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大阪シンフォニカー 第12回ひまわりコンサート

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大阪シンフォニカー 第12回ひまわりコンサート
2000年12月12日(火) 19:00 いずみホール

岡田佳子(S):モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」から「愛の神よ照覧あれ」「楽しい思い出はどこへ」
田中惠津子(S):モーツァルト/歌劇「後宮からの誘かい」から「あらゆる苦しみが」
原田仁子(org):ヒンデミット/オルガン協奏曲 [日本初演]
太田郁子(S)、黒江薫(MS)、角地正範(T)、東卓治(Br)、吹田市民合唱団:モーツァルト/レクイエム K626 [バイヤー版]

指揮:本名徹次

久しぶりの本名さんの指揮。 モツレクがバイヤー版なのがいかにも本名さんらしいプログラムでもある。 例によってオケは対向配置。 またヴァイオリンも時折バロック奏法が聞かれた。 本名さんらしくきちんと交通整理された音楽、オケも合唱も熱演。 すべて期待どおりなのだが、なんだかあまり嬉しくない。 決して悪くないし手抜きも無いのだが、演奏する前からなんとなく予測していたとおりなのである。 もう少し期待を裏切って、おおっ、というようなものを感じさせて欲しかったなぁ。 これってやっぱり期待はずれってことなのか。 こちらの満足度のレベルが高すぎたこともあるのかもしれない。

岡田さんのアリア2曲。 冒頭にちょっと地声が出たりして少々緊張気味だったのだろうか、後の曲のほうが良かったように思う。 全体的に軽い声質で少々ザラついても聞こえたのはノドが温まっていなかったからだろうか。
田中さんのアリア。 生真面目、そんな印象であった。 声に余裕というか響きにもう少し膨らみが欲しい、そんな気がしたのも一発勝負だからだろうか。
ここまでオケも指揮棒なしで振る本名さんの指示どおり場面転換の鮮やかな音楽を聴かせてくれたが、全体的に少々響きが厚くなっていたようだ。 まろやか、と言えなくもないのだが。 木管アンサンブル、バブアゼさんのソロも巧いのだがモーツァルトの閃きのようなものが欠如している。 もうちょっとオケを絞り込んで室内楽的にしてもよかったのではなかったかな。 手抜きはないのだが、やはり伴奏なので練習不足、そんな感じもした。
本邦初演となるヒンデミットのオルガン協奏曲。 今回の期待のひとつでもある。 始めて聴く曲であるし、こんなことを言うと叱られるのかもしれないが、ソロ・オケとも熱演ではあったが、練れていない、そんな印象を持った。 曲そのものとしては、プログラムにも書かれているように、繰り返し聴いてみたい、そんな感じがした。 4楽章構成で約30分、冒頭は足操作のオルガンの低い響きが流れ、これにチェロ、コントラバスがかぶさって不安な響きが会場を支配する。 ざっくばらんに言って全体を通してドラキュラでも出てきそうな音楽というのが分かりやすいか(余計に分かり難い?)、そんな印象であった。 ただ曲のせいか奏者のせいかわからないが、オルガンの響きが薄く感じられた。 ことに第2楽章のカデンツァ(?) は聴かせどころと思うが、パイプオルガンらしい底鳴りに乏しかったのはやはり奏者の余裕が無さではないだろうか。 また第3楽章のカデンツァ(?) でも同様に若干音のつながりに自然さをやや欠く面や、急いで腰をずらすためにイス(?)が鳴るのか、ドンドンという音楽には関係ない音も聞こえたりした。 固唾をのんでオルガンの熱演を聴く場面でもあり、かなりテクニック的に難しい部分には間違いはないのだが、ちょっとハラハラしてしまった(べつに破綻しているわけではなく熱演であっただけに惜しいなぁという感じである)。 伴奏は現代物を振らせると一流の本名さんであり安心して聴けた。 的確な指示が行き渡り、見事に交通整理されている。 安定感・統率力だけではなく第2楽章のエンディングや、第4楽章の冒頭のトッカータ風の場面など実にカッコ良く決めてくるあたり、さすがである。 期待どおりの熱演である。 本名さんで聴く現代音楽は始めて聴く音楽で耳馴染みがなくても聴きやすくなるから不思議だ。 たぶんに本名さんの曲への共感や愛情が注ぎ込まれているからだろう。
メインのバイヤー版のモツレク。 この日のために本名さんも好きだというアーノンクール指揮のバイヤー版のCDで予習した。 この日の演奏は、アーノンクールのような鋭角的なものではなかったが、キレ味の良い禁欲的なモツレクであった。 個人的にモツレクはリヒターを筆頭にバロック的な演奏が好みであって、この日の演奏にもそれを期待していたが、まさに期待どおりであった。 冒頭の合唱が乱れたのは実に残念だったが、キリエではリズム感が充分感じられ畳み掛ける迫力もあったし、サンクトゥスでの輝かしさも素晴らしかった。 しかしコンフターティスのように冒頭の速度についていけない男声合唱、この後も女性合唱も含めて勢いだけで押し切るのではない場面での表現力が乏しく自信なさげに聞こえる場面もあった。 総じてアマチュアらしい、といえばそれまでなのだが。 ソロについては、ソプラノの太田さんが好調であった。 冒頭のレクイエム、トゥーバ・ミールムなど滋味ある声がよくコントロールされていた。 他のメンバーにも言えることだが、レコルダーレではやや教科書的にきちんと歌いすぎかなぁ、と個人的には思ったのだけど、4人のなかではちょっと抜けていたと思う。 トゥーバ・ミールムではソロの4人が聴けたわけだが、バスの東さんはよく透る声だが若干深みに乏しい、テノールの角地さんも透る声ではあるがコントロールが行き届かない面があったようだ。 メゾの黒江さんはやさしい声だが教科書的なうたいぶりであるように感じた。 4人とも同じような声質で歌っていたのは良かったが、悪く言うとどんぐりの背比べかなぁ、そんななか太田さんの巧さが目だっていたように思う。 オケは、アリアの伴奏とはうって変わり、冒頭のバセットホルンとファゴットからタイトで洗練された響きであった。 パート間の分離もよくきちんと統率された音楽で魅了させる。 ディエス・イレでのトロンボーンの言葉にしがたい良い響き、サンクトゥスでのトランペットとティムパニの輝かしさ、ホスティアスではバブアゼさんが身体をくねらせながら軽やかに弾く姿などが印象的であった。 全体的に刈り込んだ表現なのだが音楽の中に熱が帯びているのがシンフォニカーらしさであろうか。 内にこもるような熱演であったと思う。 鳴らすだけ鳴らすシンフォニカーらしい熱演ではなかったこともあってブラボーはなく、そのためか終演後しばらく間をおいた拍手があった。 全体的にいかにも本名さんらしい音楽であって、個人的には好みの音楽であった。
しかしこの演奏会、総じて演奏前に期待していたとおり進行していった。 冒頭のアリアから、オルガン協奏曲、モツレクでの合唱・ソロ・オケ、みんな演奏会前に予測していたとおりの出来なのである。 期待どおりといえば期待どおりであるのだが、どこか満足感に乏しいのはやっぱり期待はずれなのかなぁ、とちょっとクビをかしげながら帰路についた演奏会であった。