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ならチェンバーオーケストラ 第58回定期演奏会

まろやかな初夏の陽光のような響き戻る


ならチェンバーオーケストラ 第58回定期演奏会
2001年6月16日(土) 15:00 なら100年会館中ホール

ヘンデル:組曲「水上の音楽」(ハーティ版)
モーツァルト:フルート協奏曲第2番ニ長調 K314
ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調 作品68「田園」

(アンコール:モーツァルト:ディベルティメント K136より第3楽章)

フルート:待永 望
指揮:飯森 範親

梅雨の晴れ間、プログラムに田園があるからか、それとも指揮者がTVにも出ている飯森範親さんだからなのか満席となり、客席もステージもちょっとした熱気に包まれていた。 そのようななかどの曲にもこのオケらしいおだやかで調和のある響きに飯森さんの若さ・熱さが加味された演奏が展開された。 とくにフルート協奏曲では、待永さんの深い精神性をたたえたフルートの響きに魅了されるととも、常に積極的にオケをリードした飯森との対峙が見事であった。 どの曲もまろやかな初夏のような陽光のような響きが魅力的であった。 また飯森さんは、このような公演が奈良で続けられていることに感激されたのか、この演奏会の最後に、このオケへの変わらぬ支援のお願いされたあとさっきまで使っていた指揮棒を観客にプレゼントするというオマケまでつけてくださり、とても暖かい雰囲気に包まれたまま会場を後にした。 アットホームで充実した演奏会であった。

オケは通常配置で、弦楽器が6・5・4・4・3人のフル編成での「水上の音楽」。 プログラムに曲目解説が無かったが、予想どおりのハーティ版での演奏だった。 とてもまろやかな響きに満たされた演奏であった。 すべての演奏に言えることだが、常時活動しているオケではないのに、管・弦楽器ともに響きが統一されており、それぞれがまろやかに溶け合っているの素晴らしい。 アレグロの冒頭の弦楽器とホルンの斉奏も勢いはあるがそれよりも全体の響きを大切にしたような演奏、後半やや力の込めて盛り上げた。 エアやブーレでは熱のこもった弦楽合奏でちょっと肌に暑さを感じる初夏の陽光のような響きである。 チェロのトップの斎藤さんが指揮をよく見ながら身体全体で合わせていたのが印象的。 ホーンパイプでの木管楽器の合奏も見事だった。 オーボエの福田さんは見ていると少々神経質なほどリードをいじっているが出て来る音はストレートで心地良い。 アンダンテ・エスプレシーヴォのフルートソロは上島さんだろうか、おだやかな落ち着いた音色が魅力的。 このオケの管楽器はどれをとってもオケの全体響きに合わせたソロを行っているのが何より素敵である。 アレグロ・デチーソでも池田さんのピッコロ・トランペットは渋い輝きを持っていた。 そしてしだいに熱をこめてのエンディング。 爽やかというよりも少々熱っぽさも感じた水上の音楽であった。
フルート協奏曲はチェロとコントラバスが減ってそれぞれ2人と1人の伴奏だったが、先よりも力の入った熱い伴奏に対峙し、待永さんが実に深い精神性をたたえたフルートでこの曲を吹ききった。 小手先の技巧的なテクニックや楽器の輝きを狙ったロココ調とは正反対の渋い響きと絶妙の間の取りかたが印象的で、特に第1楽章のカデンツァが息をのむほどであった。 第1楽章は強弱をつけてはずむように始まった。 これにいぶし銀のような渋い響きをもったソロが登場した。 そしてまた飯森さんに指揮されたオケが明るく積極的な演奏でこれに対峙する。 ぴったりとソロにつけているため対決という雰囲気ではなくコントラストになっている。 カンデンツァでは待永さんの深い響きにピンと張り詰めた緊張感が加わって固唾をのむほどで、この曲がどこかベートーヴェンのようにも聞こえてきた。 第2楽章は暖徐楽章の名のとおりの演奏、待永さんのソロは年季が入った渋い響きで暖かい演奏。 オケはここでも少々熱気を孕んでいたのは飯森さんの若さだろうか。 その年季と若さのコントラストがはっきりしたのは第3楽章。 ここでもチェロの斎藤さんの熱演によりチェロ2本とコントラバス1本なのに(だからか)オケの下の線がきちっとしているのが気持ちがいい。 これに待永さんが絶妙の間を取ったフルートで吹ききった。 熱演であった。 このような深い精神性をもったモーツァルトが聴けたのは大きな収穫だった。
ベートーヴェンの「田園」は一口に言うならオーソドックスな演奏であった。 これまでと同じく、どのソロ楽器が突出することもなく、上品で張りがあり少々熱っぽい演奏である。 特に終楽章での中低弦楽器の熱演に印象が残った。 第1楽章は上質でまろやかな響きでオーソドックスに始まった。 飯森さんの若さが時折顔を見せるような演奏で張りがある。 ヴィオラ、チェロ、コントラバスをの支えがしっかりしている。 第2楽章は、第2ヴァイオリンとヴィオラのピンと張ったリズムで入る。 たっぷりとした木管楽器が印象的。 爽やかというよりもちょっと濃密な雰囲気。 飯森さんは更に弦楽器に煽りをかけて起伏をつけようとするがオケは必要以上に反応しないのは上品なこのオケの特質だろうか。 第3楽章は若さの漲った演奏で、コントラバス3本でコンパクトに響きを溜めた力演が印象的。 第4楽章は堅実な嵐だったろうか、ティムパニもコンパクトに響く。 力演だったのだが、3・4楽章と少々散漫にも感じる部分があったのは身体が疲れていたからだろうか。 終楽章はチェロのピチカートがうねるようで、また後半にかけて4本とは思えない厚さと表現力によって全曲を支えていた。 クライマックスは金管のファンファーレがふわぁっと浮くきあがるように全体の響きを包み込んでいたのも印象的。 さらにヴィオラも熱を帯びた演奏を展開し、充実した響きに満ちたエンディングとなった。 じつにオーソドックスであるが充実した演奏だった。
アンコールは、モーツァルトのディヴェルティメントK136から第3楽章。 くしくも先日、本名/大阪シンフォニカーで聴いた曲であるが、響きのまろやかさはそのままであるが、飯森さんはかなり速く力まかせに曲を進める。 少々ヤケ気味にも思えたエンディングまで一気に曲を進めたが、あくまでもまろやかな響きで満ちていた。 大阪シンフォニカーがデジタルなら、ならチェンバーはまるでアナログ演奏、そんな印象を強く持った。 ならチェンバーが飯森さんの若さによって活気を与えられた演奏会であった。