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神戸市民交響楽団 第49回定期演奏会

誠実な演奏、元気をもらった演奏会戻る


神戸市民交響楽団 第49回定期演奏会
2001年3月11日(日) 14:30 神戸文化ホール・大ホール

ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
リスト:ピアノ協奏曲第1番 ホ長調 S.124 R.455

(アンコール:リスト:コンソラシヨン 第3番 変ニ長調)

シューマン:交響曲第3番 変ホ長調「ライン」 作品97

(アンコール:シューベルト:劇音楽「ロザムンデ」op.26, D.797より間奏曲第3番変ロ長調)
(アンコール:ワーグナー:歌劇「ローエングリン」より第3幕への間奏曲)

佐野えり子(P)
指揮:船曳圭一郎

これで2回目の神戸市民交響楽団の定期演奏会は、非常によく纏まって聴き応えのある演奏で、元気をいっぱいもらった演奏会だった。 いつもながら開場前から長蛇の列... ここにもこのオケの人気ぶりが伺える。 また列に並んでいる間や、会場に入ってからも観客同士の楽しい会話が聞かれ、会場の皆からも愛されているのがよく分かる。 とにかくとてもいい雰囲気なのである。

さて、そんななかにこやかに登場した船曳さん。 初めての指揮者である。 冒頭のオベロン序曲は、とにかく元気でよくまとまった演奏であった。 冒頭の団員による解説やパンフにも書いてあったようにロマン派のスペクタクル音楽らしい表面的な元気さをもった演奏だったが、勢いに流されないしっかりとした音楽で、よく纏まった演奏だったと思う。 特にホルンが朴訥とした音でソロ・合奏ともうまくてとても聴き応えがしたことも付け加えておきたい。 ただ僕の席(2階席中央の前から3列目)からは低弦が薄く聞こえたのが残念だった。 しかし冒頭の肩ならしとしては充分すぎるほとの出来だったと思う。
ピアノ協奏曲は、オケ全体が少し重い響きとなり、また佐野さんのピアノもソリッドで芯のある粒立ちの良い響き、これまた非常によくまとまった演奏であった。 第1楽章の冒頭は集中力が高い。 オケの決然とした響きにピアノが重い響きで応え、ここからぐぐっと引き込まれる。 緊張感の糸が全く切れずめくるめくように続いたあと静かになってからの独奏クラリネットの音もちょっと突き放すような感じでうまい。 更にこのあとのヴァイオリンも優しい音でつないで、やはり勢いだけではないのが立派である。 ただこの楽章の終りはやや雑然とした感じだったかな、そこがちょっと残念だった。 第2楽章では冒頭の主題がオケ・ソロともにとても優しく情熱的で魅了された。 第3楽章のトライアングルは愛らしくこの楽章ではヴィオラが健闘していた。 第4楽章のクライマックスではきらびやかで安定したピアノと重いティムパニの響きを始めとするオケの好サポートで聴き応え十分で、華やかに幕を閉じた。 と、ざっと印象に残った部分を拾ってみたが、全体としてこれまた非常によく纏まった演奏だったと思う。 オケは指揮者によく付いて奮闘していた。 そして熱演だった。 しかしこれから書くことはオケよりも指揮者に対してのことになるが少し書いてみたい。 船曳さんはにこやかに指示を出されているのだが、この曲ではほとんどヴァイオリンの方向を向いて合わせるのに終始していたようだ。 そのせいかチェロやコントラバスが薄く響いていたのではないか。 よって総奏になると音が平板で幅に乏しくなってしまう。 また速いパッセージになるとオケが必死に指揮に合わせてついてくるためにやや余裕なく走ってしまうのである。 このためピアノによく合わせてしっかり音を出していても、どこか沸きあがるような情感に乏しくなってしまっていたのが残念だと思った。 アマオケにここまで要求するのは間違っているのかもしれない。 が、基本的なオケのレベルがこのようなことを要求できるレベルにまで達していると思うのであえて書いている。 そしてこれはあくまでもオケの問題ではなく指揮者の仕事だと思って書いている。 やれば出来るのに... と思うから余計に残念なのである。 それにしても、この曲を決して弾き飛ばすような荒い演奏ではなく誠実に音楽をつけていったことは何より特筆しておきたい。
シューマンのラインは、ホルンが多用されるためアマチュアではちょっと厳しい曲だと思ったのだが、KCOのホルン軍団はそんな不安を見事に吹き払ってくれた。 ソロ・斉奏ともに自信を持った見事な響きで魅了し、これまで響きが少ないと感じていた低弦の音も増して非常に聴き映えのするラインに仕上がっていた。 素晴らしいラインだった。
第1楽章は、パーンと弾けるような開始でハッとする出だし。 低弦もこれまでと見違えるように響いてくる。 ただもうちょっと芯になる響きが欲しいようにも思ったが、これは贅沢というものだろう。 ホルンが安定しているし、弦楽器が一生懸命に弾いているのもすがすがしい。 実に若若しい音楽であった。 第2楽章は、やや速めだったろうか、ここでもホルンが安定しているために聴き応えのある音楽になっていた。 金管が開放的に鳴るために深刻にならない。 シューマンは当初「ラインの朝」という表題も付けていたようだが、まさしくそのような感じ。 第3楽章は、船曳さんが指揮棒を離しての指揮となる、ヴィオラやチェロの響きがよかったのが印象的だった。 ただこの楽章では強弱の変化がやや乏しくまたリズムの変化をつけようとしているのだろうか、ちょっと焦点が定まらなかったようにも感じた。 第4楽章はトロンボーンの荘厳な響きが立派。 これまで遠慮がちに叩いていたティムパニの音も大きくなって嬉しい。 金管ファンファーレが巧く聴き応えする。 ただここでもポリフォニーのように音が重なっていくあたり、ちょっと深刻すぎるのか、やや散漫な感じを受けた。 第5楽章はちょっとゆっくりめで始まったのだろうか。 冒頭の行進曲風の場面での金管楽器、やはりホルンの巧さが目だっていたが、弦楽器も含めてオケ全体がよくコントロールされていたことを特筆したい。 このオーケストラ、決して音を暴走させて元気に鳴らしてアピールするようなことがない(オケのキャッチフレーズは、義理と人情のオーケストラだそうだが)何より誠実に音楽を作っている、そんな感じである。 聴いていて本当にすがすがしい気分にさせてくれる。 そしてこの曲のエンディングはそんな感じで聞き惚れてしまった。 終演後にはブラボーも出ていたが、これは掛け値なし。

さて実際のところこの演奏会前は身体がだるくて、奈良から2時間かけて行くのを止そうかな... ともチラっと思ったのだが、来て聴いてみて元気を本当にたくさん貰ったような演奏会であった。 先にも書いたとおり会場の雰囲気が非常によいこともあるし、また曲の演奏前に団員による解説というかスピーチもあってとても楽しい気分にさせてくれる。 そして肝心の演奏そのものも巧くて誠実なので、ステージの上も下も非常に良い意味でのアマチュアリズムを感じさせてくれた演奏会だった。 素敵な演奏をありがとう。