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大阪シンフォニカー交響楽団 フェスティヴァル名曲コンサート17

わかっていても感動的なベートーヴェン戻る


大阪シンフォニカー交響楽団 フェスティヴァル名曲コンサート17
2001年5月20日(日) 18:00 フェスティヴァル・ホール

パッヘルベル:カノン
モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K.595
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92

佐々由佳里(P)

指揮:トーマス・ザンデルリンク

昨年10月、本名曲コンサートの第15回において佐々さんとザンデルリンクさんによるモーツァルトのピアノ協奏曲第23番を霊感がする音楽と絶賛したのだが、今回はその続編。 大きな期待を持って演奏会に臨んだが、今回も裏切られることはなかった。 素敵なモーツァルトであった。 またベートーヴェンの交響曲第7番もまたザンデルリンクさんの期待どおりの熱演(終楽章になると燃えるザンデルリンク・フィナーレと勝手に命名しておこう)で会場は割れんばかりの拍手に包まれていた。

今回の名曲コンサート、1月の演奏会はキャンセルしたので今回の席としては初めてであるが、これがやたらに前(L列)で右隅である。 実際に席についてみるとちょっと閉口する。 斜めなので指揮者の表情が見えるといっても広いフェスなので遠くて細かな表情までは観察できない。 ちょっとなぁ... と思っているうちに冒頭のパッヘルベルのカノンが始まった。 有名な曲だがCDなどの録音も持っておらずまた生で聴くのは初めてである。 オケは見える範囲でヴァイオリンが8名、チェロが4名、コントラバス3名の編成。 ザンデルリンクさんは棒を持たずに指揮を始める。 一瞬古楽器かと思うようなちょっと上ずったようなヴァイオリンの響きで始まったので少々びっくりしたが、弦楽器の響きが優しく重なっていく。 コントラバスの響きがその優しさの芯になって聞こえる。 角ばらないが一本筋が通ったような感じである。 とても丹念に響きを重ねた音楽だった。 ほとんどこの曲を意識せずに演奏会に臨んだだけにちょっとした拾いものだった。
さて、佐々さんによるモーツァルトのピアノ協奏曲第27番は、慎み深く底光りするようなソロが耳を惹きつけた第2楽章が特に素晴らしかった。 モーツァルト最晩年の諦観にも似た淋しさと木肌の温もりのような温かさを持ったコンチェルトであった。 第1楽章の序奏は軽く爽やかに始まった。 ヴァイオリンは10本、チェロ5本、コントラバス4本である。 この爽やかさの中にすっと一本コントラバスの筋が通っている。 相変わらず弦楽器の分奏が見事だ。 そしてピアノも少しくぐもったような深い響きである。 前回の23番のときと違うのはスタッカート気味にならないところだろうか。 23番のときにも書いたが、煌びやかなだけがモーツァルトではないし、甘いのもまた違う。 このようなくぐもったような響きの中にモーツァルトの深遠さがあると思う。 素敵な演奏である。 またザンデルリンクさんの伴奏も、あいかわらずの正攻法で素晴らしい。 先日のブラームスのヴァイオリン協奏曲の伴奏のときはぐいぐいと押してくるようだったが、このモーツァルトでは一聴すると軽く流しているかのような伴奏である。 飾り気がなく淡々と響きを重ねていく、洗練された朴訥さがまた魅力的。 カデンツァは力まず間の取り方が見事だった。 第2楽章はゆっくりとしたピアノによる開始から魅了された。 優しさにそこはかとない淋しさが感じられ、慎み深く底光りのするようなソロが繰り返し繰り返し耳を惹きつけて離さない。 言葉を無くすほど聞き入ってしまった。 誠実な演奏といえばそれまでかもしれないが、モーツァルトを退屈でなく誠実に演奏することはとても難しいと思う。 とにかく絶品、至福のひとときであった。 第3楽章もまたゆっくりめのソロから始まる。 オケも豊かな音で返すが、ピアノはここでも誠実で、清楚、可憐。 全体を通じてオケ・ピアノともフォルテを強調することなく気負わず誠実な演奏に終始していたと思う。 とても素敵なモーツァルトの協奏曲だった。 最後に佐々さんは全楽章を通じて、自分が弾くところではないときには、やはり優しい顔でオケをじっと見ている。 まるでオケの響きと自分の響きを合わせようとしているようにも感じた。 前回はスタッカート気味だったが今回はモーツァルト最晩年の諦観を誠実に表現しようとしていたのではないだろうか。 とにかくこのコンビの素敵なモーツァルトのピアノ協奏曲は今後もあるのだろうか。
ベートーヴェンの交響曲第7番は座席を最上階に移した。 70%ほどの入りと聞いていたので移動したが、既に数人が同じように陣取っていた。 フェスの最上階は音が良いことをよく知っているのだろう。 さて第1楽章は弾力のある和音からオーボエの可憐な響きで巧い。 1stヴァイオリン12本、2ndヴァイオリン10本、ビオラ10本、チェロ7本、コントラバス6本から豊かに響く弦楽器の和音が素晴らしい。 主部に入って最初のホルンの強奏がちょっと乱れたのは残念だったが、速いパッセージになっても音楽に幅があって余裕を感じさせた。 第2楽章、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの質実とした響きによる開始。 これに2ndヴァイオリン、1stヴァイオリンが参加してくるが基調となる低弦のリズムが安定していて聴き応え充分である。 弦楽器によるフガートの部分も見事な分奏だった。 曖昧さは微塵も無いがきちっと弾いているのに余裕を感じさせる素晴らしさである。 第3楽章は重いが音切れが良く生き生きとしたギャロップ。 トリオとスケルツォが入れ替わりたちかわりやってくるが、スケルツォでのホルンが強奏が印象的。 小刻みに前後に震えるように指揮するザンデルリンクさんからこの素晴らしい響きが醸し出されているのが実に不思議な感じだった。 そして第4楽章は見事な盛り上がり。 後の楽章になるほど気分を高めて盛り上げてくるのがザンデルリンク流であるが、これがわかっていても感動的。 まさにザンデルリンク・フィナーレと呼びたい。 激烈なティムパニ、ホルンの強奏、低弦の唸りが奔流となって溢れ出てくるが、響きに奥深さがあり余裕を感じさせる実に素晴らしいベートーヴェンの交響曲第7番であった。 この長大なコーダが終わると、会場から割れんばかりの拍手・拍手・拍手。 シンフォニカーも本当に巧くなったなぁ、と感慨もまたひとしおである。