。
第2楽章も第2主題、義姉のヨセフィーネへの思いを綴ったといわれる歌曲「私に構わないで」の提示からフルートとの絡み、オーボエとの絡みが美しい。 そして、ここからカデンツァ風の第3主題の変奏でチェロは声高になったあたりの深々とした響きが素晴らしく、この後の木管楽器群と寄り添うような穏やかなコーダも聴きものであった。
フィナーレにほぼ間髪を入れずに突入した牧村さん。 ダンダンダンと引き締まったコントラバスが響き渡る。 これに応じてチェロによる主題の提示も力強く解放された響きであったが、その後の展開部ではチェロがオケに埋没してしまいがちだった(楽器の持つ特徴だから仕方ないとも思える)。 クライマックス前のヨセフィーネへの追想でも野村さんのチェロはよく泣いていた。 そして力強いコーダで締めくくられての終演、ブラボー。
野村さんは熱演であったが、見逃せないのは牧村さんの伴奏の巧みさであろう。 強弱自在であり、ソロの目立つ部分ではスッと音量を下げてソロを引き立て、木管楽器とそっと寄り添わせもするが、オケだけの部分では自己主張を通す。 単なる伴奏だけではなく、曲を曲として存分に楽しませてくれていた。

カルメンは演奏会形式による日本語版の抜粋。 ということで、小難しいことを考えずに楽しんでください、というであろうが、原語上演であれば何語であっても理解できないので声を音として楽しむのだが、日本語なので微妙に表現にひっかかってしまう。 これがかえって残念な気がした。
いつもながら細かなことは分からないが、全般的に言って、テノールの山本さんが抜きん出ていたように思った。 バリトンの田中さんはなぜか声が透らないし、メゾの田中さんはカルメンなのだがどこか上品な感じがしたし(日本語が良くないのかもしれない)、六車さんはやや張り切りすぎだったのではないだろうか。 一人譜面を見ながら歌っていたせいか、堂々としすぎていて、らしくない感じがした。
さてテノールの山本さんだが、第1幕の六車さんとの二重唱こそ六車さんの気迫に圧されたのかやや声量が乏しいように感じたのだが、第2幕の「花の歌」ではいい声であった。 これがよく伸び縮みしていて立派だと思ったし、第4幕のフィナーレの部分では気弱さが実によく表現されていたように思った。 熱演だったと思う。
オケはさすがに牧村さんの的確なサポートとソロのメンバーの好演によりよくまとまっていたが、合唱がやや紋切り口調で堅さが感じられたのが残念だった。 オペラはとっつき難く感じていることもあり、この程度の印象しかありません。

全般的に今回の演奏会は、肩肘張らずに楽しんでください、という企画だったようにも思うのだが、このように聴いてしまっては楽しめたかどうかは???であった。 聴く側の問題でしょうね、きっと。