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関西シティフィルハーモニー交響楽団 第32回定期演奏会

真摯さと音楽をする楽しみ満ちたマーラー戻る


関西シティフィルハーモニー交響楽団 第32回定期演奏会
2001年3月31日(土) 19:00 ザ・シンフォニーホール

マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調

ヨハン・シュトラウス:喜歌劇「こうもり」序曲、ポルカ「観光列車」、ポルカ「雷鳴と電光」、ワルツ「ウィーン気質」、ポルカ「狩」
(アンコール:ヨハン・シュトラウス:ラデツキー行進曲)

指揮:ズラタン・スルジッチ

始めて聴く関西シティフィルであったが、このオケもアマチュアオケ特有の真摯に音楽に打ち込んでいる素晴らしさを堪能させてくれるオケであった。 加えてスルジッチさんの薫陶を受けているからだろう、音楽をすることの歓びが届くようなオケでもあった。 たぶんステージの上では必死にマーラーの楽譜をさらっているのだろうが、決して安全運転をせず、かといって野放図に弾き飛ばすことなどなく、常に真摯に音楽にむかってイキのよいナマの音楽の素晴らしさを届けてくれた。
マーラーの交響曲第5番の冒頭のトランペットのファンファーレは、柔らかく豊かな響きで素晴らしいものだった。 そしてこれに続く全奏もよく締まったオケの響きでかつ躍動的であり、ホルンの強奏もタイミングがいい。 この後のヴァイオンリによる深い哀愁を込めた主題の提示、そしてこれ対するチェロの旋律などなど、これはいい演奏になるな、と直感したがこれは見事に当った。 けっして安全運転に徹することなどなく、常に前向きな演奏であるが響が内にこもって練りあげられている。 この楽章、終りのほうになってややトランペットに疲れが見えたのが、ミスすらもナマで聴くイキの良い音楽として届けられる、そんな気にさせるような演奏だ。 第2楽章で印象に残ったのは打楽器である。 思い切りの良いティムパニは要所で先が細くて赤いマレットを用いてタイトな響きを演出していた。 そしてこれはスルジッチさんの指示だろう、シンバル、トライアングルといった一聴するとオケから浮き上がってしまう楽器の響きも際立たせることなく充分にオケの響きの中に抑えて込んでいたのも印象的であった。 打楽器がこのようにストイックであることに加えて、弦楽器とくにヴァイオリンもぎゅっとまとまって上品な響きとなっておりこれらはウィーン風? とにかくこの楽章の終盤のフルオーケストラになる場面は感動的な演奏だった。 第3楽章のスケルツォは曲の転換点となる部分である。 冒頭のホルンの斉奏も力強いが響きを充分に内に押さえ込んだ演奏であり一気に引き込まれた。 この楽章はホルンの見せ場が多く、ソロも詩情豊かだった。 終結部ではやや疲れが見えたものの第1楽章でトランペットについて書いたようなイキのよい演奏でこれも見事だった。 弦楽器ではレントラーのリズムの場面、やや速度を落としていたように思ったが、これもスルジッチさんの嗜好するウィーン風なのだろうか、印象に残っている。 第4楽章はこの弦楽器が美しい合奏を届けてくれた。 各パートが絶妙のコントラストをもって演奏され、とくに転調がくりかえされる場面からハープが戻ってくるあたりはゆっくりとしめやかであった。 情感は漂うのだがこれに溺れることなくちょっと突き放したようなクールな印象をもった。 そして終結部はじっくりと盛りあがりそして消えてゆくあたり実に美しい演奏だった。 残念だったのはここで休まずに終楽章に入ってほしかったことだが、ほんの一息ついて第5楽章となった。 ホルンの一吹きからクラリネットとオーボエが加わる冒頭が美しい。 どの楽章の冒頭の部分は緊張すると思うのだが、充分に練習しているのだろう、どの楽章でもすっとその楽章の中に入ることができる。 このためあとは音楽の流れに身をゆだねられる。 これはなかなかできないことと思った。 ここで印象に残ったのは低弦楽器がの分奏だろうか、底辺をきちんとささえているので大団円となってもオケ全体がぎゅっと締まっている。 コントラバスのトップの方を始めとして自分の出番でないところでも真剣に指揮者を見ていたのも強く印象に残っている。 エンディングはこれまで書いたことを凝縮したような音楽であり、力強いコラールに弦と木管の賑やかな音型が交錯して輝かしいがとてもストイックに仕上げられた音楽で幕となった。
とにかく各人が持っている力を出しきったようなすばらしいマーラーであった。 疲れからくるような多少のミスはあったが、何度も書くが逆にそれがナマで聴く音楽の良さ素晴らしさを伝えるものであるかのようなすばらしい演奏だった。
このようなコンサートの第2部は、ヨハン・シュトラウス。 オケのメンバーは多少入れ替わるが大きな編成のまま、曲により2管・4管を切り分けていたが、こちらはうってかわって楽しい演奏に徹していたようだ。 打楽器も先ほどまでのストイックな響きではなく、これまでのことを振り払うかのように響かせていた。 アンコール集のような感じであった。 簡単に各演奏の印象を述べると、こうもり序曲はオーボエの美しい響きとチェロのピチカートが雄弁で印象的だった。 観光列車は、冒頭と終りに駅員の帽子を被った団員によるホイッスルがあり、とにかく楽しい演奏。 よく透るトランペット(マーラーでは全員ピストン式だったが、こちらは全員ロータリ式)の響が美しかった。 雷鳴と電光は、冒頭のテープによる雷鳴の音から始まって演奏中に会場の照明を操作するなど開放的な打楽器を中心として勢いとスピードのある演奏。 ウィーン気質は、ヴァイオリンの爽やかなデュオ、後半はやはり開放的な盛り上げが印象的。 狩は、鉄砲をもったおじさんの登場でとにかく楽しくやろうじゃないかという感じの演奏。 アンコールのラデツキーも更にホルンがベルアップするなど楽しさをより強調し、会場中ともども盛り上って終演であった。
音楽をじっくりと楽しませるマーラーと、聴いてうきうきするようなシュトラウス、ともどもイキのよいナマの音楽の素晴らしさを届けてくれた演奏会であった。