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奈良フィルハーモニー管弦楽団 特別演奏会 宝くじコンサート

意欲的なコンチェルト・上品な演奏戻る


奈良フィルハーモニー管弦楽団 特別演奏会 宝くじコンサート
2001年1月13日(土) 17:00 奈良県文化会館国際ホール

石井眞木:打楽器とオーケストラのためのアフロ・コンチェルト 作品16
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
(アンコール:サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン)
ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95 「新世界より」

小川真由子(perc)
岩谷祐之(Vn)

指揮:渡邊康雄

宝くじの収益の助成を得て実施されるため宝くじコンサートと銘打たれている。 独奏者も奈良ゆかりの方々だが、若いながらもコンクール入賞歴も華々しい実力者である。 そして実際にその経歴に裏打ちされた確かな技量をいかんなく発揮、とても意欲的な演奏が繰り広げらた。 特に小川さんの石井眞木のアフロ・コンチェルトが素晴らしかった。 岩谷さんも安定感のある演奏で将来が楽しみである。 そして渡邊康雄氏に率いられた奈良フィルも的確なサポートぶりでこれらを見事に支えていた。 メインの新世界はサラブレッド渡辺氏らしく、とても丁寧な曲つくりで気品溢れるものであった。 非常に充実したコンサートであった。

石井眞木のアフロ・コンチェルト。 タイコのリズムは人々に不思議な郷愁を憶えさせるものだが、小川さんはこの曲を非常にシャープにかつエネルギッシュに演奏していた。 初めて聴く曲であったがとても意欲的で充実した演奏で素晴らしかった。
曲の前半は各種パーカンションを駆使し、タイトな響きに内包されたリズム感が非凡な才能を感じさせた。 そして中盤のマリンバの独奏からオケの打・管・弦楽器が徐々に参戦し、タンタン・タンタンタンのリズムを執拗に繰り返してマリンバに対立するあたりの高揚感も素晴らしかった。 こののち突如木のガラガラのようなものをかき鳴らしてマリンバを後にパーカッションに戻る。 パーカンションを連打しオケに対抗するあたりなど緊張感がまるで途切れない。 逆にどんどんと惹きつけられてしまった。 更にパーカッションの中から鐘の音が合図となってオケがまた動きはじめ、ここで渡邊さんが左手を高く挙げて指で3・2・1と指示を繰り出し、先のリズムをまた執拗に繰りかえす。 オケもまた大団円で全力投球。 オケの大太鼓の響きが加わってクライマックスとなる。 この間約25分。 現代音楽ではあるがどこか郷愁を感じさせる感動的な演奏であった。
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、安定感のある誠実な演奏であった。 やや堅さが取れなかったためか、華に欠けるようにも思えたが、第3楽章にきてずいぶんと艶ものってきたように思った。
第1楽章の冒頭はやや堅めの音であったが、オケがちょっと重い音あったためか、やや線が細いように思った。 カンデンツァはちょっと遅めだったろうか、ふっと息をのむようなアクセントをつけていたのが印象的。 このあとオケが抑制のよく効いた的確なサポートにのって熱のこもった演奏となった。 第2楽章も甘さや抒情性よりも熱気を秘めたような美しい演奏であった。 第3楽章の前にチューニングをしたせいか、音に艶がのったように思う。 ただここは一気にアタッカで入って欲しかったようにも思うがいたしかたないところであろう。 オケのファゴットやフルートとの呼吸もよく合っていたのも印象的。 随分と堅さがとれたようだ。 が反面ちょっと力みも感じられる場面もあったが終始誠実にひたむきにこの曲を演奏していたのは立派である。 演奏後、やや興奮気味に舞台袖にひっこんだのもどこか初々しい感じがした。 将来が楽しみな奏者である。
アンコールのツィゴイネルワイゼンも入念なチューニングを行っての演奏。 ややくすんだ感じのするやや淡色の演奏だったろうか。
新世界は、指揮者の渡邊さんのもつ気品と奈良フィルの特質のようなものがマッチし、熱演となったが、余計な汗はかかない上品さを伴った演奏であった。 木管楽器群のアンサンブルが好調であり洗練された演奏であった。 しかしその反面ややヴァイオリンが薄く、弦楽器がやや拡散気味に聞こえたため、コントラバスやチェロの押し出しの強さはあっても層としての厚みに欠けるような感じである。 視覚的にもヴァイオリンの座席が広がっていたのが気になったためそのように感じたのかもしれない。
第1楽章はやや明るいヴィオラの音、ゆったりした開始。 低弦楽器にも熱がこもっていて気合充分。 木管楽器のソロは巧いが、総じてテンポを落としていたようである。 しかしオケの全奏になるとたたみ掛けるように緩急を付けていたのは渡邊流だろうか。 ただヴァイオリンの音が拡散気味に聞こえた。 渡邊さんも全楽章を通してヴァイオリンへの表情付けを行っていたのが印象に残った。 第2楽章はやや大きめの音で堂々とした開始で少し弦楽器をひきずるようにしてコールアングレのソロに繋がった。 コールアングレは朴訥とした味わいの音で魅力的。 また他の木管楽器群のアンサンブルもとても巧く、これが奈良フィル上質な面である。 第3楽章、渡邊さんが第2ヴァイオリンに向かって縦ノリのリズムを要求していたのが印象的。 渡邊さんは終始ヴァイオリンへの指示を繰り出しているのだが、ここでもやや音が薄く響いていたように思う。 後ろのプルトまできっちりと弾いているのだが芯が感じられないのが残念である。 しかし第4楽章にきてヴァイオリンにもようやく響きに厚みが出たように思う。 またここでは低弦楽器を少々鋭角的に弾かせていたのが心地よかった。 熱演が展開されていたが、指揮者の特質だろうか、洗練を基本として余計な汗はかかないような感じであった。 どこか日本的で緻密な新世界、そんな風にも思えた演奏であった。