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吹田市交響楽団 第53回定期演奏会

全体的に纏まって抑制のよく効いた演奏戻る


吹田市交響楽団 第53回定期演奏会
2002年1月27日(日) 14:00 吹田市文化会館メイシアター・大ホール

リスト: 交響詩「前奏曲(レ・プレリュード)」(*)
ボロディン: 交響曲第2番 ロ短調 (*)
ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 作品30

独奏: 金子 浩三

指揮: 新谷 武 (*)、 米山 信

昨夜からの雨もようやくあがったとはいえ、落ちつかない天候のなか1階席は7割程度は入っていたように思う。 マーラーの復活を演奏して以来、オケの実力も増し、徐々に集客力も高まってきているのではないだろうか。 今回も全体的によく纏まった演奏を聴かせてくれた。 惜しむらくはピアニストの技量がこの難曲を演るには少々足りなかったことだが、オケは指揮者によく反応し、とても真摯な演奏に徹していたようだ。 リストでの余裕を感じさせるフィナーレ、ボロディンでのホルンの望郷を感じさせる音色、ラフマニノフでの濃厚な弦楽器の隙間から顔を覗かせては消える木管楽器のフレーズによるロマンティシズムなどなど、いずれも綿密に計算された音楽で充実した演奏だった。

リストの前奏曲は、ふわっとしているが芯のある弦楽器、木管楽器の呼応によるとても纏まりのある開始。 充実した音楽の始まりだった。 チューバの強烈な音に支えられた盛りあがりも抑制がよく効いていおり、このあとも熱気をひきずることなく場面転換し、ホルンがゆったりした響きで美しい旋律をかなでていた。 このあとの嵐のような盛りあがりも緊迫感があり、続くホルンと木管楽器による愛の旋律がのどかで対比もよかった。 クライマックスの戦いの主題でも抑制のよく効いた金管楽器と重い音のティムパニで高揚感を持たせ、ティムパニはマレットを持ち替えてフィナーレでは弾力のある音で応えるなど、余裕も感じさせる見事な盛りあがりを形成して終わった。 会場からもブラボーがかかっていたが、これは掛け値なし。
ボロディンの交響曲第2番はホルンが随所でいい音を出していたのが印象的で、全体的にはオリエンタルなムードよりも誠実でロシアの自然や土くささも感じた演奏だった。 第1楽章はじわじわっと盛りあがってくる開始。 弦楽器にタメや広がりもあって見事だったが、これに対する木管楽器のフレーズがちょっと埋もれてしまったかな。 第2主題のチェロもざわついてしまったようだが、展開部から力のみなぎった演奏をきかせてくれた。 第2楽章の重いピチカートに軽快な木管が陽気に受けとめる。 華やかな金管も加わってのスケルツォは、力がこもった演奏だった。 第3楽章はクラリネット、ハープ、ホルンの旋律が続く味わいのある演奏が魅力的だった。 このあとのオーボエを主体とした木管アンサンブルも素敵だったが、ここは何といってもホルンであろう。 随所で望郷の念を思わせるいい音を聴かせてくれた。 やがて低弦が芯になった熱い盛りあがりを経たのち終楽章に突入、変拍子の第1主題をリズミカルにこなし、ロシア的なクラリネットソロ。 チューバが下支えをした金管楽器からめくるめく主題の展開をとても誠実にこなした感じで、東洋的な色彩よりもロシアの自然を演出したようなフィナーレであった。
ラフマニノニのピアノ協奏曲第3番は、非常な難曲であり、華やかさや豪快さに繊細さも要求される音楽である。 金子さんは譜面を見ながらの演奏であったが、雰囲気で鳴らすタイプのピアニストのようであった。 ちょっと荷が重過ぎる曲ではなかったろうか。 それでも最後まで誠実に弾き、オケも米山さんの指揮に合わせてピアノに寄り添って響きの厚い充実した音楽を形成していた。 とくに濃厚な弦楽器の隙間から顔を覗かせては消える木管楽器のフレーズによるロマンティシズムが感じられ、じつに綿密に計算された音楽を真摯に演奏する態度が印象に残った。 第1楽章はゆったりとした響きをもって開始、ファゴットの音が心地よい。 ピアノも淡々とした響きである。 ちょっとくすんだ音色のホルンがかぶり、木管ソロが浮かんでは消えてゆく、なかなかにムードがある。 ピアノはバリバリと弾くタイプではなく、かといって繊細な面を強調するでもなく(大阪シンフォニカーのコスミ氏の場合は後者)、精一杯誠実に音楽に向っているようであった。 第2主題もオケはゆっくりと進み抑制がよく効いて米山さんによく反応している。 カデンツァもスケール感は小さくやや情感に欠けるが誠実。 フルート、オーボエ、クラリネット、ホルンと旋律が渡っていくあたりはとても素晴らしい。 このあとのカデンツァはもうちょっと歌ってほしかった。 ピアノに第1主題がもどり、弦楽器がさざ波のように伴奏をつけ、ファゴットのもの悲しいような響き、そしてまたオーボエ、クラリネットと木管楽器がまた顔を覗かせては消えていった。 情感あふれるオケの演奏だった。 第2楽章は感傷的なオーボエの響きが印象に残る導入部だった。 ピアノは響きがふくよかだが、ムードに流れるためか、周りでは心地良く睡魔に襲われているかたもちらほら。 オケもややヴァイオリンの線が細く感じられたようだが、ワルツの旋律になるとオケが奮闘しはじめた。 内声部が充実し、ホルンやヴィオラが頑張っていたのが印象的。 第3楽章は開放されたような金管ファンファーレ。 トランペットの音が華やかである。 だがピアノが少々もたついている。 オケはスピードを緩めてピアノに寄り添う。 よく統制された弦楽器、とくにビオラとチェロが内声部をかなでてコントラバスの芯のある響きで層が厚い。 ここに木管楽器やホルンの旋律が見え隠れし、濃厚なロマンを演出している。 ピアノはムードに流れてインパクトが少ない。 オケは最後の主題で大きな山場を迎え、ピアノは少々添え物になった感もあり、オケが一丸となってリズミカルなフィナーレに入った。 そしてトランペットの煌びやかな音色を軸に確信にみちて弾力をもったエンディングで曲を閉じた。