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大阪シンフォニカー交響楽団 第16回ひまわりコンサート

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大阪シンフォニカー交響楽団 第16回ひまわりコンサート
2002年2月20日(水) 19:00 いずみホール

松沼俊彦(指揮): ヴェルディ/歌劇「運命の力」序曲
山本素子(S): ヴェルディ/歌劇「リゴレット」から「慕わしい人の名は」
正木麻友美(S): ヘンデル/歌劇「リナルド」から「涙の流れるままに」
正木麻友美(S): ロジャース/サウンド・オブ・ミュージック
正木麻友美(S): ヴェルディ/歌劇「椿姫」から「乾杯の歌」
豊田典子(S): ロッシーニ/歌劇「セミラーミデ」から「麗しい光が」
瀧本冨美枝(S): ラヴェル/ハバネラ形式のヴォカリーズ
中島恵美(S): プッチーニ/歌劇「マノン・レスコー」から「柔らかなレースの中で」
中島恵美(S): ヴェルディ/歌劇「ドン・カルロ」から「世のむなしさを知る神」
−(休憩)−
船橋洋介(指揮): モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲
瀧本冨美枝(S): モーツァルト/歌劇「魔笛」から「若者よ、恐れるな・・・私の運命は苦しみに満ちて」
瀧本冨美枝(S): モーツァルト/歌劇「魔笛」から「復しゅうの心は地獄のように」
多久江里子(P): リスト/ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 S.124

指揮: 曽我大介

大阪シンフォニカーのカヴァーコンダクターに就任した指揮者2人の演奏と歌手5人による10曲の歌、それにピアノ協奏曲という盛り沢山のコンサートであった。 それぞれに持てる若い力を披露してくれた演奏会ではあったが、これだけの内容を2時間で聞くとなると、なんだかコンクールの審査員になっているような気分になってしまった。 演じる側も一発勝負なら、聴くこちらもどんなのかな・・・ とちょっと気合を入れて聴いてしまったようだ。 まぁそんなに大上段に構えなくても・・・ と思われるかもしれないのだけれど。 また、ずいぶん前になってしまったが、金聖響さんを始めてこのコンサートで聴いたときのような圧倒的な印象というのを知らず知らずに期待していたためか(こんなのはたびたび有るものでは無いと分かっているのだが)、今回皆さんが奏でられた音楽には、残念ながらぐっと没入できるようなものはなかった(たぶんに聞き間違いもある、とは思うのだが)。 とにかく簡単に振りかえってみたいと思う。

トップは、カヴァー・コンダクターに就任された松沼さん。 落ち着き払った登場であった。 振り下ろされた棒から出た音楽は、よく言うと実に明快。 スパスパと音切れが良くグイグイと音楽を運んでいった。 しかし、無防備に奏される強音には深みがない。 全体的にラジオで聴く音楽のようでもあった。 しっかり振って元気に走った感じ。 一生懸命さは買うけれど、潤いが欲しい。
山本さんのソプラノは響きの深い声が魅力的だった。 若いのにどこか余裕も感じさせる歌は肌触りが良い。 選曲の良さもあったと思うが、容姿も歌もともにチャーミングでこれから楽しみな感じである。
正木さんのソプラノは、丁寧に歌っているが声量がないのが致命的。 ヘンデルのアリアはオケの見事な好サポートもあって密やかに歌っているかと思いもしたが、サウンド・オブ・ミュージックでは声がよく聴き取れない。 前半は日本語で歌っていることにも暫く気がつかなかったほど。 乾杯の歌も同様、声をはりあげるときゅうきゅうしてて楽しめない。
豊田さんのソプラノは、歌は巧いと思ったがどことなく華やかさに欠け、堅い印象を持った。 喜びのコロラトゥーラも少々しぼみ気味で、ドラマティックな曲にしたほうが良かったかなぁ、と思った。
瀧本さんのラヴェルは曲も難解だったが、歌も巧いのかどうなのか悩んでしまったが、後半しだいに伸びやかな声になってきた。 休憩を挟んだ魔笛からのアリアでも最後は力も入って良くなり盛大な拍手をもらっていたが、全体的にはやはり少々堅い印象を持った。 歌のテクニックは巧いとは思うけれど、声質が堅いのだろうか、高音が少々痩せて聞こえたところも気になった。
休憩前のトリを務めた中島さんは、声量・表現力とも抜群で、余裕の唄いっぷリだった。 これまでのどの方よりも、よく透る声に表現力もあって圧倒的、という感じ。 とにかく安心して聴けて楽しめました。
休憩を挟んで最初は、もう一人のカヴァー・コンダクターの舟橋さんがにこやかに登場した。 音楽はきちんとした構成にのっとって、すいすいと振り分けていた。 各音がしっかり出ていて余裕を感じさせて巧いとは思ったが、ただそれぞれの楽器の音量の幅が常に一定、抑揚も測ったようであった。 モーツァルトの洒脱さまで求めるのはちょっと酷なのだろうか。
最後の多久さんによるリストのピアノ協奏曲第1番は、冒頭での若干のミス・タッチがあったのが惜しかった。 多久さんもはっとしたような顔をされていたが、曲はそのまま続行。 止めるほどではないにしても、このため第1楽章は少々ちぐはくな印象を持った。 この後も繰り返されるこの決然とした強音による主題の部分が荒っぽくなりがちだった。 これに対比する暖徐的な主題の部分はとてもよく歌っていとても優美。 これらがきちんと対比されていたなら良かったのだろうが、冒頭のこともあるのかどこか平板に繰り返してしたように聞こえてしまった。 余裕を失っていたのかな、残念だった。 第2楽章は深い響きのオケにあわせてピアノもしっとりとした深い響きで応える。 曲想が変わったピアノには強靭さだけでなく冷たさがあり音に冴えがあった(第1楽章もこうだったら)。 第3楽章は跳ねてよく転がるピアノだが、この響きに深みがあるので軽薄に感じない。 素晴らしい。 第4楽章もまた粒立ちのよいピアノに力強いオケが絡んで熱気があった。 冒頭の主題もいい感じで戻ってきた。 ただオケは多少音を割ったところもあって、ただ強く演っているだけにも感じられたが(もともと深みのない曲だからこうなのかもしれないが)、しだいにシンフォニカーらしく豪快な演奏となって曲を締め、客席からは盛大な拍手があった。 かえずがえすも冒頭が惜しかった。 多久さんも少々はにかんだ風で拍手に応えていらしたあたり、とても好感が持てた。
とにかく、若さ色とりどりのコンサートであった。 この中から明日のスターが生まれることを期待したい。